【感想】愛と欲望のナチズム

田野大輔 / 講談社選書メチエ
(5件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
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ブクログレビュー

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  • bqdqp016

    bqdqp016

    歴史社会学者によるナチズムとエロチシズムとの関係についての研究書。当時の史料に基づき理論を展開しているが、根底に反ナチス的思考があり、すんなりと論理展開がなされていない。「当時の戦時体制下における判断」を現在の基準を適用して批判しているようでならない。当時の措置を「理解しがたい」と評価するのは、研究が浅い証拠であると思う。
    「無思慮で自分勝手な享楽主義も、不自然で弱々しい禁欲主義も、どちらも誤りである」p52
    「(メンタルヘルスの必要性について)わが民族の存亡がかかっている戦争の間は、成果と何の関係もないのに、そのような生やさしい方法を追求し、何人かの逸脱したならず者のために人員を費やすようなことは認められない」p57
    「ともかくも子供を産んだ母親は民族に対する義務を果たしたのであり、国家は彼女たちを手厚く保護すべきである」p89
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    投稿日:2018.11.04

  • しんあき

    しんあき

    「ナチズムが始まり、人々の性道徳は取り締まられた」と一般的には考えられそうだか、そうではなかったということを示した本。ナチズムにとって人口増大は国家の強化にとって重要であり、キリスト教的な性道徳を批判し、「生の肯定」つまり「性」を肯定するという文脈で、性の解放が進んでいったと筆者は述べる。ナチズムは、20世紀の性の解放の先駆けとなるものであった。ただし、性の解放といっても生殖と関わる異性間の男女の性は比較的自由化された一方、同性愛については細心の注意が払われていった(強制収容所で殺されるものもいた)のは、これまで様々な研究でも言われてきたとおりである。売買春についても、人種間の接触を禁じ、性病予防の目的もあり、公的に管理された施設が作られたが、結局、ナチズムによる人種間の性の交わりは管理しきれなかった。この本を読むと、いくら国が性を自由化したり管理していわゆる「純潔」を守ろうとしても、そううまくはいかなかったということである。とても面白かった。それにしても青少年の性の状況(笑)、戦争時代はすさまじかったのだなあと思った。続きを読む

    投稿日:2016.08.04

  • きあら

    きあら

    読み始めの不快感、ナチスものは不快なものが当然多いのですが、現在に結びつくものがあるのです。健康増進法、少子化対策、男女共同参画社会の政策などが思い浮かぶのです。これらについて、ある種の胡散臭さを感じていました。これらはプライベートへの介入ではないの?ナチスほど、原始的でも、野蛮でもないのだけど、読んでいくうちに共通することが多いと思いました。ああ、これからはナチスみたいになるのかしら。
    ところが後半のしっぺ返しが痛烈。愚民を侮るなかれ。ははは、ドイツの愚民パワーはすごい。政策と民衆のバカさ加減に笑ってしまいました。ティーンエイジャーを含め、ナチスをぶっ飛ばすほどの破壊力、バカ力。
    マルクス主義的な書き方になってしまったけど、これは「性」についての本です。そういうことまで、国が口を出すなのレベルです。
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    投稿日:2014.08.12

  • piroshi6363

    piroshi6363

    非常に興味深い本。ページの3分の1は参照文献であるだけあってドイツの州立図書館などで膨大な量の資料にあたったことが伺える。1933年から12年続く異常なナチスの社会体制を性を切り口に論じた着想性とそれを見事に完結させた粘り強さには感服する。続きを読む

    投稿日:2013.01.09

  • ujikenorio

    ujikenorio

    このレビューはネタバレを含みます

    田野大輔『愛と欲望のナチズム』講談社、読了。ナチズムは性愛の乱れに厳しく、大戦後の道徳の復興を掲げたというイメージが強いが、本書は一枚岩ではない多様な実態を明らかにする。確かにナチズムは出産奨励を掲げ、性生活に介入した、しかし、不倫や婚前交渉を肯定する一派も存在したのである。

    「性」の容認は、兵士供給に必要不可欠である。と同時に民衆のガス抜きとしても位置づけられる。みだれを批判しつつも、ヌード雑誌に寛容であった。性愛とは人間の根源的欲望の一つといってよい。それを動員することで非人間的な体制が成立した。

    もっとも、性愛に寛容といっても、風紀の乱れは国家が規定する。人口増加に直結しない同性愛の一層にみられるように、ナチズムの目的にそむかないかぎりでの「性」の容認である。本書は、このホンネと建前の言論を丹念読み解みといていく。イメージを一新する好著。

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    投稿日:2012.11.20

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