【感想】脳からみた自閉症

大隅典子 / ブルーバックス
(13件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
2
3
3
1
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • hamakoko

    hamakoko

    https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000057402

    投稿日:2022.09.05

  • お転婆さん

    お転婆さん

    タイトルには「脳」と謳ってあるけれど、実際はその中の「遺伝子」が本書の中軸。つまり自閉症における遺伝子の影響は如何なるものかと言うことなのだけれど…。なにせ、著者が「かなり長くなりましたが、これでやっと自閉症と遺伝子の関係を見ていくための準備運動は完了です。」と記すのは245ページ中の193ページ目なのだ。で、本編はほんの数小節、しかもサビの部分である自閉症が増えている理由として挙げられているのは、遺伝子というより、母体環境だの父親の加齢だのといったあまり「遺伝」とはカンケーない要因(しかもほんの数ページ)なんだかなぁ…下手くそな前座の小咄を延々聞かされて、肝心の真打は風邪を理由にすぐに引っ込んじゃった、って感じ。ガマンして聞いてたのに足が痺れただけだった…。続きを読む

    投稿日:2021.08.01

  • ガパオスキー

    ガパオスキー

    このレビューはネタバレを含みます

    自閉症の正式名称は自閉症スペクトラム障害であり、発達障害(正式には主に胎児期における"神経発生発達障害")の一種である。自閉症の発案者である精神科医ブロイラーは、"自閉"の意味として「自分以外の他者・外界の一切を排除しているかのような患者の状態」とし、ギリシャ語の自己(Autos)を引用して名付けた。
    自閉症のコア症状は、①社会性の異常(人への認識・興味が薄い、他者の心の状態を推測しにくい)、②常同行動(興味の限定)、③感覚・運動の異常(音に敏感など)である。患者本人にとっては③が最も苦痛とされ、外界の正常な認識や積極的な接触を妨げる原因となっている。
    (神経発生)発達障害の一種である自閉症は、胎児期の神経発達プロセスのエラーが原因であり、通常、ご両親は我が子が3~5歳頃に気が付つ先天的なものである。つまり、自閉症は親の"育て方"により生じるものではない。著者は脳科学者であり、脳の発生学的知見(器質的なデータ)から自閉症等の原因究明にアプローチする。余談であるが、健常者が罹患する鬱病や統合失調症などは後天的な精神疾患であるが、器質的原因については自閉症とも共通する部分もあるかと思われる。自閉症は、先天的原因(遺伝子変異や脳発生プロセスのエラー)の観点では急激に増える障害ではないが、実際、自閉症認定される患者数は増加傾向にある。1975年の自閉症患者は5000人に一人だったのが、2014年には68人に一人にまで増加している。この背景として社会環境の変化が挙げられ、具体例として①診断基準の変化(自閉症の疾患概念が拡大)、②自閉症が社会に認知され受診者増加に寄与、③対人関係が重視される第3次産業の割合が上昇、④発達障害に対する社会支援の拡充(2004年の発達障害支援法の制定)などが考えられる。
    著者によれば、胎児期の神経発生プロセスは複雑であり、健常者だからといって全くエラーがないわけではない。問題は、エラーの程度と本人周囲の受け取り方による。それを個性と呼ぶか障害と呼ぶかは、本人(や周囲の人)が苦痛を感じるか否かで決まる。第一に本人が、症状に対して苦痛ではなくむしろ満足を感じるならば"個性"と言えよう。
    著者の専門である脳の発達メカニズム(と遺伝子の話)には多くの紙面が割かれている。哺乳類の脳が他の脊椎動物と比較して大型化する理由として、インサイドアウト型のニューロジェネシスであることを挙げており、同時に神経発達の複雑化も伺い知れる。一般に医学的な障害の分類方法は、顕微鏡等の観察により得られる客観的な原因、つまり、健常者との身体的(細胞レベル)な違いが明白な"器質的な障害"と、器質的には健常者と大差ない"機能的な障害"に分けられる。ただし、この分け方はその時代の解析能力に依存する。先端分析技術であるfMRIやPETなどにより、従来は機能的な障害とされた精神疾患に対して脳における器質的な障害として捉えられるデータが蓄積しつつある。例えば、統合失調症患者では、ニューロンの電気信号の漏電を防いで通信速度を飛躍的に高めるミエリン鞘と呼ばれる、絶縁体(電線を覆うゴム膜のような)構造が減っていることが指摘される。ミエリン鞘が減るとは、パソコンの基盤に水がかかったような状態で計算させるようなもので、思考スピードが遅くなり、時系列の整理や思考の統合もままらない。もちろんドーパミンなど神経伝達物質の過剰分泌などミエリン鞘の減少のみを原因とするわけではないが、器質的に調べられるとそれを正常化させる薬の開発につなげられる。
    脳科学者である著者は、自閉症の解決策として最終的には器質的な原因、つまり、脳の発生プロセスのエラーを引き起こす遺伝子の特定とその機能の解明がひとまずの目標となる。本書でも、パックス6と呼ばれる神経発生制御遺伝子と自閉症の関係性について言及されている。最近の研究では、ゲノム情報は同じであっても、実際に保有する遺伝子が適切に働くかどうかによって現れる状態が変化する…というエピジェネティクスの考え方に注目が集まっている。つまり、何か特別な身体的特徴やスキルを手に入れるためには遺伝子自体の変異は必ずしも必要とせず、もともと持っている遺伝子を単に長く働かせたり、全く働かせないようにすれば環境適応できる個体が生じうるということだ。キリンの首は長いが、遺伝子自体が変化したのか、遺伝子は変化せずに働かせる方法が変化しただけなのか。いずれにせよ環境変化はストレスの負荷が大きく、そうしたストレスが遺伝子のオンオフに関与したのでは…と想像する。このオンオフ切り替えのほうが世代交代を必要とする遺伝子変異よりも環境適応の即時性は高い。遺伝子のスイッチのオンオフはDNAのメチル化やヒストン化学修飾によって引き起こされる。これを人工的に行うことでキリンの首を成長させず短いままにする遺伝子があれば、キリンの進化において遺伝子自体の変化は必要なかった(実際はどうかわからないが)…と言えるのではなかろうか。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2020.08.22

