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アチェベ, 粟飯原文子 / 光文社古典新訳文庫 (37件のレビュー)
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ありママ
植民地支配される前のアフリカの伝統的な暮らしの素晴らしさを描き、欧州の文明到来により崩壊していく嘆かわしいお話かと思っていたら、もっと深くてたくさんの要素が詰まったお話でした。 アフリカの集落の日常は…物珍しく、慣習や考え方の違いは読んでいておもしろいですが、予想外に残酷で不可解だし、英雄オコンクゥアはいけすかない暴力男で正直モヤモヤしました。 キリスト教については否定も肯定もありませんが、人々を無駄に苦しめない点で、少なくとも呪術よりよっぽどいいし、植民地化されて安心して暮らせるようになってよかったのでは?と思いました。 登場人物の名前が難しすぎて、もはやおもしろい。そして、大量の注釈に尻込みしてさくさくと読めませんでしたが、物語自体は割と短めです。 物語のあとの解説はもっと難しく長くて大変でしたが、気づかなかった作品の細かな点を知れるのでお勧めです。続きを読む
投稿日:2024.03.21
本屋さんが大好き!
重い話でした。 伝統を守るとは? その中で地位を築くためには? その一方で、その伝統に潜む非科学的・非人道的な掟を守り続けるのはなぜか。 それらを打破するのが、侵略に依ってしまうのが辛い。 初めての…アフリカ文学。 田舎者の私には、舞台となった前世紀初頭のナイジェリアの話が、なんだか知らない世界の話ではなく、読んでいる間中、本当に息苦しかったです。 なんというか、父のようにはならないと決めた主人公が、その地で認められるよう努力してきたのに、一つの選択ミスが命取りになってしまう… 最後になぜ自死を選んだのか、初めはよくわからなかったのですが、戦おうとしたのは自分だけ、と気づき絶望したから…と思い至りました。 主人公の親友オビエリカは、聡明な参謀タイプ。伝統の矛盾に気づいているが、行動には起こさない。伝統に静かに従う… 100%支持はできないが、恐らく自分もそうしてしまう。 かと言って、主人公の生き方もちょっとやりすぎ感はある。集団を引っぱるためには必要な強さではあるけれど… 人名が難しく、何度も前のページに戻りながら読み進めました。 原題はエピグラフのイェイツの詩から。 物事がばらばらになる。本当に悲しい。 Things Fall Apart 最後の主人公の埋葬のくだりは、本当に悲しい。 アフリカ大陸が侵略された歴史、文明化することの暗い面、支配者側の非道をも見ました。 読めて良かった。辛かったけれども。 続きを読む
投稿日:2024.02.25
ワッツホワッツナッツサンダー
1900年頃以前は、イギリスの植民地ではなくて、イボ社会の生死感と宗教や風習があった。それが変わっていくなか、1930年にアチュベさんは生まれる。1960年に、ナイジェリアは独立する。この本は、それよ…り2年前の1958年にロンドンで出版される。であるから28歳である。1977年にコンラッドの『闇の奥』を批判する。この『闇の奥』は1902年、確かナイジェリアじゃなくコンゴだったと記憶している。アチュベさんは植民地支配の時代に、しっかりとした教育を受けた一方、そうなる前のアフリカの伝統みたいなものを主張しているようにも思う。そういったことを背景とした小説とのことで、少しずつ読んでいる。続きを読む
投稿日:2024.02.10
ヨシダケ
読んで良かったと思う。 アフリカについて世界史じゃない文学として初めて触れたと思うけど、なんともやるせない気持ちになった。 植民地前の文化が全て肯定出来るわけでもなく、まして支配者側の考えが受け入れら…れるわけもなく。 ただ後世の私はこれを読んだことがいつか何かの基準になると思った。続きを読む
投稿日:2024.01.02
k
このレビューはネタバレを含みます
