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稀見理都 / 太田出版 (13件のレビュー)
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総合評価:
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あの鐘を鳴らすのはゴリラ
本書の目的はこんな研究もあるんだと知ってもらうことでそれは十分に達成できていると思う。 多様であるが故に定義が難しい分野への取り組み方を学んだ。 エロマンガと聞くとただ性的欲求を処理するための道具のよ…うに見られがちだが、その表現は研究対象になるべく表現の発端も広がりも多様だった。規制が逆に表現に広がりを持たせたり無修正が当たり前の国から見てもエロいと感じさせたり面白い点が多々あった。 続きを読む
投稿日:2024.03.24
亞綺羅
借りたもの。 エロ漫画定番の表現の種類・ルーツを体系的にまとめ分析した、ある種の禁忌?に踏み込んだ一冊。 それらは性への関心・好奇心、そしてファンタジー(妄想やマンガとしての面白さへの追及)と、規制と…の戦いが複雑に絡み合っていた。 女性の身体の性的に強調される部位の表現から、想像を掻き立てるためのものまで。 胸の大きさ、その立体感を出す陰影やハイライトから動きまで……私は名称が存在していたことに衝撃を受ける。 ‘日本の伝統’と言われるタコ(触手)責めが葛飾北斎の専売特許ではないこと、欧米のデビルフィッシュのイメージとクトゥルフ神話のイメージが日本に輸入されていることを指摘。“性器ではない”こととそのインパクトがジャンルとして確立したことを指摘している。 そしてジャンルは進化し、触手もタコっぽかったり内臓っぽくなったりメカになったりと多様化していく。 「断面図」という解剖学的な表現はホラー的な要素も相まって、ハードコア化…エログロ化との親和性があったり。「どうなっているのか?」という好奇心と非現実化。その文脈で男性の身体を透明化している(「男捨離」と言われているらしい)表現に繋がっているのは驚いた。(ルーツは別だと思っていた) 歴史?ある表現だと小さいながらも掲載している図版の多さに驚く。開拓した第一人者へのインタビューも載っている。 エロ漫画特有の表情のリアルとの相互影響、2000年代からよく見かけるようになった擬音?のルーツなども順を追って説明している。 規制修正との苦闘の歴史、世界のマンガ文化への影響なども網羅している。 個人的な見解:「男捨離」は‘様子を上手く見せることができないため編み出された技法だ。見えにくいところを見やすくという意味では「断面図」の発想に近い(p.355)’とあったが、“男性が”描かれている透明化された男性に投影(同調)しやすくなるためではないか、と思う。 女性向けのコミックでは男性が透明化されていることがあまりないため。続きを読む
投稿日:2022.04.02
なつ
このレビューはネタバレを含みます
パワーワードがすさまじかった…笑 おっぱいインフレーション 乳首残像 揺れはついに光速を越え 蛸と海女 断面図の貴公子 修正は美学だ デビデ像のハート目 エロマンガ女子会 単なるエロマンガと侮ることなかれ。表現史の勉強にもなるし、何より筆者のエロマンガに対する情熱、知識に驚く。あとがきにも様々な方の協力があったと記されているが、それでも筆者の表現力(時々理系的な言葉が出るのが面白い)とエロ漫画の知識の豊富さに尊敬を抱きます。
投稿日:2021.02.13
てけてけ
・少年誌、エロマンガ、映像作品はサイロ化されているわけでなく、相互に影響を与えあっている ・表現、概念はどこかで生まれた後、バズって市民権を得ると「記号化」される ・規制が表現の進化を促進する ・「く…ぱぁ」と「らめぇ」はマーク・チャンギージーに解説してもらいたい続きを読む
投稿日:2021.02.10
kyometica
エロマンガの歴史をあくまでアカデミックにまとめた1冊…とみせかけて、それ以上に文章全体から著者のエロマンガに対する熱い想いがヒシヒシと伝わってきて凄く楽しく読めました。内容自体もボリュームが多いものの…大味になっておらず、豊富な参考画像と照らし合わせながら読めますし、とても充実していたと思います。続きを読む
投稿日:2020.08.23
inumaro
エロマンガの研究には、永山薫『エロマンガ・スタディーズ』という名著がある。発表された2006年当時、エロマンガというジャンルは、研究や評論の対象としてはほぼ手つかずの分野。その未開の地を開拓して、エロ…マンガの歴史やそこで描かれるセクシャリティを体系立てて解説し、エロマンガ評論というジャンルをつくった画期的な本だった。この『エロマンガ・スタディーズ』に衝撃を受けてエロマンガ研究を始めたのが、本著の著者、稀見理都(このペンネーム自体がエロマンガ的)だ。 本著は、稀見理都の著作として2作目になる。そこで表現史を選んだのは興味深い。エロマンガは、その性質上、一般のマンガでは見ることが少ない部位やポーズ、シチュエーションを書く。また、エロという機能性が求められる。その結果、例えば「アヘ顔」や「乳首残像」のような、図像的に一般のマンガでは見る機会が少ない、ある意味では「とがった表現」が見受けられるからだ。表現の著しい進化や、それが一般のマンガに環流していく様子は、「第1章 「おっぱい表現」の変遷史」を読めばよくわかる。 一般のマンガ評論の分野で、表現論が大きく注目されたのは1995年に出版された「マンガの読み方」からだ。それまでの評論ではほぼスルーされていたマンガの「表現技法」について、手探りで見つけていくような内容だった。そこから2005年の伊藤剛「テヅカイズデッド」に至るまで、マンガ表現論ができあがる過程は、非常にスリリングであった。当時のムーブメントでは、どうマンガ評論を刷新し、新しくジャンルを作っていくかが、強く意識されていたように思う。 あのとき感じた「ジャンルを作っていこう」という熱気が本作にも宿っている。エロマンガ研究は、ジャンルの性質上、研究者がそもそもいないうえ、研究の基盤になるようなアーカイブやDBが存在しないそうだ。稀見理都は、どうもそれを整えながら研究をしようとしているらしい。エロマンガ界に逆風が吹いているなかで、このような人がいるのは、心強い。 エロマンガを唾棄すべきものだと思っている人も、だまされたと思って、是非この本を読んでほしい。続きを読む
投稿日:2020.01.22
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