【感想】イノベーションのジレンマ 増補改訂版

クレイトン・エム・クリステンセン, 伊豆原弓, 玉田俊平太 / 翔泳社
(339件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
149
116
31
7
2

ブクログレビュー

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  • SHO

    SHO

    需要線を供給が上回った時に破壊的イノベーションが作用する
    技術が進歩しすぎて需要を追い越すらしい。
    イノベーションには持続的と破壊的がある
    大企業ほど目先のニーズの見える持続的イノベーションに注力し厳しい競争を強いられる中で品質を上げようと努力する。
    しかし、需要を技術力が上回った時に信仰勢力の破壊的イノベーションが発生する。
    破壊的イノベーションをおこすにはそれにあった組織が必要。
    資源、プロセス、価値基準が組織の能力をきめる。
    そのためには別体の会社にする必要がある、
    破壊的イノベーションは市場予測は誰にもできないためトライアンドエラーのみ

    【まとめ】
    1 持続的技術と破壊的技術
    優良経営企業の場合、すぐれた経営こそがリーダーの座を失うことにつながる。これらの企業は、顧客の意見に耳を傾け、顧客が求める製品を増産し、改良するために新技術に積極的に投資したからこそ、市場の動向を注意深く調査し、システマティックに最も収益率の高そうなイノベーションに投資配分したからこそ、リーダーの地位を失ったのだ。

    ●持続的技術
    製品の性能を高める新技術。主要市場のメインの顧客が今まで評価してきた性能指標にしたがって、既存製品の性能を向上させる。
    ●破壊的技術
    従来の顧客が求めていたもの、今までの市場にあったものとは全く違う性能をもった新技術。

    大企業は持続的技術には投資をするが、破壊的技術には積極的に投資をしない。その理由は3つある。
    ①破壊的製品のほうがシンプルかつ低価格で、利益率も低いから
    ②破壊的技術が最初に商品化されるのは、一般に、新しい市場や小規模な市場であり、投資額に見合った旨みがないから
    ③破壊的技術は、初期段階ではニーズを満たせるほど性能が良くないから 

    持続的技術…ガラケーの性能向上
    破壊的技術…スマホの登場
    と読み替えるとしっくりくるかもしれない。

    最初は小さな芽だった破壊的技術の企業が、しだいに大きな企業に取って代わるほどの大企業に成長し、市場を席巻する。優秀な企業ほど、この破壊的イノベーションを取り入れることができず、やがて業界から追い出されることになる。これが「イノベーションのジレンマ」だ。


    2 破壊的技術の5つの原則
    大企業は、以下の5つの原則に逆らおうとするときに失敗する。これらの原則と対峙するのではなく、調和し順応することが大切。

    ①企業は顧客と投資家に資源を依存している
    経営者は会社の資源の流れを自分が管理していると考えているかもしれないが、実際は顧客と投資家を満足させるパターンを取っている。すぐれた企業ほどこの傾向が強く、顧客が望まないアイデアを排除するシステムが整っている。そのため、顧客が望まず利益率の低い破壊的技術に、十分な投資がされないままチャンスを逃してしまう。

    ②小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
    企業が成長して大きくなると、将来大規模になるはずの新しい小規模な市場に参入することがしだいに離しくなってくる。成功している企業は、株価を維持し、社員の職務範囲が広がるようチャンスを設けるため、成長しつづける必要がある。しかし、4000万ドルを売り上げる企業が20%の成長率を達成するには、翌年の売上高を800万ドル増やすだけでよいが、40億ドル企業では8億ドルの増収が必要である。これほどの規模を持つ新市場はない。そのため、組織が大規模になり、成功するにしたがい、新しい市場を会社の原動力とすることに無理が生じてくる。

    ③存在しない市場は分析できない
    優秀な企業は、投資の段階で市場規模や収益率を数量化してから参入する。ところが、破壊的技術が起きる市場は事前に察知できない。

