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エイモア トールズ, 宇佐川 晶子 / 早川書房 (30件のレビュー)
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竹馬
人生を投げないって実はすごく難しくて、かっこよくて、魅力的!正しく、賢く、健やかに!健気に!生きたいな!
投稿日:2023.11.02
塞翁が馬
読みたかった本の中の一冊。 チャーミングな小説でしたが、最後のスリリングな展開には心踊りました。ロシア版『ショーシャンクの空』?。『自分の境遇の主人とならなければ…』は良い言葉でした。 600ペー…ジ、大晦日に読み終えて良かった❗映画『カサブランカ』、観てみます続きを読む
投稿日:2022.12.31
がと
1922年、革命後のロシア(ソ連)。新政府によって王族や貴族が次々処刑されるなか、パリから祖国に戻り、そのまま残ることを決めたアレクサンドル・ロストフ伯爵。過去に発表した一篇の詩のおかげで死を免れた伯…爵だが、それからはモスクワの中心地にある高級ホテルから一歩もでられない軟禁生活を送ることに。滞在していたスイートから狭い屋根裏へ移され、客から従業員へいつしか立場を変えながら、ホテルが全世界であるかのように味わい尽くそうとした男の半生記。 トム・ハンクス主演のスピルバーグ映画みたいな小説。装幀から漂うウェルメイド感は読者を裏切らず、古き良き時代の上品な世界に連れていってくれる。 ロストフはソ連にとって文字通り「古い時代の人間」になってしまったのだが、各国の要人も訪れる高級ホテルであるメトロポールにはまだまだ彼と同じ時代の流儀と矜持を持った人びとが残り、働き続けている。最初あくまでメトロポールの客だったロストフは、時代を経てレストランの給仕長を担うことになる。確かにそれは時代が変わろうと、「どんな喧騒のなかでも、倒れたカクテルグラスを元に戻す」という優雅な秩序回復のしぐさが求められる役職なのだ。 ロストフが客であることをやめ、ホテルで働くようになる転換点が「さらば」の章なのだが、ここで自死を選ぼうとしたロストフと、そうとは知らず話しかけてきた養蜂家アブラムとの屋上での対話が作中で一番好きだ。二人が共に懐かしく思いだすニジニ・ノヴゴロドでの平和な日々は、二人の階級差が最も開いていた時代の記憶でもある。伯爵と養蜂家は膝を付き合わせて蜂蜜を賞味し、ロストフは自殺を取りやめる。 社会主義からは取り残されたが、ホテルには居場所を作ることができたロストフと対立するのが、メトロポールに併設されている庶民派ビストロの給仕から党員のコネで出世していくビショップだ。順調に出世していくところからして彼は外の世界で上手に立ち回っているんだろうけど、ホテルには必要とされていない、だからロストフを逆恨みするという悲しいキャラクターである。 ビショップはあとで読者をスカッとさせるためにヘイトを溜めていることがわかりすぎてしまい、彼の扱いは最後まで愛がなくて悲しかった。オシプすら愛嬌たっぷりに描かれているというのに。ロストフが逆恨みを買いやすいというのは妹の死をめぐるエピソードでも念押しされていて、それは彼の身についた優雅さの強調でもあるのだろうけど、私は庶民なのでちょいちょい鼻に付いてしまう。チャールズとの「このホテルは僕たちみたいな人間のために作られてるんですよ」なんて会話を、元投資家のアメリカ人が書いてると思うとイラッとする(笑)。でもこれは『バベットの晩餐会』にも通じる、貴族文化に対する憧憬と反発という大衆の二律背反そのものなんだろう。 この小説の一番の魅力は文体だと思う。「チャーミングな文体」と評されて、作者は「伯爵が引きだしたもの」と答えたらしいが、終始ユーモラスな地の文のテンションに引っ張られて最後まで楽しく読めた。古き良き完全な神視点の三人称だけど、これは全てを見ていたメトロポールの声だったのだろうか。日本語でも「チャーミング」という言葉がぴったりな訳文に仕上げてくれた宇佐川さんに感謝!続きを読む
投稿日:2022.10.29
とりももこ
めっちゃ好き…… 大変な境遇だけどずっと陰鬱とした雰囲気じゃないので読んでて元気が出るし、出てくる人が親切で良かった…… ソフィアが好きです。
投稿日:2022.08.29
お粥
「優雅な生活が最高の復讐である」という言葉を地でいったような、ホテルという箱庭の中のめくるめく日々。限られた環境の中でも知性と明るさで朗らかに乗り切る伯爵の姿にこれこそが教養だ、という感じがした。
投稿日:2022.05.05
ただ
革命政府に無期限の軟禁刑を下され、高級ホテル「メトロポール」の屋根裏で、一生暮らさねばならなくなった、「アレクサンドル・ロストフ」伯爵。 しかし、心技体ともに貴族としての誇り高き精神を持ち続ける彼の…人生は、表向きは以前と変わらぬような、落ち着いた華やかさを見せているように感じるが、振り返ってみると、山あり谷ありの波乱万丈なものであり、大切な人との別れや、自分の人生を投げ出してしまいそうな時もあったが、気付いたら、やはり彼自身の人間性により、変わらぬ優雅さを纏って人生を歩む姿に、彼の、安易に譲ることのできない生き様を感じられたような気がしました。 そして、その人生は、たとえ私が体験できないようなものだとしても、何か共感めいたものも感じることができたのが、また印象的であって、女子供にあたふたする姿や、度胸をきめた一発勝負的な場面等には、貴族も感情を持った人間なんだなと(当たり前だが)、思いました。 また、彼の人生以外でも読み所は多く、彼の口から話される豊富な知識─歴史や文学、食事やワイン、音楽に映画、哲学、果てには人生観までも─を味わえる楽しさも心地良く、私的には、映画「カサブランカ」の細かいシーンから考察される、世界を変えるための密かで確かな一歩に、とても納得させられるものがありました。 更に、訳者あとがきにあるように、数字への尋常ならざる拘りから、人間の感じる時間の流れ(長短)を、小説内で再現していたり、序盤のエピソードが、後半の別のエピソードに反映されていたりと、ストーリーテリングも面白く、ロシア革命時代の知識が無くても、充分楽しめると思います。 なぜなら、作者の「エイモア・トールズ」が描く人間の姿に、時を超えた普遍的なものを感じたからであり、以下のような見方をしてくれる方の小説が、楽しくないわけがないからです。 『人間はまことに気まぐれかつ複雑で、愉快な矛盾のかたまりであり、正しく見極めるには、熟慮どころか、再熟慮すべきなのだ─そしてできるかぎりあらゆる時間に、できるかぎりあらゆる状況で親しく付き合うまでは、軽々に判断しないというゆるぎのない決意が必要なのだ』続きを読む
投稿日:2022.02.26
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