【感想】世界で第何位? 日本の絶望 ランキング集

大村大次郎 / 中公新書ラクレ
(8件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • bachbygg

    bachbygg

    日本の社会インフラ、医療、経済、貧富の差、少子化問題等について、世界各国とランキング形式で考察した本。
    バブル崩壊、2000年代から世界における日本の位置付けが増々低下している。経済的には、未だトップランクを維持しているものの、インフラ、医療、教育等は先進国で最低レベル。アジアでも韓国や台湾よりも下位という状態だ。
    原因は、景気が良かった時代にお金の使い方を誤った事、将来に向けての投資をして来なかった事、他国の状況への関心の薄さ(凄い日本と自画自賛)等々。政治が現在の問題にばかり気を取られて、将来を考えてこなかった事も一因なのだろう。
    先進国最下位と言われても、そうなのかと思うが、アジア各国よりも下位と言われるとインパクトがある。(アジアでの先進国という優越感が損なわれるせいかも)
    この傾向が続くと、日本は経済大国に復活することはなく、過去の資産で細々と生きていく国になっていくのかもしれない。
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    投稿日:2024.01.02

  • バスタンテ

    バスタンテ

    このレビューはネタバレを含みます

     政府債務が多く少子化が進む。日本はダメな国、という論点がある一方、「日本は世界から尊敬される国」という本も多い。一体、どっちが正しいのか。

     著者の大村氏は感覚に頼ることなく、統計でその姿を浮き彫りにする。

     日本の製造業が弱くなったのは海外に製造拠点を移したから。その上、賃金が上がらず、貧富の差は開いた、という指摘はうなずける。

     日本経済の状況はなかなかひどいがこの後どうかじ取りをしていくのか。日本という国が今後立ち上がれなくなるように、少子化という足かせをはめられたのかも、と思うほど厳しい状況だと思う。

     アメリカで中流層が搾取され、すっぽり中流層がいなくなった時期、アメリカで自己啓発本がブームになった、と聴いたことがある。苦痛の多い暮らしを送る人々に読む麻薬を与えたのか、と思った。今の「日本はすばらしい」論も同じ構図かもしれない。ひどくなる一方の日本。その絶望を少しでも和らげるために、「日本は世界一」という書籍が売られるのかもしれない。

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    投稿日:2023.11.19

  • 臥煙

    臥煙

    若者よ選挙へ行こう!日本社会の閉塞の現況を具体的な数値で示す。景気回復の期待や少子化対策等を具体的な数値で現状を示し今後の方向性を示す一冊。

    データつまりエビデンス二基づくところが良い。日本という国の現実を冷静に見るに最良の一冊。特に後半、日本医師会や特殊法人についての記述が新鮮な印象。

    結局、民主主義国家ニッポン、今の日本を選んだのは日本国民。投票しない=現体制指示ということに気付かぬ若者に読んでほしい一冊。
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    投稿日:2023.11.10

  • yasz

    yasz

    本当は2020年頃からこの本に書かれていることは現実のことになっていたように思いますが、今年5月まで日本はコロナ体制にあったので、全ての不具合はコロナの為と思われてきたように思います。それがコロナ体制の終わる数ヶ月ほど前から勃発したウクライナ危機により、円安となり今では誰もが認識することになってきていると思います。

    今年の予算・計画を立てた昨年頃にはまだコロナのために、それらを考慮された計画となっていたのではないでしょうか。日本経済は他の世界と比べて、1年から1年半ばかりコロナ体制を引きずっていた期間が長いので、その影響が来年あたりから顕著に出てくると思います。

    そう思っているところに、実際のデータをベースに議論をしてくれるこの本の著者の新作を見つけました。タイトルもその中身もあまり嬉しい内容ではありませんが、これらは紛れもない事実だと思いますので、それらを理解した上で今後数年にわたって起きるであろう大変換に備える必要があると思いました。

    以下は気になったポイントです。

    ・台風や豪雨のたびに、どこかしらで大規模停電が発生している、2019年9月の台風15号では90万戸が起きて3週間近く復旧しない地域もあった。これらは電源を地中化すればかなり防げた、無電柱化の推進は阪神大震災の頃から言われていたが、30年経過しても全く進んでいない。東京23区の無電柱化率:8%、ロンドン・パリ・シンガポールは100%(p33)

    ・現在の国の借金1000兆円は、1990年に始まった公共事業(内需拡大)63x10=630兆円に端を発する(p36)
    ・社会保険関係費というと年金、生活保護を思い浮かべる人が多いようだが、最も大きいのは医療費である、現在の医療費は年金とほぼ同額だが、長い間医療費が年金よりも大きかった(p48)

