【感想】嵐が丘(下)

E・ブロンテ, 小野寺健 / 光文社古典新訳文庫
(31件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
9
8
10
1
1

ブクログレビュー

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  • pika

    pika

    面白かった。悲劇とか嫌だな、なんか陰鬱そうって敬遠していた時間が勿体ない。ストーリーも面白いし、語り手が聞き手でっていう又聞きの設定がいい。暴力に暴言に情熱に絶望にと凄まじい話だが、傍観者が一歩引いたうえに過去の話として語るものだから静かで、むしろ芯に響く。ヒースクリフって題名以上に有名なキャラだが、罵詈雑言と暴力と犯罪レベルのDVの酷さに加え、それを表現する修飾語が笑えるほど多様でよくぞここまでというほど突き抜けてる。登場から退場まで、初代キャサリン同様脳裏に焼き付くほど強烈だった。
    教育や教養って大切なんだなと。ネリーも語っていたけど誰よりもヘアトンの結末だよ、大事なのは。ストーリー的に。
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    投稿日:2024.02.10

  • 針槐

    針槐

    狭い世界の中で、少ない登場人物たちがぎゅうぎゅうにせめぎ合っている。大自然にかこまれていながら不自然な環境。代々狭い人間関係で遺伝的な病もありそう…など無駄な想像か。誰が主人公とも言えず、誰も客観性を持ちあわせない、個と個の闘争。愛情にせよ復讐にせよ、何十年と熱意を持ち続けるのはものすごいエネルギー。読む側も覚悟がいる。続きを読む

    投稿日:2023.12.16

  • コーヒーって旨い

    コーヒーって旨い

    ヒースクリフと二代目キャサリンがどうなったのか
    が気になってサクサク読めた。
    物語を色に例えるならダークグレーかな。
    重苦しくて辛かった。
    なにしろベートーベンが生きてた古い時代に書かれた物語だから読みにくそうなイメージだったが、翻訳がとても自然で読みやすくて有り難かった。
    訳者は真剣にこの作品と向き合った結果、相当疲れたらしく、自分もただ読んだだけで…疲れた。
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    投稿日:2023.08.02

  • 一条浩司(ダギナ)

    一条浩司(ダギナ)

    ヒースクリフの復讐は次の世代をも巻き込んでいく。ネリーの語る回想は、冒頭で青年が見た光景まで進むが……。

    恋愛を扱っているのに恋愛小説っぽくなく、むしろ不気味なサスペンスを感じる下巻。しかしヒースクリフとキャサリンの愛にはすさまじいものがあり、そこだけは素直に感動した。キャサリンの方は上巻で本音を語るシーンがあったのでわかるが、ヒースクリフを突き動かしているのは何だろう?単に愛情からくる復讐心、だけでは説明がつかない気がする。徐々に子どもたち3人の話に移っていくなか、彼の圧倒的な存在感はさらに増していく。そしてラストは……。

    訳者の解説で補助が得られたものの、初見では深い理解には届かなかったかもしれない。ヒースクリフの復讐が達成されていく過程に目を奪われがちになる……と書かれてあるとおり、筋書きを追うのに夢中で、この小説の底にある強烈なエネルギーについては漠然と感じるだけで終わった。他訳にもいつか挑戦したい。

    作中で都合よく人が死にすぎじゃね?と思ったが、エミリー・ブロンテの年譜を見て納得。本人も30歳の若さで亡くなっているし。没後何十年もたって評価されるとかつらすぎる。しかし今後も読み継がれる力を持つ名作だろう。
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    投稿日:2022.05.31

  • jumpinjackboy

    jumpinjackboy

    このレビューはネタバレを含みます

    文学史上に残る世界的な傑作……とされているが、個人的にはそこまで評価したいとは思わなかった。理解が難しいこともあるが、そもそも内容が暗すぎるのである。とくにヒースクリフは、いまでいう「サイコパス」としか思えない。屋敷を2つとも手中に収め、両家の家族をバラバラにしてしまうその様は、人こそ殺してはいないが、「北九州一家監禁殺人事件」「尼崎連続殺人事件」を想起させられた。むろん、内容が暗いからといって文学として質が低いということはないし、実際このような物語を着想することはすばらしいと思うが、とはいえやはり1人の読者として、積極的に評価したい気持にはなれなかった。最終的にキャシーとヘアトンが結ばれたことはよかったが、キャシーもまたさんざん悪態をついていたので、すなおに喜ぶ気にはなれない。とにかく登場人物の誰もが「イヤなヤツ」で、誰にも感情移入ができないのである。そういうなかで延延と恋愛要素を描かれてもしらけてしまう。作品の舞台同様に、まさに荒れ果てた大地のような小説である。

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    投稿日:2022.04.15

  • 瑠璃花@紫苑

    瑠璃花@紫苑

    実は去年もうとっくに読み終わっていた1冊。上巻はKindleUnlimitedで読了。新潮文庫の鴻巣友季子さんの訳も清新で好きだったけれど、こちらも読みやすい訳でした。
    下巻はこの作品を理解する、本当の大事なところ。第1世代のキャサリン・アーンショウとヒースクリフの恋愛から、ヒースクリフの復讐→彼ら彼女らの子供世代の成人と、それ以降の大団円へと話が進んでゆきます。同じ名前を引き継いだ子供世代のキャサリンとヒースクリフと、第一世代との区別というか、人間関係を整理しながら読むと、俄然話はわかりやすくなり、面白さを増すでしょう。どんなに深い恩讐も、人間はそう長く抱え続けられず、どこかで忘却したり、許したり、変容していくものなのかもしれません。狂気の淵に沈んで、砕け散ったガラスのような第一世代のキャサリンも、独り残され、生きてきたヒースクリフの濃く巨大な影も、全てが過ぎ、嵐がさらっていったように、後には灰色から、いっそ白に印象を変えた空と、吹き渡る風と、ヒースの丘だけが、静かに残ります。激しく狂気と荒々しさに彩られたこの作品の結末は、私にとっては意外に静かで、長い時間をともに生きたな、という感覚が残るものでした。続きを読む

    投稿日:2022.01.30

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