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菅野覚明 / 講談社学術文庫 (1件のレビュー)
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キじばと。。
吉本隆明という思想家を、「個」のありようについて問い続けた「哲学者」として読み解いています。とくに『固有時との対話』についての突っ込んだ考察を展開しており、興味深く読みました。 人間は、単独では自然…から自立することができず、みずからを類的存在とすることによって、つまり社会の共同性というもう一つの全体性の部分へと吸収されることによってしか、「個」としての自立をなしえないというのが、吉本の思想の基礎をなしています。しかし、そうした「個」は明晰判明な自己意識などではなく「違和としての自己」であると見定め、そこから思索を開始しようとしたところに、吉本の思想の特異性があると著者は考えます。そして、このような吉本の思想の原点を、敗戦によって経験することになった「断層」に求めるとともに、吉本の転向論が、伝統的な生活意識と近代的な市民社会的意識との間の「断層」を問題にしようとしていたことを明らかにしています。 さらに『固有時との対話』を手がかりに、吉本が自己の内部世界と現実的な秩序との「違和」を「違和」として認めつつ、そのはざまで(ハイデガー的な言い回しを借りるならば)詩作=思索をおこなっていることを確かめようとしています。 『転向論』『固有時との対話』『共同幻想論』などの仕事を一本の太い線でつなごうという試みがなされており、おもしろく読みました。続きを読む
投稿日:2016.01.29
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