    ④組織の能力は無能力の決定要因になる
    破壊的技術を生み出すためには組織的能力が必要になる。組織の能力は二つの要素によって決まる。
    一つはプロセスである。これは、組織の人員が習得した労働力、エネルギー、技術、資源といった「インプット」を価値の向上という「アウトプット」に変える方法である。
    もう一つは組織の価値基準である。これは、組織の経営者や従業員が優先事項を決定するときによりどころとする基準である。
    人間はきわめて柔軟性が高く、訓練しだいでさまざまな物事をうまくやれるが、プロセスや価値基準に柔軟性はない。大企業においては組織の能力を生みだすはずのプロセスや価値基準も、破壊的技術に対応するための業務に当てはめようとすると、効率が悪化する。

    ⑤技術の供給が需要を超えてしまう。
    いわば「顧客が必要としていない技術を無駄に追加してしまう」現象。
    競合する複数の製品の性能が市場の需要を超えると、顧客は、性能の差によって製品を選択しなくなる。製品選択の基準は、性能から信頼性へ、さらに利便性から価格へと進化することが多い。
    企業は、競争力の高い製品を開発し優位に立とうとするために、急速に上位市場へと移行する。多くの場合、高性能、高利益率の市場をめざして競争するうちに、当初の顧客の需要を満たしすぎたことに気づかない。そのため、低価格の分野に空白が生じ、破壊的技術を採用した競争相手が入り込む余地ができる。


    3 破壊的技術に直面したときは
    ①既存顧客から離れ、破壊的技術の開発を、そのような技術を必要とする顧客がいる組織にまかせ、プロジェクトに資金が流れるようにする。

    ②小さな市場に対応できるよう、組織を独立させたり買収したりしながら、小規模組織を作る。

    ③トライ・アンド・エラーを繰り返す。破壊的技術を商品化するための初期の努力は、学習の機会と考え、データを収集しながらアジャイルしていく。

    ④早い段階から行動し、現在の技術の特性に合った市場を見つける。既存の主流市場とは別の、魅力の薄い新しい市場が、破壊的技術をつくり出す要因になる。
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    投稿日:2023.12.13

  • かい

    かい

    このレビューはネタバレを含みます

    企業が持続的技術にて成長していくには既存顧客のニーズに応える必要がある。
    しかし、破壊的技術に対応するためには、既存顧客のニーズに応えるのではなく破壊的技術に対してニーズを有する顧客に対してアプローチする必要がある。
    そのため、既存企業が破壊的技術に対応する方法として、新しい組織を作り破壊的技術の小さな顧客ニーズに応えていく方法か、既存顧客のニーズに真っ向から立ち向かう方法が考えられるが、後者の方法は成功例あるもののほとんど成功しないと考えられる。
    また,一つの組織の中に持続的技術と破壊的技術といった二つの収益モデルは共存することができないため、後者を取る場合であっても義賊的技術は放棄せざるを得ない。


    ナイフエッジ事業
     競争の基盤が単純で一次元的であり,誤りの余地がほとんどない事業 例(半導体製造用アイライナー業界 シリコンウェハーに最も細い線を作成できる製品のみが残ったため)

    持続的技術でリーダーシップをとることが重要となるのはナイフエッジ事業の場合のみである。
    市場が複雑で複数の競争基盤がある場合には,持続的技術におけるリーダーシップの重要性は低い。

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    投稿日:2023.11.03

  • 明烏

    明烏

    このレビューはネタバレを含みます

    クリステンセン教授の代表作。経営書としては古典の領域なんだけど、全然古臭さを感じさせない面白さがやはりあった。クリステンセン教授はホント面白い本を書いてくれるなぁ。

