【感想】ヒトの言葉 機械の言葉 「人工知能と話す」以前の言語学

川添愛 / 角川新書
(14件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • sansaku

    sansaku

    ・AIがどうやって言語処理を行なっているか、そもそも人間はどうやって言葉を操っているか等について書かれた本だった。

    ・言語処理に使われている機械学習と深層学習について一番初歩的な理解はすることができた。
    機械は人間とは全く異なる方法によって翻訳、要約、対話等を行なっていて、人間にもその過程は分からない。なぜならニューラルネットワークという無数のパラメーターを持つ関数をAIが作り出しているから。

    ・言語AIが人間にとってブラックボックスになる以上、その使い方には細心の注意を払う必要がある。また、AIが出した結果が正しいかどうかの判断は人間が行う必要がある。

    ・現在の言語AIがWebサイト等にある言語のみを入力データとして使っているならば、人間は言語以外の五感などからも情報を受け取っているのだから、まだまだAIと人間が同じような言語処理が出来るようになるには時間がかかるだろうと思った。
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    投稿日:2024.02.03

  • Mkengar

    Mkengar

    本書は言語学者で小説家でもある著者が、言葉の意味とは何かについて、人間と人工知能を対比しながら論じている本です。一貫してわかりやすく書かれており、あっというまに読了しました。「意味」という概念について改めて本書で深く考えさせられました。

    たとえば「おかあさん」という言葉は、母親というような辞書的な意味はあるものの、この言葉から浮かぶニュアンス、心象は人によって異なるはずです。具体的な自分の母親を思い浮かべる人、「おかあさんのごはん」のような抽象的な心のよりどころとしての存在を思い浮かべる人、また人によってはこの言葉からネガティブな心象を持つ人もいるかもしれません(幼少期の何かしらの経験が反映)。

    また同じものを指しているのに違う表現が可能なケースも多々あります。「おかあさん」と「母親」もそうですし、本書に書かれているように「金星」と「宵の明星」は同じ星を指示していますが、どちらの言葉を使っているかで、話者が伝えたいニュアンスは異なるはずです。

    本書で印象に残っているは、人間が持つ様々なバイアスが言語習得において重要な役割を果たしているという説明です。本書では事物カテゴリーバイアス、形状類似バイアス、事物全体バイアス、そして相互排他性バイアスが紹介されていますが、これらの「思い込み」が言語習得にプラスであるというのは面白かったです。バイアスは悪いことだと思われがちですが、バイアスの存在、そしてそれが修正されていくというプロセスを経て人間は様々な能力を獲得しているということです。昨今人工知能にバイアスがあることがやたらと批判されていますが、そんなのは当たり前で、それをどう修正していくか、というところに人間の知恵や努力が今後必要になるのかなと思いました。また言語習得については「学習説」と「生得説」なるものがあるというのも初学者として勉強になりました。

    もう1つ本書で興味深かったのが、言葉の「曖昧性」と「不明確性」の違いです。曖昧性とは、文の解釈が複数あるものの、その範囲が限られている場合ですが、不明確性とは解釈の可能性が無数にある場合です。そして「不明確な」文章は世の中にたくさんあると言います。この議論は、経済学者のフランク・ナイトが提唱した「リスク」と「不確実性」の違いに似ていると思いました。ナイトはリスクとは確率分布がわかっているもの(例:自動車事故)なのに対して、不確実性とは確率分布が全くわからない事象だといいます(例:世界金融危機)。AIが確率で言葉を発している状況下において、確率分布がわからない事象、文章に出会ったときに、さてどう解釈するのだろうか、日本源と同じく、過去にあった確率分布が明確な事象の一部だと「思い込んで」処理するのだろうか、もしそうなら実はAIと人間は違うのではなくむしろかなり似ているのではないか・・・など想像がふくらみました。
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    投稿日:2023.09.22

  • coco

    coco

    AIが「言葉を理解する」ということの意味を、平易な言葉で説明している。最終的には人が言葉を理解するとはどういうことなのか、言葉の意味とは何か、という問題に行きつく。人が言葉を判断する時は、辞書にある意味だけでなく、常識や文脈、状況やその言葉を発している相手が属している文化などを全体として理解しているから、言葉の単独の意味が分かることだけでは人間と同様の理解にはならない。
    AIの中身がブラックボックスである以上、その性能は「振る舞い」で評価するしかない、と著者。チューリングテストと同じだ。受け手が「人間だ」と感じる程の振る舞いをすること。中身を「理解しているか」とは別問題だ。でもそれは人間同士にも言えることだ。言葉を尽くしているつもりでも、理解してもらえないということがあるわけだから。そう考えると、なかなか話が通じない、空気を読めないなどと言われる場合の”人間世界”のコミュニケーションは、AI程度、と形容できそうな気もしてちょっと面白い。
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    投稿日:2023.09.19

  • hirona82

    hirona82

    書籍サイトの紹介で興味持ち、購入。

    機械(AI)は言葉の入力にどんな反応を示すのか、という点はITパスポートで学んだこともあり、割と素直に受け取れた。
    そして、ヒトが言葉を理解するというのは、実は分解してみると凄く複雑だということを、あらためて突きつけられたように感じる。AIが言葉を理解するというのは、まだまだ先が長い道なのではないかと、本書を読んでると思い知らされた。続きを読む

    投稿日:2023.08.30

  • sugar41

    sugar41

    ここのところ少し時間があることもあり、川添愛の本をいろいろと読んでみようと思っていまして、今回は図書館で見つけたこの本を読んでみました。

    「AI(機械)による言葉」の説明に多くの紙面が割かれていまして、「AI(機械)はヒトの言葉を理解しているのか?」についても、かなり丁寧に考察がなされていました。

    この本で、「『AI(機械)による言葉』に対する理解が、『ヒトの言葉』に対する理解につながる」と語られているように、「機械に対する理解が、ヒトに対する理解を深める」というのは、これからの社会において、重要な視点かもしれません。
    同時に、「機械の振る舞い」と「ヒトの振る舞い」は、たとえよく似ていたとしても、本質的には異なるかもしれない、という視点も重要かもしれません。

    AI(機械)の特徴や振る舞いを正しく理解するためにも、この本に書かれているような内容を理解しておくことは、現代人にとって重要なことだと思います。
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    投稿日:2022.09.09

  • yoshio2018

    yoshio2018

    第一章:機械の言葉の現状、第二章:言葉の意味とは何なのか、第三章:文法と言語取得に関する謎、第四章:コミュニケーションを可能にするもの、第五章:機械の言葉とどう向き合うか。

    投稿日:2022.08.20

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