【感想】ハーバード流マネジメント講座 ひるまないリーダー

ジョセフ・エル・バダラッコ, 山内あゆ子 / 翔泳社
(3件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • Mkengar

    Mkengar

    本書はリーダーシップの分類に入る本ですが、書店でお目にかかる他のリーダーシップ本とは毛色がだいぶ違う印象を受けるかもしれません。本の中であるべきリーダー像や求められる資質を明確に示すと言うよりは、「リーダーたる者次の5つの質問に対する答えを持っているべきである」、というアプローチをされています。質問の答えは各人各様だが、この5つに対する答えはもっていないとダメだということです。そのため読者の中にはモヤモヤ感がたまる人もいるかもしれませんが、私自身は読み進めていくにつれて著者のアプローチの方が正しいのではないか、つまりリーダーとはいっても万能な人間はおらず、苦闘を通じて人間的に成長していく、そのためにはあらゆることにコミットし苦闘することこそリーダーシップだということです。

     原題のGood Struggle、訳せば「良き苦闘」ということですが、苦闘を良くも悪くも出来るのはリーダー次第である、さらに目的さえ達成されればよいのではなく、どういうプロセスを辿ったか(つまり良き苦闘を経て目標に達したか)も自分の人生には大事だ、ということで、個人的には極めて日本人経営者の感覚に合うリーダーシップではないかと感じました。日本企業の中には手段を問わず怪しい手法で目的(売上成長)を達成すればよい、という風潮のある企業が見られますが、目的と手段の両方に着目している点は共感が持てます。繰り返しになりますが、明快なリーダー像が書かれていないので、とっつきにくい所もありますが、深みと説得力は十分ありますのでお勧めです。
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    投稿日:2023.04.27

  • 宮本 佳久

    宮本 佳久

    リーダーたらんとする人々が真剣に責任を取るのは、苦労するにもかかわらずではなく、苦労が伴うからこそであるということだ。 
    (引用)ハーバード流 マネジメント講座 ひるまないリーダー、著者:ジョセフ・L・バダラッコ、訳者:山内あゆ子、発行人:佐々木幹夫、発行所:株式会社翔泳社、2014年、162

    先行きが不透明な時代における新たなリーダー像が模索されている。特に現在、新型コロナ感染拡大による影響を受け、ビジネスモデルの方向転換を余儀なくされているケースも多々ある。例えば、旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)は、オンライツアーにも注力し、家庭で旅行気分が味わえることなどを提案する。また、日本航空(JAL/JL)は、新型コロナウイルス感染症の影響で旅客需要が落ち込む中、客室乗務員約20人を「ふるさとアンバサダー」として公募し、地方の拠点に配置転換して、新たに地域の魅力を発信する事業を展開する。私は、このようなビジネスモデルの大転換期を迎えている今、読み返したい本があった。それは、ハーバード・ビジネススクールのジョセフ・L・バダラッコ氏によって著された「ひるまないリーダー(翔泳社)」だ。

    近年、リーダーシップに関する書籍といえば、希望、夢、楽観的などのキーワードが散りばめられたものが多いように思う。しかし、本書は、リーダーシップの苦労や努力などについて論じれている。そこには、地に足がついた本来のリーダー像の姿が示されている。そして、本書に紹介されている先行きが不透明な時代にも通用する5つの質問(バダラッコ氏は、「時代を超える質問」としている)に回答していくことで、先が見通せない時代においても、リーダーシップを発揮することが可能となる。

    この5つの質問の最初は、「自分は現状を取り巻く環境を十分に把握しているか(同書、15)」である。この最初の質問を見て、私はOODA(ウーダ)ループと似通っていると感じた。OODAループとは、アメリカの軍事戦略家のジョン・ボイド氏が発明したもので、先の読めない時代の意思決定手法である。よく、PDCAサイクルと比較されるが、OODAループは、Observe(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字をとったものだ。このように、バダラッコ氏が示す5つの質問の最初は、Observe的なものとなっている。しかし、OODAループループは意思決定手法であるのに対して、バダラッコ氏による5つの質問は、リーダーに投げかけた質問であることから、2つめの質問から異なってくる。詳細は本書に譲るが、どのような時代においても、リーダーは、この5つの質問を答えることにより、先の見通せない時代にも、”ひるまずに”リーダーシップを発揮することができる。

