【感想】クラウド 増殖する悪意

森達也 / dZERO(インプレス)
(10件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • よおこ

    よおこ

    いつもの森達也。すでにどこかで読んだ文章も入っていたような気もするし。
    蓮池透さんとの対談には、すごく考えさせられた。

    投稿日:2016.01.10

  • oda1979

    oda1979

    タイトルでインターネット上の悪意の話かな?と思ってたらもっと広い意味で群衆(crowd)の悪意の話の本。

    いろんなことに関して寄せ集めな内容になっているけど、全体を通して一貫した内容になっていました。すべてに同調することはないけれど、言ってることはわかるということは確かにありました。

    ただ、具体的な内容までここに書いておきたいと思うようなことはありませんでした。

    (以上、ブログ全文です。)

    ブログはこちら。
    http://blog.livedoor.jp/oda1979/archives/4859461.html
    続きを読む

    投稿日:2015.04.19

  • 澤田拓也

    澤田拓也

    ドキュメンタリー作家 森達也が、様々な媒体に書いたエッセイをまとめたもの。
    複数の媒体にまたがっているが、各章のタイトルとサブタイトルを見ると著者の意図がわかってくる。

    第一章 加害者と被害者 - 加速する厳罰化と発せられる罵声
    第二章 無知と自覚 - 外なる「悪魔」、内なる「善」という思い込み
    第三章 憎悪と報復 - 加虐的に、とめどなく
    第四章 同調圧力 - 集団は敵を探し、強い管理統制とリーダーを求める
    第五章 覚悟 - 表現するということは

    全体としてなかなかまとめづらいので、ここでは、いくつか印象的なフレーズを取り上げる。

    ・第一章で取り上げられた『苦界浄土』は高橋源一郎にも最上の敬意をもって取り上げられた。「要するに僕はまだ『苦界浄土』を語れるレベルにすら達していない」という『苦界浄土』は一度は目を通しておきたい。

    ・足利事件などの冤罪事件や死刑囚再審に対する論考の中で、「個人の場合に働くはずの摩擦が効かなくなる。なぜなら「赤信号みんなでわたれば怖くない」状態になるからだ。そしてこの状態が少し続くだけで、赤信号であることすら忘れてしまう」というのは、森達也が常に意識することだ。オウム以来、暴走する組織のロジックや、「しない」ことの冷酷さは著者の大きなテーマだ。

    ・精神鑑定について、「かつて精神鑑定は、被告人の権利を守るための重要な要素だった。オウム以降、加速する厳罰化の流れにおいて、その意味付けは逆転した。検察側の主張を補強する材料として、恣意的に使われることが多くなった」というのは『A3』での大きなテーマ。検察の恣意性というのは、組織として「しない」ことを選択することでさらに強化されている。拘留請求がほとんど裁判所で受理されるといのが、司法全体で熟考が働かなくなっている証左かもしれない。

    ・「遺族の感情が死刑の理由になるのであれば、もしも親類や知人をまったく持たない人が被害者となったとき、その犯人の罰は(応報感情を抱く遺族がいないのだから)軽くてよいということになってしまう」という著者はこの点で全面的に正しい。光市星殺害事件に対するメディアと一般市民の声を論じるに当たり大いなる違和感を発する。このテーマは、『「自分の子どもが殺されても同じことが言えますか」と叫ぶ人に訊きたい』にも通じるテーマだ。本書のタイトル『増殖する悪意』もこれを表現している。

    ・有名なミルグラムの実験を取り上げて、「人の自由意志はこれほどに危うい。簡単に操作される。そして操作されていることに気づかない」とする。また、ホロコーストを例に挙げて、「誰もがヘスになりうる。誰もがアイヒマンになりうる。もちろん僕も。そこからスタートしなくてはダメなのだ」という。オウムの件でいうと信者は「洗脳されていた」ということで済ませてはいけない。