    「イノベーションのジレンマ」とはつまり(真に顧客が求める)評価軸の誤解と呼んで良いだろう。今売れている製品がより高品質になっていくことは、決して顧客や市場が求め続ける姿じゃない。技術とは進歩していくものなので、いつかローエンド商品が真に求められる範囲の規格を満たしてしまう。
    まぁ難しいのは「市場で求められる製品規格」を決めるのは流動する市場のあり方からしか見えず、関連企業(本の中では「バリュー・ネットワーク」と呼んでいたが)が一意に決められないという部分。市場は出たこと勝負なのに、決められると誤解することが破壊的イノベーションを許してしまうというわけだな。

    この理論を消費者目線からみた時がつまり『ジョブ理論』なのだなぁ、と勝手に理解しました。最初からこっちを読んでおけばもちっと理解が深まったかも?
    古典でありながら強い説得力をもった一冊。オススメです。

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    投稿日:2023.10.22

  • kuRo06

    kuRo06

    優良企業は、その優良な経営によって失敗する。
    冒頭から謎めいた結論をつきつけられ、どうしてだろう、と自然に疑問を持って読み進めることができた。

    本書では、イノベーションを持続的イノベーションと破壊的イノベーションの2つにわけ、それぞれの性質の違いにより、上記の結論が導かれることになる。

    持続的イノベーションとは、抜本的、漸進的なものを問わず、今ある製品の性能を段々と高めるようなものをいい、優良企業はこれへの対応に長けているため、それによって利益を上げている。
    ところが、破壊的イノベーションは、既存の市場からすると、性能も収益率も低い、新しい下位市場で起きることが多い。これは、優良企業の収益も満たせず、また、その主要な顧客からのニーズもないため、優良企業は、顧客のニーズにきちんと応えるために、破壊的イノベーションへの対応が遅れる。
    しかし、破壊的イノベーションによる技術が進歩するにつれて、それは下位市場からやがて既存の市場を塗り替えていくものとなる。
    こうして、優良企業は、優良な経営ゆえに失敗する。

    本書では、事例も含めて、この内容が詳細に検討されており、破壊的イノベーションに対応するのに、主流組織と別の組織により対応するという方法についても検討されている。
    しかし、実際応用するとなると難しいと思う。何より破壊的イノベーションは、今までにない市場を生み出すし、それが破壊的イノベーションなのか、事前にはもちろん知りえない。
    「見たものがすべて」と思いがちの人間からすると判断は難しいだろう。
    また、破壊的イノベーションが起きてから、本書をひいて、後知恵で語るのは簡単なことだ。

    なんにしても、優良企業がその優良な経営ゆえに失敗するというのは、イノベーションへの考えを変えてくれた。
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    投稿日:2023.08.31

  • AS

    AS

    考え方は破壊的イノベーションと持続的イノベーションに分類し、ケース紹介しながら優良企業で破壊的イノベーションが生まれないかを分析しているところがわかりやすい。内容はマーケティング本を擦ったような感じなので目新しい知識はなかった。海外本の訳書は回りくどい言い回しが多く、読みにくい。もらった続きを読む

    投稿日:2023.07.06

  • のんたタイ

    のんたタイ

    イノベーションを「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」に分類し、ハードディスクや掘削機、製鉄を例示して、持続的イノベーションは顧客の声を傾聴し顧客に受け入れられる技術を積み重ねることにより大きな収益を得るのに対して、破壊的イノベーションは技術のレベル(顧客の求める性能)や収益は小さなものかもしれないが、新たな市場で元の大きな市場を凌駕していく可能性を秘めていることから、持続的イノベーションから抜け出せない既存企業の対応をイノベーションの「ジレンマ」と呼んでいる。
    最後に(第十章)でその破壊的イノベーションをマネジメントする方法として1997年時点で電気自動車を例示している慧眼に感服した(地球環境の逼迫という大きな潮流はあるが)。今のテスラや中国のBYD等の破壊的イノベーションを予見していたのか!と思う。
    続きを読む

    投稿日:2023.07.05

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