    本書の中に、「責任あるリーダーにできるのは、できる限りの分析をおこない、ある方向に進むと決め、次のステップを慎重に計画し、やったことや実験したことから学ぶ努力し、その途中でチャンスをつかみ、新しく現れる現実に合わせて組織の取り組みをたびたび調整し直せるよう準備を怠らないことだけだ(本書、99)」というフレーズが登場する。

    私は、このフレーズがとても気に入った。いや、現代のリーダーシップは、この一言であらわれていると言ってもいいのではないかと思う。この言葉に出会い、私は、富士フィルムの構造転換を思い出した。富士フィルムは、写真フィルムの需要が減少する中、化粧品や医療品、再生医療等にコア事業を転換した。これは、写真フィルムの技術が化粧品と親和性が非常に高いことによって実現したものだ。まさに、本文中、「やったことや実験したことから学ぶ努力をし」ということと符合する。いままさに、どの業種、どの事業者も富士フィルムのような大胆な構造転換が求められているのではないか。その富士フィルムの古森重隆氏のようなリーダーシップを発揮するには、バダラッコ氏が提唱する5つの質問を自身に問うて実践していくしかない。

    5つの最後の質問は、「自分はなぜこの人生を選んだか」で締めくくられている。時として、リーダーは、「なぜ自分だけがこんなに苦労しなければならないのか」と考えがちである。事実、その仕事から逃げることもできるし、愚痴を言うこともできる。しかし、この質問に出会ったとき、私は、ヌルシアのベネディクトゥス:聖ベネディクトの戒律の第64章の一節を思い出す。

    「選ばれし者は心に留めなければならない。みずからが背負う責任の重さと、その権限を委譲する部下のことを。」

    確かに、リーダーは、夢を語り、楽観的な態度で部下を安心させることが必要である。しかし、リーダーは、なぜ、この苦しい人生を選んでいるのかといった自覚が何より求められる。そして、苦難のときには構造転換をし、活路を見出すことができる。リーダーは、綺麗ごとでは済まされないのだ。

    「苦労が伴うからこそリーダーである。」

    バダラッコ氏に、そう、教えていただいた。
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    投稿日:2020.10.09

  • ひじり

    ひじり

    なかなか勉強になりました。
    某学校でほぼ無料で売られていた本の一つで、
    何気なく手にとった本。

    基本的に自己啓発本やハウトゥー本は読まないので
    (ま、この本棚にはそれっぽいのがありますが)、
    この手のタイトルの本は自分からは手を出さない。
    よっぽど人に勧められてか、
    何かついで(今回のような)があった時のみ。
    でも大抵がっかりするのだけど、
    これは例外でした。
    著者を存じあげないので失礼なことを言っていたらごめんなさいなんですが。

    具体的な例をあげながら
    時代とともに変わるリーダー像をロジカルに分析している点は
    この本を(そして最終的な結論を)信頼できるものにしていると思う。

    褒めていながら☆3なのは、
    まあやはりこの手の本には結局のところは惹かれないというところかな。
    最後のステートメントも、
    目からウロコが落ちる、
    という感じでもなかったのもある。
    いやでもあまりに全てを解決する結論なんて怪しすぎるので、
    却ってそれは信頼できる証でもあるんだけど。

    今リーダーシップを取ることを求められている自分には
    とても参考になったのは確か。
    もう少し読み込みたい(時間があれば)。
    そうしたらもう少し評価があがるかも。
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    投稿日:2016.01.06

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