    ・「メディアはうそをつかない ... 視聴率や部数を上げるために危機を煽り、悪と規定された存在の異常さを強調し、視聴者や読者が望む方向に誘導する(念を押すがメディアが望む方向ではない)」... 最後のところが重要。
    「恣意的でありながらルーティン・ワーク。むしろこちらのほうがうそより怖い。なぜなら加工をしているとの自覚がない。後ろめたさや抵抗がない。だからつるつる滑る。こうして「凡庸な悪」が誕生する」というのが、組織の暴走に対する著者の認識だ。「人は普段着のままで買い物帰りに、取り返しのつかない間違いを犯す生きものだ。その意識をもう少しだけ多くの人が持てば、メディアはおそらく変わるはずだ。でも人々が変わるためにはメディアがかわらなければならない。救いのない堂々巡りだ」というのは著者が確信する、マスメディアが必然的に内包する問題だ。

    ・「恣意性のない編集など存在しない。虚を撮って(自分にとっての)真実を紡ぐ。表現として再構成する。これがドキュメンタリーの作法であり本質だ。事実と表現のあいだに生じる乖離に煩悶して当たり前なのだ」や「情報は常に誰かの意見や思いのバイアスがかかっている。意見や思いのフィルターを透過している。ニーチェが残した箴言である「事実など存在しない。ただ解釈だけが存在する」の意味を、メディアの人たちはもっと噛みしめるべきなのだ」というのは著者のドキュメンタリーとメディア批判に共通する姿勢だ。

    ・「第一に被害者と遺族の地位は、ほとんど聖域化しており、彼らに反対尋問をするとか、彼らの主張に疑問を差し挟むということはほとんど不可能であるということ。第二に、被害者と遺族が被告人に死刑を望むと発言することを、日本の裁判官が止めるということはなく、実際に多くの遺族は、家族や友人、さらには検察官からそのように後押しされているということだ」。これは著者の意見ではなく、オウム裁判に対する、日本の刑事司法の研究者のデビッド・ジョンソン氏の言葉になる。これは正論でもあるが、実際に通用しない少数派であることも確かだ。

    ・「宗教は生と死を転換する装置でもある。だから宗教は戦争や殺戮と相性がいい」というのが、著者の宗教に対する考え方。

    ・拉致被害者の会の蓮池透との対談が掲載されている。蓮池さんは、当初拉致被害者蓮池薫さんの兄で、被害者の会の事務局長を務めていたが、北朝鮮への対応が強硬派に流れるに至り、違和感を覚えて対立し、近年は互いに距離を置いているという。

    著者の煩悶と熱意が伝わる。
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    投稿日:2015.01.01

  • yoyogi39

    yoyogi39

    タイトルは、ITのクラウドと思いきや、crowd of peopleとのこと。BeatlesのA day in the lifeの一節。
    ユダヤ問題など、様々な問題が扱われているが、77人を殺害した犯人をなぜノルウェーは許したのか、が一番興味深い。報復は求めない、死刑は復活させないという強さがある。続きを読む

    投稿日:2014.09.13

  • kouhei0210

    kouhei0210

    日本のメディアの低俗化・低脳化と、それに対する
    国民の同調性。またそれを利用する政治の
    ポピュリズム化。
    いろいろ最近の出来事について、ちょっとおかしい
    のではと思うことが、多くなってきていることは、
    事実なのでは。
    右傾化・ネットでの中傷・オウムや3.11からの集団化。。。これらの日本の現状や民族性を考えると、本当に
    歴史は繰り返され、自分の子どもの時代にはまた
    民族の破滅に突き進むのではないかと、どこかで思って
    しまう今日この頃です。
    続きを読む

    投稿日:2014.05.28

  • しゅんぺい(笑)

    しゅんぺい(笑)

    いつもの森達也さん。人間が犯してしまう暴走、そして同調圧力を批判している。
    直球すぎるこのスタイル。定番すぎて食傷気味やけど、やはりこのひとにはずっと戦い続けてほしい。

    投稿日:2014.04.02

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