【感想】我らがパラダイス

林真理子 / 集英社文庫
(31件のレビュー)

総合評価:

平均 3.4
3
10
10
5
0

ブクログレビュー

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  • てつ

    てつ

    高齢化社会になり、誰もが経験するであろう親の介護問題。在宅での介護or施設入居、どちらを選ぶかで悩み、介護される側も介護する側も葛藤し、疲労する。
    施設を選択する場合でも、介護度や費用などで幾つかの選択肢があり、頭を悩ます。
    この小説は、そういった問題をベースに置き、加えて格差社会が介護の世界にも影響を及ぼしていることを痛烈に皮肉ったドラマとなっている。
    重くなりがちなテーマを扱いながらも、コミカルなドタバタ劇にして、介護疲れを感じている読者に共感と癒しをもたらす意図で描かれた作品ともいえる。
    舞台となるセブンスタータウンは高級高齢者のための介護付き居住施設だ。
    住人は医者、大企業の役員、経営者、元芸能人、出版社編集長などハイソサエティで裕福な人ばかり。
    その施設内の食堂ウエイトレス、受付で働く従業員、看護師の3人の女性が主役となるが、彼女たちはいずれも親の介護に関し深刻な問題を抱えている。
    それぞれに事情があり、ほとんど一人で親の世話をし、限界状態にある3人と、対照的に最高級の暮らしをするセブンスターの住人。
    3人は住人たちとの格差が我慢ならず、自分たちの親も何とかここに住まわせようと虚々実々の策略を始める。
    策略は大胆さを増すが、思わぬ事態から破綻をきたす。だが、3人は諦めず、一部の理解ある住人も巻き込んで、とんでもない結末を招く。
    介護の格差を世に知らしめるためには、非合法で明らかに犯罪と言える手段も辞さない展開は読み手にとってはドラマチックで痛快だが、少しやり過ぎ感があることも確かだ。
    しかし、NHKでドラマ化もされており、もし、映画化されたらドタバタコミカル劇だと割りきって見たくなる気がする。
    追記しておきたいのは、セブンスタータウンでは上の階が介護付き居住室となっており、体が不自由になったり、認知の傾向が出ると「上へ行く」というシステムになっていること。「上へ行く」ことは疎まれる人になるということを意味し、下の階の住民はそれを何より怖れる。学識や名誉があり気位が高い層ほど、要介護になることへの落差を強く感じるということもこの小説が伝える要素のひとつなのかもしれない
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    投稿日:2024.03.25

  • ももんが

    ももんが

    舞台は高級老人ホーム、そこで介護をする人々たちの生活はリッチでも何でもなく、認知症とか格差問題を前半思い切り共感して読んでいたら後半、ドタバタ!こんなことあり得ないだろ、でもあったらどうする?ハラハラドキドキして一気に読んじゃった。毎日新聞で掲載されていたそうで、映画化の話もあるそうだ。高齢化社会の日本、他人事ではない!
    老人の格差ほど酷いものはないとの思いが込められている。
    老人多いからそうなるのかも。こどもの格差のほうが根深いと個人的には思うんだけど、それは立場を変えて見ないとわからないのかもしれない。
    超高級老人ホームがどんなにゴージャスなのか、初めて知りました。林さんにしかこれは書けない。林真理子さん、お母さんが大好きなんだなと妬む気持ちは一切なく、そこは素直に伝わりました。
    後半はびっくりしたけど、一気に読めるのでいいと思います。誰にも読みやすいって大事です
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    投稿日:2024.02.19

  • ゆるゴム子

    ゆるゴム子

    それぞれ家庭の事情を抱え、親の介護に奮闘しながらも高級介護付きマンションで働く3人の女性。自分達との貧富格差を目の当たりにして、徐々に欲望が膨らみ、とんでもない行動に出ることに。
    確かに社会通念とは外れる行動ではあるけれど、3人の女性の突き抜けた発想や結束力が好きで、読みながら応援してしまいました。
    林真理子さんの本は痛快で誰も傷つけない優しさもあり、読後感も抜群に良いので好きです。
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    投稿日:2023.11.28

  • 加藤

    加藤

    このレビューはネタバレを含みます

    登場人物の8割が犯罪者と聞いて読んだ。面白かった。
    ご老人は、自分の人生の舵を握ることはもう難しいのだなと思った。なんせ体もうまく動かせない。それゆえこれまでの人生が浮き出てくる。一番わかりやすい形が、お金。
    ラストのご老人たちが楽しそうで羨ましい。わがままに好き勝手やって、穴だらけだけど大義名分があれば罪悪感もないし一番楽しい暴れ方をしている。なにより、首謀者じゃないので責任もそんなない。
    若者ばかり情熱があると思われてるけど、体力や場所がないのと、許されない空気感があるだけで本当はみんななんでもいいからどんちゃん騒ぎしたいんだなぁ。だから渋谷ハロウィンもセブンスターのハロウィンパーティーも盛り上がる。
    このあとどうなるんだろう。お金があればなんとかなりそう。あぁ、無情。
    お金持ちも貧乏人も、その人を大切に思う人が悲しまないような最期を迎えてほしい。

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    投稿日:2023.10.18

  • まよひが

    まよひが

    とんでもない展開に面をくらった
    正直この主人公たちに共感はできない
    計画杜撰過ぎ
    でも面白かった
    ラストの老人たちが学生運動さながら生き生きするところがよかった

    投稿日:2023.09.29

  • you

    you

    介護のリアリティ、格差を実感するお話。コミカルで笑えるような、せつなくて泣けるような。他人事でないことはわかりました

    投稿日:2023.08.28

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