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ドストエフスキー, 望月哲男 / 光文社古典新訳文庫 (9件のレビュー)
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seiyan36
著者、ドストエフスキー、どのような方かというと、ウィキペディアには、次のように書かれています。 ---引用開始 フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー、1821年11月11日〔ユリウス暦10…月30日〕 - 1881年2月9日〔ユリウス暦1月28日〕)は、ロシア帝国の小説家・思想家である。レフ・トルストイ、イワン・ツルゲーネフと並び、19世紀後半のロシア小説を代表する文豪である。 ---引用終了 で、本作の内容は、次のとおり。 ---引用開始 恐怖と苦痛、絶望と狂気、そしてユーモア。囚人たちの驚くべき行動と心理、そしてその人間模様を圧倒的な筆力で描いたドストエフスキー文学の特異な傑作が、明晰な新訳で今、鮮烈に蘇る。本書はドストエフスキー自らの体験をもとにした“獄中記”であり、『カラマーゾフの兄弟』『罪と罰』など後期作品の原点でもある。 ---引用終了 そして、本作の書き出しは、次のとおり。 ---引用開始 シベリアの遠い果て、草原か山か人も通わぬ森林ばかりのところに、ぽつりぽつりと小さな町がある。人口は千かせいぜい二千、木造のぱっとしない家が立ち並び、教会は町の中に一つと墓地に一つの二つだけ。町というよりはむしろ、モスクワ郊外のちょっと気のきいた村といった風情である。 ---引用終了 ウィキペディアによると、著者は、空想社会主義サークルのサークル員になった為、1849年に逮捕されて、死刑判決を受けたが、特赦により、シベリア流刑に減刑されたとのこと。で、1854年までオムスクで服役したそうだ。 つまり、28歳頃に逮捕されて、その後、33歳位まで、シベリア流刑になっていたようだ。続きを読む
投稿日:2024.03.05
hiro-9
ドストエフスキーによる監獄の記録ということになる。自身の体験を元にしたフィクションであり、モデルと思われる人もていねいに解説があってわかりやすい。大きなストーリーが流れているというわけでもなく、期待感…もないのだが人物の観察が妙におもしろく読める。監獄とはいえ、かなり開放的になっているのは今とは違うようだが、ロシアとはこんなものなのかもしれないと思わせる。続きを読む
投稿日:2022.09.04
泣いた赤鬼
■死の家で生きる。99%の苦痛と1%の楽しみ。■ 19世紀ロシアの流刑地シベリアでの監獄生活の実態が生々しく描かれる。21世紀の平和な日本に住む僕らには想像もつかない世界が繰り広げられる。 登場人物…がやたらと多いが、本書を通して継続したストーリーや明確な起承転結のようなものがあるわけではなく、章ごとにある程度独立した小話がオムニバス的に進行するため、あまり問題にはならない。 タイトルから廃人のような暗い無気力な人間ばかり登場するのかと勝手に想像していたが、そんなに悲壮ではない。囚人・看守含め、とにかく癖が強すぎる個性的なキャラが次々に登場する。まるで動物園だ。そんな奴らが一つ屋根の下(塀の中)で繰り広げるドタバタ劇の中に人間らしい喜怒哀楽がぎゅっと詰まっている。 また、酒、賄賂、たばこ、賭博に女、はては脱獄まで、様々なエピソードからどんな状況下におかれても、精神的な自由を求める人間としての本能が浮き彫りになっていると感じる。 個人的に印象に残ったのは入浴シーンの描写だろうか。その映像がお風呂大好き日本人としては耐えがたく、鼻をつまみたくなる。 この浴場にしずかちゃんが入ったら気絶するに違いない。続きを読む
投稿日:2021.05.28
ravenclaw55
1861年 40歳 第16作。 死の家の記録は、ペトラシェフスキー事件に連座して、反逆罪に問われたドストエフスキーが、1850年1月から54年1月までの4年間を囚人として、頭を半分剃られ、足枷をつ…けられ、強盗殺人犯や詐欺師や窃盗、農民や貴族、イスラムの異民族から異端のキリスト教徒まで、雑多な人々とともにシベリアの流刑地で過ごしたときの様子を描いた作品。 ときにはチャバネゴキブリが大量に入ったスープが出てくるような境遇の中で、社会の最低辺の人間と文字通り寝食をともにしながら行った人間観察の記録である。 