【感想】意識のリボン

綿矢りさ / 集英社文庫
(30件のレビュー)

総合評価:

平均 3.4
2
11
10
1
2

ブクログレビュー

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  • まっしべ

    まっしべ

    空をたなびく一筋のリボンのように。
    ぎゅっと握れそうなのに直前で手の中をヒラリと抜けて躱されてしまうような、掴み所が無いようでいて確固たる芯が通った作品集だと感じた。
    綿矢先生がちょうど結婚・妊娠・出産というライフステージを経験されたあたりに発表された作品群との事で、その心境が色濃く反映されていると思う。


    先生がご結婚されたのが2014年12月、この年に発表されているのが《ベッドの上の手紙》(14.1)と《こたつのUFO》(14.6)の二作品。《手紙》はたったの4ページにも満たない短編ながらずっしりと質量を備え、本書中でもヘソの辺りに収録されているまさに重心のような一編では。また、この話だけが男性目線で書かれているというのも異質感を強める。が、振り返ってみれば「冗談」(p66)でしかないのかも知れないが。《こたつ》は巻末解説に曰く「太宰治の短編小説「千代女」へのオマージュ。」(p198)との事。綿矢先生は太宰治に傾倒されていたとの事で、恥ずかしながらその辺りを知らず、読んだ事も無い私には真意を汲み取れたとは言えないが、本書において綿矢先生が語りたいことの大半がこの話に凝縮されていると思った。特に「皺」(p61)ひいては‘老い’というものへの毅然とした姿勢は凄まじい。

    《怒りの漂白剤》という話も台風のようなめくるめく一編。「しかし平常時にまで心が揺れている今の状況は、まずい。」(p115)との感じは物凄くよくわかる。私も独り身の時はのほほんニヘラニヘラと過ごしてあまり怒らない質であったが、結婚して子どもらが出来たあたりから常に何かに対して怒りを感じる局面が多く、それは「ストレスの対象への怒り、自分への怒り。遺憾だ、残念だ、プレッシャーを感じて気が重い。これらの感情を抱えているとき、自分はしょんぼりしていると思っていたが、心の底では苦境にある自分に“なんで私がこんな目に”とほんのり怒っているのだった。」(p119)という明文化には実にハッとさせられた。そしてその解決法として「好きを好きすぎないようにする。」(p126)という提言には本当に目が醒める思いがした。一人っ子で親元も早くに離れた私は独りの時間が好きだったし、起きたい時に起き、食べたい時に食べたい物を口にし、食べたくなければそれで許されたし気まぐれに映画を観るのも旅行に行くのも好きだった。好きすぎたのだ。だからそれらが叶わなくなった境遇にほんのりと怒っているのだ。そして、知らず全てに怒り続けているから余計に疲れるのだ。
    当たり前かもしれないし我儘かもしれないが読んでなんだかスッキリした気がする。


    綿矢先生の思考の波濤にざっぷりとダイブ出来る小説風エッセイのような読み物。
    『リボン』をしっかり握って溺れないように。


    2刷
    2024.5.3
    続きを読む

    投稿日:2024.05.03

  • なんてひだ

    なんてひだ

    最初から最後までハマらない。難しい話だったよ、キーワードの言葉も何を伝えるのかも全然掴めないで終わりました、短編なのに悔しいね、唯一の読み切った事だけは褒めてもいいかな自分。

    投稿日:2024.02.16

  • うたえなが

    うたえなが

    図書館で借りたこの本。まず、「意識のリボン」というタイトルに惹かれました。手に取ってみると表紙もすてきで読むことにしました。短編集でどれも面白かったけど特に面白かったのは表題作の「意識のリボン」です。

    投稿日:2024.01.29

  • つらだ

    つらだ

    お洒落な表紙、「意識のリボン」なんてファンシーなタイトルだが、その中身はひどく人間らしい感情に溢れている。岩盤浴で見かけた見知らぬ女性二人組の間の歪なパワーバランスを外野から密かに憂慮してみたり、三十歳を迎えた女性が抱く、日に日に老い行く自らへの焦りを何気ない日常と混ぜ合わせながらユニークに表現してみたり。
    綿矢さんの小説に出てくる登場人物はとにかく濃ゆい。特にそのキャラクターを表現するための容姿、性格、言動、それらの描写の細かさには毎回舌を巻くものがある。この広い引き出しは一体どこから来るのか。常日頃から人間観察を欠かさずしているのかな。より多くの人間のことを見て、知っていなければここまでは書けないような気がするのだ。

    また綿矢さんは度々太宰治に触れられることがあるが、超短編「ベッドの上の手紙」の主人公である小説家の男性の卑屈さは、川端康成に宛てて書かれた太宰治の愛憎入り混じった手紙を彷彿とさせられた。「刺す。そうも思った」というかなりストレートなフレーズで有名なあの手紙である。
    それから、猟奇的事件のデマに踊らされる人々を描いた「声のない誰か」は若干ホラーテイストを含む話で、結末を読むと「果たしてそれは本当にデマだったのか?」と薄ら寒く感じた。

    個人的には「履歴のない妹」で登場する、過去に撮影された美しくも不気味なヌード写真を躊躇なく当人である妹が破り捨てるシーンが好きだ。「私は本物の、生の写真なんていらない。嘘っぱちでもいいから、笑顔でピースしている写真さえあればいい。人生で残しておく思い出は、安心でたいくつな方がいい」。
    この本を読んだ後、改めて自分のスマホのカメラロールを見返してみた。どの写真も笑顔だった。確かにそれは生の姿でなければ感情でもない、作り物を写しとったものかもしれない。それでもこのカメラロールに並んだ写真を見ると、わたしは確かに「安心」していた。写真とは過去の記録、思い出を残す以外にも、「安心」を作り出すための媒体なのかもしれない。
    続きを読む

    投稿日:2024.01.07

  • 朱夏

    朱夏

    エッセイっぽい小説。

    割とサクサク読めたけどノンフィクションっぽい表現が多々あってイマイチ物語に入りこめず。
    綿矢りささんの女性描写は本当に美しくて好きです。

    投稿日:2023.12.19

  • りんりん

    りんりん

    短編小説の集まりで読みやすかったが、話の内容がイマイチ理解しにくかった。
    各話の最後にあとがきを読めば、内容の理解が深まると感じる。

    投稿日:2023.11.28

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