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納富信留 / ちくま学芸文庫 (2件のレビュー)
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サマ
このレビューはネタバレを含みます
ちょうど最近「国家」を読んだのでタイムリーだなと思って購入。「ポリテイア(国家)」について、1章で20世紀後半に起こった議論とその検討をし、2章で日本での受容史を見て、それを受けた3章で現代にポリテイアを読む意味を提言するという内容になっている。1章は哲学に疎い自分には勉強になった(ホメイニーがプラトンの哲人政治論に影響を受けていたのは知らなかった)し、3章は内容に全面的に同意できるとは思わないが、真っ向勝負の力のある議論で意義を示していて面白かった。2章にかなり力が入っていて詳しいので、こういう内容に興味があればさらに面白く読めたかもしれない。 ただポリテイアに向けられた批判に対して擁護が過ぎると思う箇所もいくつかある。すべての民は国のために生きることを求められ、職業選択の自由もなく妻子も共有であり、一部は私有財産すらないのに、理性のある「自発的」行動だから全体主義ではない、人権もあるというのはかなり苦しいだろう。著者は書いてないがそもそもこれ以外の道を許さないがんじがらめの教育あっての制度であって(それでこのような国が実現するのかは疑問だが)、「自発的」に国に奉仕する人間だけを生み出しておいてその言い草はない。 プラトンは劣った人間の間に生まれた子供は殺さなくてはいけないとまではっきり書いてるのに優性思想ではない、ただの経験論などというのもおかしいと思う。読者はポリテイア本文は読んでいないと思っているのかもしれないが…。擁護するにしても、当時は人権という思想はありませんでしたという擁護が精一杯ではないだろうか? ポリテイアを徹底して非政治的に読むのはこの大作を骨抜きにするようなものだと私も強く思うのだが、現代に読む意義を見出すのであれば現代から見て不都合な部分に批判があるのも避けられない。3章の議論で著者自身が力強く提言をしていて、ポリテイアに対する批判もまたディアクレティケーの一端になるという見解を示しているのは非常に良いなと思った。だからこそちょっと細かいところが気になってしまったかも。
投稿日:2024.01.08
夕
https://calil.jp/book/4766419480 慶應義塾大学出版会(2012-07-19)の文庫化
投稿日:2024.01.03
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