【感想】火環

村田喜代子 / 平凡社
(8件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
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ブクログレビュー

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  • ひとみん

    ひとみん

    面白かった!八幡炎炎記だけでは足りない、これも合わせて堂々の完結。人が生きて死ぬ。いろんな欲がある。人の生き様が興味深い。子どもや若者は何事もなしていないから悔いがないという記述になるほど…!と思った続きを読む

    投稿日:2024.01.16

  • wwords

    wwords

    面白かった!
    ヒナ子の成長ぶりも、克己さんの逡巡も大好きだ。
    サトばあさんになりたい。
    いいとか悪いとかを超えて、生きてることと死ぬことがよくわかる。
    作家さんは、目の前に広がる世界を、心の動きをニヤッとしながら写し取っているみたい。
    とても好きな小説。
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    投稿日:2021.09.18

  • kuritanu

    kuritanu

    このレビューはネタバレを含みます

    『八幡炎炎記』が「第一部」となっていたので、少なくとも三部はあるに違いないと楽しみにしていたのだが、これで「完結編」!?
    村田さんの体調が悪いのだろうか、それとも第一部が売れなかったからなのか・・・。
    しかし、これも十分面白かった。
    村田さんは「ヒナ子」だと思うが、中学を出た後、働きながらシナリオライターを目指して家を出ようとするところまでなので、せめてシナリオライターの夢は破れ、小説を書こうとするところくらいまでは書いてほしいなあ。八幡製鉄所がまだ活気に満ちていたころ(朝鮮戦争特需、神武景気、岩戸景気があり、日本がどんどん豊かになっていったころ)の話なので、寂れてしまった北九州の様子も書いてほしい。

    映画を見ながらシナリオを書いてみるシーンがあり、こういう経験が小説を書くとき大いに役立ったに違いないとか、「小説家」以前のところも興味深い。
    当時の庶民がどんなに映画を楽しみにしていたのかが、リアルに(特に「ゴジラ」を見るシーン)わかって胸が熱くなった。みんな、ゴジラを応援していたんだね。
    また、新藤兼人の「裸の島」の浅さを祖母が看破するところも面白かった。
    実際に経験した人が見ればありえないっていう名作たくさんあるよね。
    ヒナ子だけでなく、親戚の子どもたちも、皆養子だったり、本当は姪や孫だったり、血の繋がりの薄いところも、ヒナ子が作家になる下地となったような気がする。
    第一部の主人公は克美っぽかったが、この本では老いてきて、だんだんヒナ子たちに比重が移ってきている。

    面白いところで終わっているので、ヒナ子の青春真っ盛りとなる三冊目もやっぱり書いてほしい。

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    投稿日:2019.08.16

  • todo23

    todo23

    製鉄の街・八幡を舞台に、戦後の復興期から高度成長期にの昭和の世相と、そこに住む人たちを"火"や"光"に託して描いた作品です。『八幡炎炎記』の続編というより炎炎記と本作を合わせて一つの作品ですね。
    他人の妻や愛人にだけ昏い情欲を感じる克美は、妻のミツ江の子宮癌を機に献身的な介護を始め、その死後は情欲をミツ江に持ち去られたように、暖かな晩秋の雑木林のような明るさを持ち始める。その一方で天真爛漫・自由に飛び跳ねていたヒナ子は、中学生になると映画の世界に浸りこみ、シナリオライターになりたいと情動を持つようになる。対象は違うけれど克美からヒナ子に「業」が移ったように見えます。それに伴い『八幡炎炎記』で感じられた克美とヒナ子を描く時に文体の差が統一されて行くようです。上手いなぁ。
    他にも、祖母・サトの生活視点からの新藤兼人監督の映画「裸の島」のシナリオ否定など印象的シーンが多数あります。

    村田さんの自伝的小説です。気になって村田さんの経歴を調べてみました。
    12歳で小説を書き始め、本を買うために当時の女子では珍しい新聞配達のアルバイトを始める。人と同じことを求められる学校が嫌いで高校には行かず、鐵工所勤務や映画館のモギリをしながらシナリオライターの勉強をし、22歳で結婚。しばらく育児に専念するが30歳の頃から再び書き始め、40歳の時タイプライターで打った原稿をホチキスでとめただけの個人誌を作って「文學界」の編集部に送り、その中の「熱愛」という小説が「文學界」に転載され、芥川賞候補になった。
    やはり個性的な人ですね。
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    投稿日:2019.03.09

  • やんち

    やんち

    このレビューはネタバレを含みます

    サブタイトルに「八幡炎炎記完結編」とあるが、完結したのやらまだ続くのか、よく分からない。
    ヒナ子はシナリオライターの道をあきらめずに目指すのか、克美は女なしで生きていけるのか…。
    村田さんの小説の狙うところはもっと奥深いのだろうが、そんな浅いところが気になって仕方がない。

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    投稿日:2019.01.16

  • take08556

    take08556

    『八幡炎炎記』の続編。時間は昭和二十七年から昭和三十五年にかけて、さらさらと流れて行く。時代は戦後の復興期から高度成長期へと活況を呈していく筈なのに、物語は何処か儚げで淋しい。『八幡炎炎記』ではわさわさと賑やかだった人達が段々と影を潜めていく。主人公の一人、ヒナ子も本書で話が進むに連れ、何処か印象が薄くなってしまう。もう一方の主人公である克美は最後に小さな光を見つけることが出来たのだろうか?
    とは言え、楽しめるエピソードは随所にある。運動会の仮説便所の場面とか、スクリーンのゴジラとヒナ子の目が合うとことか、就職もしてないのに勘違いして工場に働きに通いだすとことか(子どもにありがちな勝手な思い込みが、如何にもありそうで微笑ましい。)
    ヒナ子の今後が読みたくもある。

    ――――――
    村田さんの放射能や放射線に対する眼差しというのは、「光線」連作で描かれることになった東日本大震災・福島第一原発事故と自身のがんの放射線治療に端を発するものかと思っていたが、実はもっと昔から村田さんを捉え続けていたものなのかも知れない。終戦の年の八幡に生まれたという村田さんは、もし計画が変更されず当初の予定通りに八幡に二つ目の原子爆弾が落とされていたら、自分はこうして生きていなかったかも知れない、そんな考えを内にずっと引きずって来たんじゃないか。それが2011年に起きた出来事によって、より鮮明に村田さんの意識に立ち現れたのではないだろうか。克美をずっと捉え続ける広島の原爆で死んだ親方と生き延びた自分という明暗、ヒナ子がゴジラに向ける共感といったものは、何れも村田さんの錯綜する感慨の表れなのかも知れない。そんなことを自叙伝的作品だと言われるこの二作を読んでふと思った。
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    投稿日:2018.11.08

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