    ・人口千人あたりの病床数は世界一だが、新型コロナの初期では医療危機となった、それは集中治療室が最低レベル(10万人あたり5.2vsドイツ:33.9、アメリカ:25.8)(p53)日本の場合は、民間病院が8割(英・仏・独は過半数以下)と異常に多い(p54)開業医が日本では多い、日本医師会という強力な圧力団体を持っている(p59)日本医師会は医学部の新設に強硬に反対してきたので、新卒医師数が少ない(7.1 vs ドイツ等は12人以上@10万人)(p61)

    ・寝たきり老人の数が300万人以上と世界ワースト1位、理由は医療現場において「とにかく生存させておく」ことが善とされ、点滴・胃ろうなどの延命治療がスタンダードで行われているから(p65)

    ・日本の医療において開業医が多いことと並んでもう一つ特徴的なのは、精神科病院が多い、しかも入院型である。世界が入院型から通院型へ切り替えている。精神科の病床は32万以上で全病床の21%を超えている、人口千人あたりの精神科ベット数は日本が2.6で2位の1.4に比べてダントツの一位である(p67)結核療養所が精神科に衣替えした経緯がある(p69)精神疾患は自己負担分を自治体が補助しているケースが多いので、患者の負担はゼロになっていることが多い(p70)

    ・日本の製造業が衰退した最大の原因は、生産設備が日本から海外に移され、国内が空っぽになってしまったこと(p81)中国韓国メーカが台頭したというより日本メーカが凋落したと見る方が正しい(p85)欧米のメーカは、中国・韓国メーカのものと競合分野が異なる(p86)日本は海外で工場を作り、無償で技術提供をしたので中国・韓国メーカが技術力をつけていった(p88)

    ・日本のデジタル競争力が急速に落ちたのは、1)安易な海外進出による技術流出、2)雇用を大事にしなかったことによる人材難、目先の収益を追い求めた結果である(p91)

    ・日本国内で90億円の経費をかけて100億円の売り上げ、10億円の収益を得ていたとする。海外に工場移転して20億円の収益を得たとする。これにより10億円の増収、日本へ利益をもたらしているように見えるが実際は異なる。日本国内で活動しているときは10億円の収益しか得られなくても、そのために90億円の経費は日本国内に落ちていて、それが雇用をうみ、国内下請けの収益となる。100億円の経済効果を生んでいたことになる(p95)海外に移転すればその分GDPが減ることになり、労働生産性が伸びていない原因でもある(p96)

    ・輸出される商品は、国内で製造する段階で材料費などで消費税を払っているので、輸出するときに支払った消費税を還付する=戻し税である(p108)さらに、外国子会社からの受取配当の益金不参入(95%は課税対象から外す)がある(p109)これは国内でものづくりを頑張るより、海外に工場を作って子会社化した方が得をすることになり、確実に日本経済を蝕んでいる(p112)賃金が上がっていないことも一因(p124)

    ・平成の30年間は失われた30年と呼ばれる苦しい時代のはずであるが、個人金融資産は、1017→2000兆円以上になっている、一部の富裕層に集中している(p119)

    ・この20年間で国内消費が10%減少している、したがって企業の国内売り上げは下がる(p128)

    ・生活保護の不正受給者はせいぜい2ー3万人、一方で生活保護のもらい漏れは、800万人近くいると推定されている(p142)

    2023年9月9日読了
    2023年10月29日作成
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    投稿日:2023.10.29

  • shu1rev

    shu1rev

     本書を読んで、日本という国は決して洗練された民主主義国家などではなく、力で幅を利かせる顔役が跋扈する、原始集団だったのだな、ということを妙に納得した。それは諸外国が洗練されている、というのともちがうんだ。たぶんね、そこに至るにはどの国にも歴史があり、うまくいったりいかなかったりを繰り返して今がある。顔役が跋扈する原始社会というのは、べつに揶揄しているわけでもなく、一面ではどの国でもそうなのだと思う。ただ、そこを日本人は、少なくとも俺自身はもう少しあるべきものに沿って、それぞれのポジションにいる人ががんばっていて、支え合っていると思ってたんだけどね。そういうものが全否定されたわけではないものの、あくまで部分的だったのだね。

     日本のGNPが下がり、労働生産性が低いのは、起業が工場を海外に移転したから。その結果、技術が海外に流出し、国内の賃金は安く据え置かれた。そのあたりは、90年代以降の経営者、そしてそれを後押しした為政者の間違いだろう。

     こうすればこうなる、ということが、数字を使ってわかりやすく説明される。けっこう説得力あったな。役人の天下り先となる特定法人と開業医を病巣の中心としてあげてはいたけども、それだけではないだろう。

     自分自身が考え、生きのこる算段をしていかないとね。
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    投稿日:2023.10.25

  • まりも

    まりも

    一所懸命に働いても生活が楽にならない事が出来ない日本人。「どうして!?」をさまざまな統計をもとに科学的に分析!何が失敗だったのか、なるほどと思わせる。

    投稿日:2023.10.14

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