【感想】ラオスにいったい何があるというんですか?

村上春樹 / 文春文庫
(92件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
16
42
22
1
0

ブクログレビュー

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  • 湖南文庫

    湖南文庫

    本書は、村上春樹(1949年~)氏が、1995~2015年にいくつかの雑誌のために書いた紀行文をまとめたもの。大半の初出は、JALのファーストクラス向け機内誌「アゴラ」(但し、雑誌に掲載されたものより長いバージョンだそう)で、その他は、雑誌「太陽 臨時増刊」、雑誌「タイトル」、雑誌「クレア」である。2015年に出版、2018年に文庫化された。
    訪れた場所は、米ボストン、アイスランド、米のオレゴン州ポートランドとメイン州ポートランド、ギリシャのミコノス島とスペッツェス島、ニューヨークのジャズクラブ、フィンランド、ラオスのルアンプラバン、イタリアのトスカーナ地方、熊本で、村上氏が過去に数ヶ月~数年間滞在した場所(ボストンやギリシャ)への再訪もあれば、初めて訪問した場所もある。
    私は、本はよく読むものの、多くがノンフィクションで、村上氏の作品についても、読んだ記憶があるのは、初期の『風の歌を聴け』、『羊をめぐる冒険』、『ノルウェイの森』あたりまでで、その後の小説は全く読んでいないのだが(私は天邪鬼的なところがあり、村上氏が注目されるようになるほど、読む気がしなくなったのだ)、紀行文集である本書は出版当時から気にはなっており、今般(出版から随分経ってしまったが)読んでみた。
    そして、読後感は予想以上に良いものであった。私は旅も好きなので、ノンフィクションの中でも、紀行文や世界各地を取材したルポルタージュをよく読むし、それらの大抵のものを面白いと感じるのだが、紀行文やルポは、書き手の感性や文章表現の特徴がよく出るジャンルなので、その面白さの差(更に言えば、好き・嫌い)が意外にはっきりするものである。そうした点で、村上氏の紀行文は、関心の対象やそれらの表現の仕方が自分に合っていて(例えば、村上氏の紀行文では、( )書きの細かい補足や、一つの段落が「・・・だけれど。」という逆説で終わっていることが比較的多いが、これは書き手の思考・表現のくせだと私は思っており、私もそういう文章を書くタイプである)、心地よく読むことができた。
    また、私の最も好きな書き手は(紀行文に限らず)沢木耕太郎で、本書を読んでいる途中で、しばしば、沢木氏の作品を読んでいるような錯覚に陥ったのだが、それは、両者の感性と表現の仕方が似ている(また、全体にスマートさを感じさせる点も似ている)からなのだと思われる。
    村上氏が90年代に数年間住んだというボストンについて書かれた文章の中に次のようなくだりがある。「かつて住民の一人として日々の生活を送った場所を、しばしの歳月を経たあとに旅行者として訪れるのは、なかなか悪くないものだ。そこにはあなたの何年かぶんの人生が、切り取られて保存されている。潮の引いた砂浜についたひとつながりの足跡のように、くっきりと。そこで起こったこと、見聞きしたこと、そのときに流行っていた音楽、吸い込んだ空気、出会った人々、交わされた会話。もちろんいくつかの面白くないこと、悲しいこともあったかもしれない。しかし良きことも、それほど好ましいとはいえないことも、すべては時間というソフトな包装紙にくるまれ、あなたの意識の引き出しの中に、香り袋とともにしまい込まれている。」
    私も村上氏と同じように、数ヶ月から数年の期間住んだ外国の街がいくつかあるのだが、是非改めてゆっくり訪れてみたいと強く感じた。(国内の街でも同様のことは感じるのであろうが、外国の街の方が、それは一層強いに違いない)
    (2024年4月了)
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    投稿日:2024.04.04

  • ようすこう

    ようすこう

    かなり脱力した感じで書かれている旅行記。
    旅で感じた色々な匂い、空気、音。それが一体何の役にたつのかは分からない、役に立たずに終わるのかもしれない。しかしそれが旅というもので人生というものだという記述が、この本の全てを物語っている気がする。続きを読む

    投稿日:2024.03.30

  • Limei

    Limei

    村上春樹さんの視点、感性で一緒に旅したような楽しさ。

    アメリカ、フィンランド、アイスランド、ラオス、イタリア、ギリシャ、そして熊本。
    村上さんのステキな文章で、行ったこともない街も親しみを覚えてしまいます。続きを読む

    投稿日:2024.02.28

  • K.K.

