【感想】残された時間――脳外科医マーシュ、がんと生きる

ヘンリー・マーシュ, 小田嶋由美子, 仲野徹 / みすず書房
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  • 重度積読症

    重度積読症

    前著『医師が死を語るとき』では、脳外科医としての日々の医療や、友人医師を助けるためのネパールでの奮闘やウクライナにおける活動といった、医師としての著者がどのようなことを感じ、考え、治療に当たってきたかが第一の読みどころであったが、気に入って購入したオックスフォード運河沿いのコテージのリフォーム作業に勤しむ愉しさを語るマーシュ先生の姿も微笑ましかった。

     そんなマーシュ先生が前立腺がんの診断を受けてしまう。医師として多くの患者に対してきたマーシュ先生であったが、今回は自らが治療を受ける老いた患者の立場になった。”死”を身近に感じるようになってからの死への恐怖が率直に語られるほか、死について著者が考えた様々な考察が示されるほか、患者の立場から見た検査や治療、医師の患者に対する対し方などについての感想が折々に示される。
     自分も人生の折り返しを過ぎ、”死”について考えることも多くなってきたので、いろいろと感じることもあった。

     もっとも本書では、こうした死と医療に関する話に止まらず、量子力学、神経伝達物質、睡眠と夢、進化人類学、宇宙論など、著者の知的関心の幅広さを示す学問分野の最新動向について語られるほか、合間には孫たちのために大工仕事に精を出す姿が描かれる。

     あとがきでは、治療の結果、数値が良い状況になってきていることが報告されるが、そんなとき、ウクライナ侵攻が始まった。ウクライナの医療支援に長らく従事してきた著者にとっては大変なショックだったと思われる。「私たちは楽観的であり続ける義務がある。それをせず諦めてしまったら、悪が確実に勝利を収めるから。私は必ず戻る。」この言葉は重い。
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    投稿日:2024.04.23

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