  • コナン.O.

    コナン.O.

    大隅典子氏は、東京医科歯科大学大学院歯学研究科修了(1989年)、東北大学大学院医学系研究科教授、東北大学副学長を務める神経科学者(神経発生学・発生発達神経科学)。
    本書は、自閉症(正式には「自閉症スペクトラム障害」)について、脳科学の立場から、自閉症とは何か、どのような原因で生じるのか、今どのような研究が進んでいるのかを、一般読者にもわかりやすく解説したものである。
    私は、古くはダスティン・ホフマンとトム・クルーズが共演した『レインマン』を見、その後、神経学者オリバー・サックスの『妻を帽子とまちがえた男』等の著作、サヴァン症候群といわれるダニエル・タメットの自著『ぼくには数字が風景に見える』、1998年生まれで、アインシュタインよりIQが高く、早くもノーベル賞のホープと言われる、自閉症のジェイコブ・バーネットの成長を母クリスティンが綴った『ぼくは数式で宇宙の美しさを伝えたい』などを読む機会もあったのだが、今般、医学・生理学的見地から「自閉症」について詳しく知りたいと思い、本書を手に取った。
    読了してまず感じたのは、まだまだ分からないことばかりの領域なのだということであった。確かに、画像診断や動物実験により、自閉症患者の脳と健常者の脳では、各部位のサイズ、ニューロンやシナプスの形状などに、微小ながらも明らかな違いがある可能性が見えてきており、その原因についても、一部には遺伝的なものがあることも分かってきたというが、専門外の人間から見ると、解明途上の難しい分野という印象が強かった。
    一方で、米国のデータによれば、1975年には5,000人に一人の割合だった患者が、2001年には250人に一人、2014年には68人に一人と、40年間で患者数が70倍以上に増加しているといい、その背景には、診断基準・診断方法の変化(自閉症の疾患概念の拡大)や、疾患が広く認知されるようになったことだけではなく、生まれるときの母体環境(女性のスリム願望、低体重出生児の増加、周産期の母体感染など)や、父親の加齢があるという分析は、大いに気になるところであった。
    本書を読むまでもなく、自閉症はあくまで個性の一部である。とすれば、自閉症患者の出生割合が高まることを懸念するのも妙な話ではあるのだが、いずれにしても、社会は自閉症患者の個性を、自然に受け入れられなくてはならない。そのためには、本書にあるような情報を、少しでも多くの人びとが共有していくことが大事なのではないかと思う。
    (2020年5月了)
    続きを読む

    投稿日:2020.05.23

  • ayagon506

    ayagon506

    専門用語が多いため難しく感じたが、DNAの複製から生命の発生、脳の発生に至るまでとても複雑なプロセスを経て私たちができていることを理解することができた。
    その中での沢山のポイントでミスは起きるのだ。起きない方がおかしい。一つのミスが、人の形成に影響を与えている。
    発達障害はそうした違い=個性のひとつであって、けして誰かのせいでそうなっているというものではないのだ。

    つまるところタンパク質のやりとりの不具合な部分もあるため、薬で症状軽減の可能性もあることを初めて理解できた。今後研究が進み、症状を緩和する薬が増えてきたらいいなと思います。
    また、こういった知識が広まり、誤った偏見がなくなり、多様な人が生きやすい世の中になればいいなと思いました、
    続きを読む

    投稿日:2019.01.30

  • azu1227

    azu1227

    このレビューはネタバレを含みます

    なんとなく、よくわからない自閉症を、

    「器質的な原因」で

    「機能的な疾患」が出ていることを

    わかりやすく、説明した一冊。

    遺伝的要因、遺伝子の劣化による原因、発生時の原因など、各ステージに合わせた原因追及をしている。

    正しい理解をすることができた。

    レビューの続きを読む

    投稿日:2018.11.14

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。