    K.K.

    軽快な紀行エッセイ。表題はラオスだが、いろんな国を訪れ、暮らした時の様子が描かれている。これは結構好き。

    投稿日:2024.02.27

  • Woody

    Woody

    村上作品はこれまで幾度となく挑戦し、最後まで読んでもあまり面白さはわからなかった。
    旅行記なら面白いと聞いて読んでみたが、小説よりは確実に楽しめた。

    「ラオスに一体何があるというんですか?」
    確かに、それがわからないからこそ旅行に行くのであって、それを見つけることが旅行の醍醐味。
    写真ではわからない、写真では残せないものを感じて脳に焼き付けたい。

    ワインに詳しくなりたいと思った。

    続きを読む

    投稿日:2024.02.26

  • じゅう

    じゅう

    村上春樹の紀行文集『ラオスにいったい何があるというんですか?紀行文集』を読みました。
    村上春樹の作品は昨年10月に読んだ『村上ラヂオ2―おおきなかぶ、むずかしいアボカド―』以来ですね。

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    旅をしている人にだけ見えてくる風景がある。

    そこには特別な光があり、特別な風が吹いている――ボストンの小径とボールパーク、アイスランドの自然、「ノルウェイの森」を書いたギリシャの島、フィンランドの不思議なバー、ラオスの早朝の僧侶たち、ポートランドの美食やトスカナのワイン、そして熊本の町と人びと――旅の魅力を描き尽くす、村上春樹、待望の紀行文集。
    「熊本再訪」初収録。
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    2015年(平成27年)に刊行された紀行文集……2018年(平成30年)に文庫で再刊された際に「熊本再訪」が初収録されています。

     ■チャールズ河畔の小径 ボストン1
     ■緑の苔と温泉のあるところ アイスランド
     ■おいしいものが食べたい オレゴン州ポートランド/メイン州ポートランド
     ■懐かしいふたつの島で ミコノス島/スペッツェス島
     ■もしもタイムマシーンがあったなら ニューヨークのジャズクラブ
     ■シベリウスとカウリスマキを訪ねて フィンランド
     ■大いなるメコン川の畔で ルアンプラバン(ラオス)
     ■野球と鯨とドーナッツ ボストン2
     ■白い道と赤いワイン トスカナ(イタリア)
     ■漱石からくまモンまで 熊本県(日本)1
     ■「東京するめクラブ」より、熊本再訪のご報告 熊本県(日本)2
     ■あとがき

    「旅先で何もかもがうまく行ったら、それは旅行じゃない」……村上春樹、待望の紀行文集、、、

    アメリカ各地、荒涼たるアイスランド、かつて住んだギリシャの島々を再訪、長編小説の舞台フィンランド、信心深い国ラオス、どこまでも美しいトスカナ地方、そしてなぜか熊本……旅というものの稀有な魅力を書き尽くす。カラー写真多数を収録。

    ボストン、ニューヨーク、アイスランド、ギリシア、トスカナ、ラオス、そして熊本……旅の快楽がぎっしり詰まった紀行文集でしたね、、、

    軽妙でユーモラスな文章で、旅先での出来事や感想、思い出などが愉しく語られていました……写真も多数収録されており、旅の雰囲気をより感じることができましたね。

    旅をすることの愉しさや意味に共感できました……久しく旅をしてないですからねー 読んでいると旅をしたくなりました。
    続きを読む

    投稿日:2024.02.22

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