【感想】日本の色を知る

吉岡幸雄 / 角川ソフィア文庫
(2件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • hiromigenki

    hiromigenki

    ・日本の豊かな自然とそこに暮らす人々の繋がりを、古今和歌集や万葉集等を交えながら色という視点から描いている。
    ・日本古来から培われた色に対する感性を追体験でき、脳内にある塗り絵に色を満たしていくような感覚を覚えた。続きを読む

    投稿日:2024.05.09

  • tetujin

    tetujin

    ・吉岡幸雄「日本の色を知る」(角川文庫)は 染織家の書いた書である。昔風に言へば染め物屋の著作である。当然カラーである。文庫本ながらきれいな本である。見てゐるだけで楽しい。色だけでなく花や風 景の写真も、その色に関連して載る。さういふのも美しい。例へば襲の色目、これは古語辞典や国語図録等によく出てゐる。しかし、それゆゑにどれが 本当の色なのか分からないことがよくある。似てゐると言へるのならまだ良い。へたをするとほとんど別の色である。それが同じ襲として出てくる。素人はどちらを信じたら良いのか分からなくなる。いや、どちらも信じられなくなる。さういふ時、標準になる色の図鑑等があればと思ふ。ところが、それさへも信じられない事態もあるから困る。本当の色はどれなのだと思ふことしきり、結局分からないでまますませてきた。ならば本書はどうなのだと思ふ。どうなのであらう。 最初の写真は梅の襲(12頁)である。この色はそこらへんの辞書や図録とは違ふ。紅梅の濃淡を下から上に並べた写真である。明らかにその上を行くと私は思ふ。次が桃の襲(16頁)、梅よりは明るいく澄んだ感じ、ピンクと言へさうな色を含む。次が柳の襲(20頁)、白つぽいのから新緑を超えて……いづれも和紙や布を染めたものを並べてあるのだらう。写真が大きくてきれいなこともあつて、これならば信用できさうだと思ふ。辞書等のは小さすぎる。色も悪すぎる。 信用できない。これは著者が著者である。京の染め物屋5代目である。当然、写真の色校正も著者自身がしてゐるはずである。さうでなければ広告に偽りありで ある。だとすればこの色は信用できる。さう思つて私は色を見ながら読んでゐた。杜若の襲(36頁)などは見事なものである。これでこそカキツバタだと思 ふ。女郎花の襲(60頁)や柿渋で染めた茶の色(64頁)などといふのもある。正に見てゐるだけで楽しい。
    ・ここでふと思ふ。これらの色をこのPC上で再現できるのか。最近はデジカメ写真で屏風や襖再現などといふことをやつてゐる。かなり精緻な再現ができるらしい。微妙な色の違ひもきちんと再現してしまふらしい。PC上での色の再現に関はる技術的な進歩が大きいのであらう。ならば梅の襲の紅梅の微妙なグラデーション(もどき)も再現できるのであらうか。それにはこれらが数値化できるといふこと必要なのであらうか。例へばFF0000のやうにカラーコードで表せるのか、である。たぶんかういふ処理方法だと、この十六進数から漏れる色は再現できないであらうから、あの襲の色目をPC上に再現するのは難しいのではないかと思ふ。他の方法はあるのか。あるかもしれない。しかし、個々のPCのディスプレイはまた個々で違ふ。十六進数を全く同じ色に再現できるのかどうか。 さういふことを考へてゐると、結局、PC上で色を再現するのはかなり難しい、ほとんど不可能ではないかと思つてしまふ。辞書や図録の襲の色目は見るからに 悪さうで、信用できない。そしてPCもあやしいとなると、信用できるのは、やはりかういふ著者がきちんと色校正をしてゐるであらう書しかない、たぶん。本当に「日本の色を知る」ことをしたければ、最後は直接その染色したものに当たつてみるしかない。その意味で、本書はそれに近いのかもしれないと思ふ。できることな ら、実際に、例へば紅梅の襲や桃の襲の微妙な差異を知りたいと思ふ。男でも女でも良い。男なら狩衣か直衣か。そんなのをこの吉岡氏の染めた布で作つて見せてもらひたいものである。それが日本の色を知る第一歩であらう。そこまで行く書物とか展示があつても良いと思ふのだが……。
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    投稿日:2016.05.01

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