【感想】発展する地域 衰退する地域 ──地域が自立するための経済学

ジェイン・ジェイコブズ, 中村達也 / ちくま学芸文庫
(18件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 1869250番目の読書家

    1869250番目の読書家

    国民経済という枠組みの否定から始まり、都市地域という概念から都市間の有機的な繋がりの重要性を書き出している。
    輸入置換が都市経済の発展を促す過程の説明と輸出に依存する経済の危険性を書き出す部分はとても興味深い。続きを読む

    投稿日:2023.06.19

  • はな

    はな

    発展する地域と衰退する地域、その2つをわける要因について、都市による輸入置換と都市地域の重要性を説いている。
    発展する地域のための処方箋と言うよりも、より効果的もしくは悪手にならない都市への介入方法について、歴史的な都市の興衰から紐解いている。
    複雑な都市を取り巻く状態を分析し、都市間および都市地域を持続的に発展させること、つまり1つの都市ではなく都市の有機的な繋がりを意識することを指摘している。
    本書で述べらているのは、物質的な輸入置換品が中心と思われるが、産業構造が大きく変動している現在においても、適応しうる考え方なのではないだろうか。
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    投稿日:2022.05.13

  • nyankoteacher

    nyankoteacher

    再読。
    主流の経済学の枠組みから出発したわけでもない、ジャーナリストとして出発した著者の、世界を読み解く鍵を説明してみせる技量に圧倒される。
    著者の思想は、一貫して、エリート・デザイナ達による計画的な社会制御よりも、自発的でバイタルで細胞的な活動こそが社会のエッセンスであるという信念に支えられている。かといって、日本的なリベラルというわけでもないのが面白いところ。
    「これから100年後に、もし歴史家が、日本の衰退の開始時点を知ろうとすれば、1977年が一つの目安となろう。」(pp322-323 第13章 苦境)税率の上昇が始まり、都市間の活発な活動が後景に退いて、政策としての補助金や国家防衛的目的への支出でドライブをかけようとするベクトルが顕著になり始めた頃であるとの説明だ。これが書かれて30年以上になり、著者が予言したように日本の衰退は進みつつあると多くの人が認めるだろう。
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    投稿日:2021.04.17

  • bookkeeper2012

    bookkeeper2012

    東京、というか首都圏に住んで働いていると地域経済みたいな概念がピンと来ないようなところがある。転勤で東京以外の土地にいくつか住んだが、転勤族として住むとその土地の経済とは半身だけ切り離されていたようなものだし、日本はどこまでいっても東京の周辺地域みたいな感じもある。その点、アメリカに行くと大企業の本社なんかもいろんな都市にあるし、日本よりかは地域経済が話題に上がりやすいような気がした。

    この本は、国家単位で経済を捉えていては本当の姿がわからない、都市に焦点を当てなければ、と説く。なかなか日本からはこうした議論は出てこないのでは、と思う。

    原著は1984年刊。まだアメリカが経済については自信喪失気味だった時代、冷戦の終結までもあと何年かある。よってか母国アメリカに関する記述はやや暗い(シアトルは軍需産業が落ち目だし、サンベルトもぱっとしない)。そのあたりはやや時代を感じるところではあるのだが、国の内部での地域間格差が大きな問題になることはアメリカに限った話ではなく、30年後をみごとに先取りしている。

    都市のもっている力や可能性についてはあんまり具体性がなくて「輸入置換やインプロビゼーションと言われてもなー」程度の感想なのだが、逆にモノカルチャー経済になる供給地域や、単純に発展から取り残される地域の描写は説得的であり、それらのネガとして都市の重要性が浮かび上がる。

    また、本書の骨子のひとつは、経済学でいう最適通貨圏の議論に他ならないように思うのだが、ネットでざっと見た限りではジェイコブズと最適通貨圏を結びつけた文章はほとんど見つからなかった。やっぱり経済学者じゃないからか。
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    投稿日:2020.11.29

  • くすのき

    くすのき

    「輸入置換」とか「衰退の取引」とか、なかなかに生硬な翻訳用語が多用されているため、シロウト的にはもう少し噛み砕いて説明してほしいなと感じたし、全部理解できたかと言われると心許ないが、かなり核心を突いた本なのではないかと直感的に感じた。

    地方の経済活性化とか、発展途上国の開発援助とか、わたしが子供の頃から世間でずーっと行われてきたけど、あまりうまくいっている例を聞かない事業がたくさんある。
    税金や補助金が湯水のように使われているにもかかわらず。

    木下斉氏の本など読むと、地方の町おこしの暗い闇の実情が窺われたりするが、そういうお金は誰かを潤して、そして地元には残らない。砂漠に水が吸い込まれてしまうようにシュッと消え去ってしまう。

    企業城下町や単作物産業で繁栄した町も、それがなくなれば火が消えたように衰退する。

    結局地元が自前でリスクをとって、他では真似できない産業や製品を編み出して他の地域と取引ができるようにならなければ、また、それで得た利益を地元に落としてさらに地元を富ませるサイクルを作らなければ、町は衰退する。

    著者は国単位でなく都市単位で経済の盛衰をまるで健康診断をみるようにと示唆する。確かにその方がいいかも。
    また、大胆にも地域通貨を創設することで地方同士の取引が活性化されるとの提案も。

    要するに経済圏を、昔の藩ぐらいの単位で回したら良いのかなと思う。

    正直、中国やロシアと隣接する九州、北陸、北海道などは、東京にはない地の利があり、貿易でも人的交流でもどんどんやったら今より繁栄できるのでは?と思っていた。行政単位を昔の藩ぐらいに分けて、それぞれが産業や人材を育成する方が繁栄できる気がしていたので、ジェイコブス氏の指摘にはうなずくことが多かった。
    そして衰退する町や国に生きることの怖さも感じた。



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    投稿日:2020.10.18

  • tksych

    tksych

    ”はじめに都市ありき”

    ”都市”は文明社会の専売特許と考えられているが、そもそも人類が住まうことになった場所は”都市”だった―いや、むしろ、人類がはじめて荒野に旅立ったとき、肩を寄せ合って過ごしたはじめての夜。その場所。それはすでに”都市”であったといえるのではないだろうか。

    現代社会の課題を考えるとき、都市―そして都市と都市のつながり―を中心に据える方法論。

    街路には多様な世代、職業、ルーツの人々が行きかう。都市と都市、地域と地域へと交易が展開していく。自立と共生の輪が拡大していく。これこそが文明が発展してきた道筋ではないだろうか。

    この本を片手に、街へ出よう。
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    投稿日:2019.01.25

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