近代アフリカ文学の原点と称されるアチェべの名作小説。 舞台はヨーロッパ人によるアフリカの植民地化がはじまりつつあった19世紀後半の西アフリカ(現ナイジェリア)。 絶え間ない努力と武勇によって若くして富を築いたイボ人の男、オコンクウォを中心に物語は進む。 オコンクウォはレスリングのチャンピオンとして名をあげ、それからも堅固な意志と絶え間ない勤労により富を築いた。何人もの妻を抱え、村人からの信頼も厚い。 オコンクウォは自分だけではなく他人にも非常に厳しい性格で、頑迷な一面も持つ。揺るぎない自分の正義を持つが、それに従わないのであれば妻も子供も殴って言うことを聞かせるというかなりの男性主義思想の持ち主でもある。 オコンクウォを含む集落の人々は伝統を守り、アニミズムを信仰することで強固な絆を築き、平穏な日々を謳歌していた。 しかし、ある日オコンクウォは事故により集落を7年間追放されることとなる。 母の故郷で7年間の贖罪を務め、やっと集落に戻ってきたオコンクウォ。しかし、そこで見たのはヨーロッパからやってきたキリスト教に侵食され、人々の絆がバラバラになってしまった姿だった。 これが本書のあらすじ。 シンプルなストーリーだが、回想が急に挟まったり反復が多かったりして読みやすい本ではない。言語・文化面のギャップも当然大きいので、序盤は読み進めるのに時間が掛かった。 しかし、読み終えると非常に示唆的な内容だったと感じる。 本作が発表されたのは1958年、アフリカ諸国が長く続いたヨーロッパの支配から脱却して自立に向かって歩を進める、不安と期待に満ちた激動の時代。 そんな中、アチェべは敢えて植民地化前に存在していた複雑で成熟したイボ人の社会を描くことで独立前夜の同志たちを奮い立たせたと言える。 また、侵略が必ずしも真正面からの戦いによって行われるものではないというメッセージを発していると感じた。 本作でも、ヨーロッパ人によるはじめの侵攻は武器ではなく宗教を使って行われた。まずキリスト教の宣教師たちを送り込み、徐々にイボ人のコミュニティを分断していった。これは実際に起こった話でもある。 これは現代においても普遍的なメッセージだと思う。正々堂々とした侵略などないし、多くの人がそれに気付いた頃にはもう手遅れなのだ。 さらに、アチェべは本作でイボ人の社会において陰となっていた人々にもスポットを当てる。 作中では「オス」と呼ばれるイボ人の村から隔離され迫害されていた人々が、キリスト教の最初の担い手となり自分たちを迫害していたコミュニティを壊す一役を担う。 初めから内部に抱えていたある種の「ひずみ」が、外部からの変化によって浮き彫りとなり内部の瓦解に繋がる。このあたりの描写もよくできている。 内部のひずみを抱えるという面では、オコンクウォその人も同じだ。 彼は物語の終盤でヨーロッパ人に良いようにされる故郷を見て、ヨーロッパ人、さらにそれを諦観する村の人々に対する怒りを抱えきれなくなる。そして、彼はヨーロッパ人を殺し、自らも命を絶つことになる。結果、オコンクウォは新しい社会にも、古い社会にも居場所はなくなり、「犬のように」埋められてしまう。 この最期は悲劇である。しかしこれはオコンクウォの中にある暴力性、頑迷さが暴走した結果でもある。彼の性質は、基本的には対話と調和を重んじるイボ人社会と大きく乖離していたのだ。 これも、彼の内部に抱えたひずみが表出化した結果だと読み取れるだろう。 このように、本作はアフリカの歴史に大きな影響を与えた歴史的な作品でありながら、現代にも通ずる普遍的なメッセージを与えてくれる名作である。 注釈、解説も充実しており、いろいろな読み方ができる。おすすめの一冊。
投稿日:2023.10.10
さやまる
アフリカ文学は当然初めて。解説も読み応えあり。 完全に未知なる世界である植民地支配前のナイジェリアでの日常自体が非常に興味深いし、ストーリーとしても面白い。登場人物名はンから始まったりするのでなかなか入ってこない。 急に地方長官目線で語られる終わりはあっけなかった。 村の運命を大きく変える白人は、スペインによる南米侵略とはまた違い、いくぶん平和的にも見えるがやはり傲慢である。主人公からするとキリスト教や改宗する人々は悪や腑抜けであるが、本書全体で見ると主人公の性格・村の風習の歪みはありありと見てとれ、単純な不正な侵略の告発といった形にはなっていない。 特に触れられてはいないが、終盤の主人公の自死は、ウムオフィア旧社会における「女々しい」行為だろうか?そうなのであればさらに悲劇的だ。
投稿日:2023.07.14
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