【感想】戦争論

高原到 / 講談社
(2件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • Eliot

    Eliot

    言葉は時に真実を隠蔽するためには使われるということは、知っていたつもりでいたが、実際「太平洋戦争」という言い方が、日本のアジアにおける侵略·加害行為から目を背けさせ、あたかもアメリカとの戦争だったと思い込ませるための用語であったということは、意識したことがなかった。
     難解なところも多かったが、非常に学ぶことの多い作品だった。
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    投稿日:2023.11.06

  • mmcit

    mmcit

     第三章で語られた戦後日本の位置づけ――冷戦体制下で軍事=戦争を外部にアウトソーシングし、経済的な「豊かさ」の中でまどろんでいた――はその通りだと思う。だがそれは、むしろ1990年代以降の人文社会科学での基本的な認識だろう。一国主義的で抽象的な「平和」をめぐる議論を書き込み直す必要がある、という問題意識にも共感できる。しかし、本書全体として見ると、「大きなこと」「意味があること」を主張したいがゆえの過剰な意味づけや、議論の単純化が気になった。

     例えば著者は、太田洋子のテクストに触れながら、戦後日本は「復讐心」を抑圧してきたのではないか、とする。これは加害の自覚の不在の裏返しとも言えるが、一方でそのことは、日中戦争・アジア太平洋戦争における「敵」の曖昧さや抽象性に由来する問題ではないか。「誰がこの戦争の敵なのか」が曖昧であるならば、そもそも何に対して「復讐」するのかも不透明なものとならざるを得ない。

     もう一つの問題は、1990年代以降の20年間をどう捉えるかである。著者が提出した戦後日本観は、それこそ政治家として安倍晋三が登場した1990年代後半の段階で基本的なフレームが提出されていた(安倍は、それに対するバックラッシュを象徴的な資源としてのしあがった政治家だった)。むしろ第三章で問われるべきは、加藤典洋=白井聡的な「戦後日本」の枠組みではなく、この25年間の日本社会の戦争認識だったのではないか。
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    投稿日:2023.09.09

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