ここまでのドストエフスキーの作品では、デビュー作「貧しき人々」が代表作だが、あの「貧しき人々」は、正直言って内容よりも、巨匠の第一作ということと、あの有名なデビューのエピソードで、必要以上に持ち上げられてきたきらいがあったのではないかと思う。 この「死の家の記録」は、それ以前とそれ以降の作品を画し、ドストエフスキーの名を歴史にとどめる素晴らしい作品。 それまでの、どことなく軽躁なざわめきを背景に感じられる作品群に較べ、重厚で落ち着いていて、陰鬱な中身のはずなのに、どこまでも汲みつくせないという感じを抱かせる。 そういうのを芸術作品というのだと思う。 この流刑地の生活でかれが発見したのは、人間がどこまで卑劣になれるか、どこまで得体のしれない怪物になるのか、それが可能性としてはなく生身の人間として現実に存在しているということと、にもかかわらずそれぞれの人間が持つ自由の意味と必然、そしてひとりひとりの人間の尊厳である。 まなざしの中心はもちろん後者にむけられている。 でなければ人間の総体を捉えきった報告は書けなかったただろう。 そういうとなんだか真面目くさってきこえるが、この作品はそういう堅苦しいものではない。 後期の作品から、かれは観念的な作家と思われがちだが、流刑地の生活を描く筆致はかなりジャーナリスティックで、そういう辺境についてまったく知らない興味津々な読者を飽きさせない。 ドストエフスキーはルポルタージュ作家としても超一流であることを示す作品でもある。 人間にとってもっとも恐ろしい罰は、無意味な作業を続けさせることで、それをすると必ず狂ってしまうという有名な文章は、この作品から。 「もしも一人の人間をすっかり押し潰し、破滅させてやろうとするつもりで、どんな残忍な人殺しでも聞いただけで身震いして腰を抜かすような、最高に恐ろしい罰を科すとしたら、ただ単に一から十までまったく無益で無意味な作業をさせればいいのだ。……囚人に、たとえば一つの桶から別の桶に水を移し、その桶からまたもとの桶に移すとか、ひたすら砂を槌で叩くとか、一つの場所から別の場所に土の山を移して、また元に戻すといった作業をやらせてみれば、きっと囚人は何日かで世をはかなんで首を吊るか、それともそのような屈辱、恥、苦しみから逃れるためならいっそ死んでもいいと、自棄になって犯罪をし散らすことだろう。」(p50-51)続きを読む
投稿日:2020.06.26
クリスマスたろう
今のところドストエフスキーの中でいちばんのお気に入り。めっちゃくちゃにおもしろすぎる。なによりも面白かった気がする。人を観察することが小説家にはとても大切だと思う
投稿日:2019.09.27
moonpearl
一応架空の主人公を設定していますが、実際にはドストエフスキーの実体験を描いているルポタージュのような小説。ノンフィクション、ドキュメンタリーの好きな私には読みやすかった。描かれる囚人たちの描写も様々で…面白く読めた。 鞭打ち刑は想像以上に厳しい物のようで、それで死んでしまうこともあった刑罰のよう。小説内で主人公は「犯罪の差異に刑罰の結果の重みが平等に応対しているか」「同じ刑罰でも、受ける人によって非常に軽い結果となる場合と思い結果になる場合があるが、それは平等なのか」、囚人たちが真に欲しているのは「自由」であり「思い通りにふるまう自由」を求めていること、刑罰が囚人の更生にならないことなどについて論じさせている。そして、病人の収容される病棟で、病に苦しむ囚人の外されない足鎖、閉鎖される病室の空気の悪さなども描写される。一方で、収容所内のクリスマスなどの祝祭日、囚人たちが演じた劇の盛り上がり、馬の購入、集団入浴などの賑やかな様子の描写は非常に面白く興味深い。 「死の家の記録」はこれが初めて読んだので、他の翻訳版と比較することはできないのが、光文社古典新訳文庫の望月哲男訳版は非常に読みやすかったし、巻末の読書ガイドも非常に面白く参考になった。そのガイドの中で、監獄に収容されている状態を「生きながらの死(人間的尊厳の破壊)と定義し」「暴力や恫喝は後悔にも矯正にも結び付かず、そうした効果は理解や許しという生きた魂への働きかけから生じる」と示唆している(p.707)と述べているが、そのような罪に対する罰は、現代でも難しい。正直、私が罪を犯した人に求めているものも「罰としての罰」であるのが本当のところだと思わないでもない。 「自由」「贖罪」というテーマは、その後のドストエフスキーの「地下室の手記」「罪と罰」「カラマーゾフの兄弟」でも根底に据えられているとのこと、これらの作品も読んでみたい。続きを読む
投稿日:2018.05.08
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