【感想】ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する

ジーヤ・メラリ, 青木薫, 坂井伸之 / 文春e-Books
(5件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • ぱーみら

    ぱーみら

    一般相対性理論や量子力学などの専門的な理論を、一般人にもわかるように噛み砕いてくれる筆者の説明力がすごい。
    物理学研究者たちとのインタビューを重ねていきながら、宇宙を創り出すという一見途方もないテーマに徐々に踏み込んでいくという本書の構成も面白い。

    この本の筆者のように理系の専門知識と文系の文章力の両面で非常に高いレベルの資質を持っている作家は、主語が大きくなってしまうけど、日本にはなかなかいないだろうなぁ、と少し劣等感のようなものを感じる。
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    投稿日:2023.06.10

  • やすお

    やすお

    宇宙マイクロ波背景放射の観測から相対性理論、ビッグバン、量子力学、磁気単極子、インフレーション理論へと、関係科学者にインタビューをしながら、加速器で人類が宇宙をつくる理論について解説する。理論的には宇宙を創造するレシピは分かっていることに驚き。不足しているのは磁気単極子とこれまでにない高エネルギーで粒子を衝突させる加速器くらい。神の領域に達しようとする人類の科学力。つくられた宇宙を見たいような見たくないような複雑な気分。続きを読む

    投稿日:2021.04.25

  • shumeis

    shumeis

    宇宙論の権威たちへのインタビューをベースに構成された読み応えのある本。宇宙を創る話と神の存在を信じるかという話が融合している。最初は突拍子もなく感じる話が、宇宙創造の仕組みを考えるうちにそうでもなくなり、人間が宇宙の創造主に成りえる可能性が出てくる。宇宙が生命誕生に適しているのは人間が存在できているからという人間原理も並行宇宙の無限に近い組み合わせのなかでは当然ということで、インフレーション宇宙やひも理論がどのように関わってくるかも見えてくる。続きを読む

    投稿日:2020.06.08

  • sou (08thse)

    sou (08thse)

    シミュレーション仮説、宇宙を創る本。
    哲学的な面もあり、なかなか深い想像の世界に入り込める本だと思います。

    投稿日:2020.06.08

  • 澤田拓也

    澤田拓也

    実験室で宇宙を作ろう、という話で、その理論と少し無謀な挑戦の話かと思ったら、どうも主旨が若干違っていた。

    宇宙物理学者が創造主をどう考えるのか。多くの科学者は、素粒子物理学の統一理論を構築したノーベル賞物理学者のワインバーグのように、完全合理主義者であり、そのことを標榜もしている。アインシュタインが神はサイコロを振らないと言ったとき、もちろん彼は必ずしも人格神を信じていたわけではない。リチャード・ドーキンスは、宗教が生む非合理的でときに危険な行動を批判したアンチ宗教の立場で有名である。学問の世界では、創造論への信仰をほのめかすのは、明らかにその人の研究者としての評価には大きなマイナスであるらしい。

    一方で、この著者はそれを理解しつつ、どこかで創造主たる神の存在を信じたいという気持ちを持っている。その著者に、量子物理学の理論を通して、人間が実験室で宇宙(ベビーユニバース)を創造する可能性が開かれたとき、神の存在を取り返すことができるのではという希望が開いたのではないのだろうか。そして、著名な物理学者でもあるツェーが、過去の論文においてそれをほのめかしていたのを知って、インタビューを試みるとともに、その探求を進める。

    例えば著者は、もし仮に創造主がいたとして、何か情報を伝えるとすれば宇宙背景放射を通してしかないとして、何かのメッセージが埋もれていないかを探してみる。今のところそういったメッセージは読み取れないのだが。

    本書の内容は、マルチバースにつながる量子宇宙論、量子論を説明するための量子もつれ、背景放射につながるインフレーションモデル、新しい真空モデル、磁気単極子につながる大統一理論、宇宙を創るための粒子加速器、ひも理論、ブラックホール問題、など網羅的である。著者は博識であり、その理解もおおむね世間の主流に沿っている。

    しかし、著者の考えが少しずれているのではと感じるのが、人間の自由意志によって選択するたびに平行世界が生み出されるといった考え方をしていることが明らかになったときである。多世界が存在する契機は人間の自由意志といったレベルではなく、量子のレベルで発生するものであり、だからこそ世界は量子化(デジタル化)されているという論理ではなかったか。また、多世界で複数の自身のコピーが存在する中でこの世界の罪を裁くことに意味があるのかとまで言い出すと、それまでの科学者としての著者への信頼が崩れる気がする。やはり、宗教や道徳は、こういうと色々と言われそうな気がするが、原理的には相性がよくないことを明らかにしているようにも思う。
    「人工的な宇宙を創ることに伴う被造物の正味の幸福と、全体としての善(悪)を計算するにはどうすればいいかという問題」とまで言い出すと、もはや論点がずれてしまっている。創造主たるものが仮に存在したとしても、それは善悪の彼岸を超えたものであるのは間違いないのだから、幸福や善悪が神の企図としてどうなっているのかなどは、仮にも考えることが必要な問題ですらない。実験室で宇宙を創る、という試みは興味溢れるテーマだし、科学的な事実も丁寧に書き込まれているが、そこに著者は過度に宗教的期待を持ってきており、また宗教的な読者をその先に想像して書かれているところが鼻白むところなのである。ツェーのインタビューが上手くいっていないように見えるのは、インタビュイーとしての著者が思い込みの上で答えを誘導しようとしているところがあるからだという可能性もある。なにせここまで最新の科学技術に精通をしておきながら、「神はどこにでも希のままに魂を作ることができるはずだから、ベビーユニバースに生じた生命には神は魂を与えないなどと、なぜ言えるのだろうか?」と言ってのけてしまうのだ。いずれにせよ、宗教(しかもキリスト教)の正当化に結びつく段になると途端に非科学的になってしまうのは、不思議で理解できないところでもあるのだが、だからこそ、この課題はおさまらないのだろう。

    少し付け足しで書いておきたいのは、インフレーション理論をアラン・グースと同時期に独立に作り上げた佐藤勝彦の名前が、その貢献が正当に知られていない科学者として挙げられている点である。確かに欧米の著者によって書かれたどのような本を見てもアラン・グースの名前ばかりで佐藤勝彦の名前がないことは気にかかっていた。それだけではあるけれども、少しうれしい気持ちになる。ある意味で信仰者は真面目なのである。
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    投稿日:2019.10.13

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