【感想】物語 江南の歴史 もうひとつの中国史

岡本隆司 / 中公新書
(5件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • マサル

    マサル

    中原とは違い、江南の勢力は天下が取れない。その江南の中でも特に目立たない湖南出身者が現在の中国を作り上げている。そこへ至るまでの歴史を地域ごとに取り上げている。
    政治的には中心になれないも、経済や文化面で花開いていく。
    私は三国志好きなので、やはり、呉の都・建業(現在の南京)の辺りが気になる。その後、中原の激しい争いから人が流れてきて、かつてないレベルで開発が進んでいく。それでも天下には手が届かない。
    東シナ海に面したエリアも興味深い。グローバルヒストリーとして広い視野で海洋貿易を見ていく本も面白いが、この本のようにその中の一部地域ではこうであったと説明してもらうと、自分の頭の中で点と点が繋がり線になった。
    また、荊州についての記述で、三国志の劉表が20年に渡り、10万もの兵を常備し外敵の侵略を防いだと高評価されている。このエリアは時代が下ると、大騒ぎを起こす太平天国を産み育てる事になり、それを叩き潰す曾国藩。そして、毛沢東へと繋がっていく。
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    投稿日:2024.05.06

  • kemukemu

    kemukemu

    中国の歴史は長く、地域も広い。
    “江南”という地域を限定しても、やはり通史概論的にならざるを得ない。

    この本では、現在の地名でおもに「四川」「江蘇 安微 広西 浙江」「福建 広東」「湖北 湖南」の四つの地域でまとめてある。
    その為か何度も同じ時代が地域を替えて出てくるなど、なかなか読み込みに力がいった。

    それでも、政治 経済 文化などが丁寧に解説されており、「中国史」としてはやや脇役的立場の地域が果たした役割が、よく知られている「中国史」への影響と結びついて、とても新鮮だった。
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    投稿日:2024.04.19

  • こうへい

    こうへい

    漢民族の目は概して北に向いていた。太古の長城の時代からソ連との対立の時代まで。

    しかしソ連は解体し、ロシアもライバルからパートナーへと力が落ちて来た(=中国が強大化した)事により、ここ30年の間にすっかり南方(江南)が中華となった感がある。沿岸部の経済発展然り、香港・澳門の返還然り、台湾への攻勢然り。

    そして今その目は海に向かい日本やフィリピン、一帯一路にまで向かっている。その膨張をどう歯止めをかけるのか、そういう所に思いを馳せた一冊だった。

    江南の地位が低く見られていたのは、中国が政治に重く経済に軽かったから。経済に比べ政治のプレゼンスが低かった江南はどうしてもそう見られがちだった。
    中国の経済が台頭する今、必然的に江南の存在感は高まる。

    華北に対する江南の逆襲、と言った所か。

    ジュンク堂書店近鉄あべのハルカス店にて購入。
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    投稿日:2024.01.20

  • たんぐん

    たんぐん

    中国の歌やゲームで江南を題材にしたものがあり、江南は特別な場所であるという認識をしていた。江南だけに焦点を本は日本には少ないと個人的に思っていたため、本著にとても興味があった。

    結果的にやはり、中公新書のこの著者の本は、一般大衆向けではないように感じた。まあそれは当然のことかもしれない。中国の首都は北京で北方が主であることから、北がメジャーで、南がマイナー。江南は中国の南方の歴史なので、そもそも扱っている題材が一般大衆向けではないのか...?

    この本で一番良かったのは、最後について来る江南の歴史 関連年表だった。空白部分も多いが、分かりやすくまとまっていた。江南を中国の南方とかなり広範囲としていた。本を読む前、江南は杭州とその周辺地域と思っていたが。

    この著者の本にはいつも、通貨やモンゴル帝国、気候地形、宦官、シルクロード、科挙、アヘン戦争のくだりなど基本的な歴史の軸があるので既視感はいつもある。

    この著者の中国史に関する本を何冊か読んでみて、自分は個人的に、中国史はそこまで深く知りたい欲がなく、中国語の文法のほうが知りたい欲が明らかに多いことが分かった。

    江南には個人的に興味があるので、本著を2回読んだが、感想は1回目とおおむね同じ。
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    投稿日:2023.11.20

  • 中央公論新社

    中央公論新社

    春秋の争覇から蜀の開発、六朝・唐宋の繁華、明の興亡、革命の時代へ。南方からたどる五千年史。古くて新しい中国史への招待

    投稿日:2023.11.13

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