【感想】ホメロス イリアス 上

松平千秋 / 岩波文庫
(35件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • サマ

    サマ

    この前読んだユスティノスの著作にけっこうホメロスの引用があったので、当時のギリシア語教養としてその辺を抑えておくのも必要なのかなと思い、この際読んでみることにした。
    もっと退屈なものを想像していたけど、思った以上にダイナミックで臨場感あふれる感じで面白かった。しかし、人間の戦いや生き死にに私情で適当なちょっかいをかけて干渉してくるギリシア神たちの残酷さは恐ろしいけど、神とて決して完ぺきではなく、騙し騙されたり親に泣きついたりとなかなか憎めない。人間にしても、自分の女を取られたという理由だけでこんなに大規模な戦争を10年もしたり、すねて参戦をやめたりしているのだからしょうもない。そんな神・人間の利己的な成り行きの上に、義侠心による助け合いや勇猛な活躍の壮大な抒情詩が描かれるのがかえってその厚みを確かなものにしているように思える。
    神の機嫌一つで英雄も死んでしまうが、現代のスポーツなんかでも神の計らいとしか思えないことは起こるものだ。古代の戦争でもそんなことがたくさんあり、それは時代を経ても変わらないのだろう。神のちょっかいは、人間の心の中にずーっと息づいている!
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    投稿日:2023.07.24

  • ゆうたろう

    ゆうたろう

    軽快率直な文体ながら、美しい比喩や直接的な戦場描写が光るホメロスの長編大古典。
    古代ギリシャの神々がさらりと介入してくるあたり、人と神の境界が曖昧で現実感が揺り動かされる。
    三国志とか戦国時代の戦記ものを読んでる感覚。
    オデュッセウスやアガメムノン、アキレウスやヘクトル、オリンポスの神々など、まさに英雄や神が名を馳せる時代で、彼らを強度なキャラ的誇張表現で持って描いたのが、昨今、日本でよく見られるアニメ群たち。
    翻訳者の方の仕事も素晴らしい。
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    投稿日:2023.06.07

  • djuax

    djuax

    スパルタ王の妃が誘拐された。犯人はトロイア(イリオス)。怒ったスパルタ王は復讐のため、トロイアに軍を送る。総大将アガメムノン。知謀知略のオデュッセウス。瞬足のアキレウス。▼アキレウスは戦地で美女ブリセイスを妻にする。ブリセイスは夫を失い捕虜になっていた。しかし情欲と権力欲アガメムノンが美女ブリセイスを横取りする。怒ったアキレウスは戦線から離脱。アキレウスを失ったスパルタ軍は苦戦。▼戦線から離脱していたアキレウスは親友パトロクロスが戦死したことを知る。アガメムノン「アキレウス、帰ってきてくれ。お前の女を横取りして悪かった。あのとき、私は狂気の神に取りつかれていたのだ」。納得したアキレウス、戦線に復帰。アキレウスはヘクトール(トロイア王子)との一騎打ちに勝利。スパルタ軍は木馬に兵を忍ばせてトロイアの城内へ侵入。トロイア陥落。ホメロス『イリアス』

    知謀知略のオデュッセウス。トロイア戦争が終わり、故郷に帰るまでの冒険物語。一つ目巨人キュクロプス。ロータス(蓮)の実を食べて過去を忘れた人を豚に変える魔女キルケー。美しい声で人を島に惹きつけて難破させるセイレーン。▼現在の難儀もいつの日かよい思い出になる。▼逆境における希望、順境における気遣いは、幸いと災いに備える感情である。ホメロス『オデュッセイア』
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    投稿日:2023.03.19

  • lho

    lho

    個人的には『オイディプス王』以来久しぶりの古代ギリシア文学。気づいたこととしては、「〇〇の息子、〇〇は」とか、「〇〇の息子は」といった表現が多く、ゼウスとは言わず、クロノスの息子と言われるとややこしいが、一方で毎回毎回複雑な家族構成を振り返りやすかった。

    読み始めて300pぐらい経った頃に、巻末に家系図が載っていることに気づき、「しまった!こんな便利なのがあったのか」と思った。
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    投稿日:2022.12.14

  • 一条浩司(ダギナ)

    一条浩司(ダギナ)

    紀元前8世紀ごろ口頭詩として制作されたとされる長編叙事詩。ギリシャ神話を題材とした、トロイア戦争を描く。

    概要は有名な話であるし、2004年の映画『トロイ』も観ていたので、大ざっぱな筋書きは知っているつもりで、原典となる本作に挑戦してみた。すでに戦争が10年経過しているところから始まり、冒頭からアキレウスとアガメムノンのケンカが始まるので、多少の予備知識がないとやや面食らうかも。パリスがヘレネを連れ去ったという戦争の原因についても、知っている前提として話が進む。

    映画と決定的に違うのは「神々の介入」。オリュンポスの神々が、それぞれのひいきの軍の動向を見守り、敵軍を支援する神を相手に言い争いをしたり、場合によっては肉体を持って自ら戦場におもむき掩護したりする。さらには、ゼウスがイデの山上から戦場を眺めながら、トロイエの勝利のためにあれこれ画策をしたり、お気に入りのヘクトルを守ったり。まるでお茶の間で巨人ファンの父親と阪神ファンの長男が推しの選手をネタに言い争っているかのごとく、またはシム系のシミュレーションゲーム(ストラテジーゲーム)をプレイして各ユニットやキャラクターに干渉するかのごとくである。これによって聞く側(読者)は、人間たちのドラマとそれを俯瞰する神々、両方の間に視点を持つことになり、物語に独特な味わいを生んでいる。こういった要素を現代の基準で映像化するのは難しいだろう。舞台上の演劇ならともかく、映画やTVドラマのような映像作品でこれをやってしまうとコメディになりかねない。先述の映画『トロイ』では、神々の要素をざっくりカットして、純粋に人間どうしの戦記ものとして描いており、これには賛否あるようだが、原典に触れてみた今、これは英断だったと思わざるをえない。

    もうひとつ気になったのは、ギリシャ神話をモチーフにした作品ではよくあることかもしれないが、人物名の多さに辟易したこと。クリュセスにクリュセイス、プリアモスにブリセイスなど、語感が似た名前も混乱する。とはいえ、主要な人物さえ把握してしまえば、人名の80%くらいはどうでもいいやつだと後で気づいた。なのでこれから読む際にはご留意いただきたい。
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    投稿日:2022.09.20

  • yoshizo147

    yoshizo147

    (歴史ではなく神話ですが、)様々な本でイリアスのプロットや登場人物がメンションされているが、そのバックグラウンドを知ることができて満足。

    物語としても、とてもおもしろい。

    投稿日:2022.03.06

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