【感想】山本七平の思想 日本教と天皇制の70年

東谷暁 / 講談社現代新書
(2件のレビュー)

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  • kemtarou

    kemtarou

    山本七平の歩んだ人生を通して、彼の思想に踏み込み、本質を分析しようとしているが、本書で取り上げられるテーマについては不明瞭なまま終わった感が否めない。本人の著作を直接読むことで再考することとしたい。

    投稿日:2017.10.12

  • コナン.O.

    コナン.O.

    フリージャーナリストの東谷暁が、山本書店店主にして1970~80年代を代表する評論家である山本七平氏(1921~91年)について、『日本人とユダヤ人』、『「空気」の研究』等の代表的な作品を解説しつつ、その人物像を追った評伝。尚、山本書店は、山本氏が創業した聖書学を専門とする出版社、また、『日本人とユダヤ人』(1970年)は大宅壮一ノンフィクション賞を受賞し、300万部を超えるベストセラーである。
    山本氏の日本社会・日本文化・日本人の行動様式等についての洞察の深さと、「山本学」とも称される、その思想の影響力の大きさは、本書の冒頭でも列挙されている、「日本人は空気でものごとを決めてしまう」、「日本人は水と安全は無料だと思っている」、「日本人は全員一致にこだわる」、「日本人は契約ではなく話し合いで仕事をする」、「日本人の宗教は日本教だ」といった言葉が、死後25年を経ても全く色褪せていないことが明らかにしている。
    では、山本氏がアウトサイダー的な視点から、極めて冷徹な論理でそれらを分析し得たのは何故なのか?本書では、クリスチャンの両親のもとに生まれたことにより、日本人でありながら、信仰においては「異教徒」とみなされるという幼少時代を経験したこと、父親の親族に大逆事件で処刑された大石誠之助をもっていたことが挙げられているが、特に前者の影響は限りなく大きかった。また、フィリピンでの太平洋戦争の体験も様々な影響を与えたことが述べられている。
    そして、「山本学」のキーコンセプトである、「空気」、「日本教」、「現人神と天皇制」等について考察が進められるが、それらの問題はいずれも繋がっており、それは、日本人の宗教観がアニミズムに根を持つからだと論じている。つまり、石や木にも魂が宿り、至る所に神が存在すると考えるアニミズムが根底にあるので、日本人は目の前のあらゆる現象を肯定的に受け入れてしまう傾向が強く、キリスト教徒のような堅固な一神教的論理・倫理を形成できないのである。しかし、山本氏は、こうしたアニミズムを基盤に持つ柔軟な考え方が、日本にとって、歴史のある局面では優越性を発揮したことを認めるのも忘れてはいない。
    そして最後に、山本氏がキリスト教徒であることと日本教徒であることに、如何に折り合いを付けようとしたのかについて触れているが、山本氏には「信仰や崇拝には非合理性があってもいいが、現実の世界をかたちづくっている制度や人間には合理主義を求める」という基準があり、それは、山本氏が「敵」としてきた「日本教」ばかりか、「キリスト教」でも逃れることができないもので、それ故に山本氏は自分のキリスト教への信仰についても最終的な結論を求めなかったのだという。
    「日本教」の弱点に我々はどう対処するべきなのか? 山本氏も回答を示していないが、著者は、『「空気」の研究』のあとがきにある「人は、何かを把握したとき、今まで自己を拘束していたものを逆に自分で拘束し得て、すでに別の位置へと一歩進んでいるのである。人が「空気」を本当に把握し得たとき、その人は空気の拘束から脱却している」という言葉の意味をどこまで深く理解するかにかかっている、と結んでいる。
    (2017年9月了)
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    投稿日:2017.09.17

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