【感想】応仁悪童伝

木下昌輝 / 時代小説文庫
(2件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • DJ Charlie

    DJ Charlie

    仄かに興味を覚えて本作を手にして紐解き始めた。独特な作中世界の雰囲気に引き込まれ、夢中で本作を読了した。「応仁の乱」が起こるような頃、或いは起こってしまった頃という時代を背景とした時代モノの小説だ。
    本作は2人の主人公が各々に、または手を携えて、揺れ動く不穏な時代を駆け抜けるというような物語ということになる。場面に応じて適宜視点人物が切り替わるのだが、殆どの場面は2人の主人公の何れかの目線で綴られることになる。
    2人の主人公は堺の寺で暮らしていた。
    身寄りの無い者等が芸事で身を立てられるようにということで、厳しい修行を課せられる仕組みが在って、一若はその中に在った。舞台の上で本物の武具を用い、軽業の動きも入れて古い合戦譚等を演じる「具足能」というモノに取組んでいた。
    熒(けい)は、身分の高い僧侶の近辺の仕事に携わる上稚児と呼ばれる立場だった。熒(けい)の名は、熒惑星(けいこくせい)という星の名に因んだ名である。熒惑星とは火星の古称である。様々な知識を有しており、画を描くことが得意である。更に評判の美少年でもあった。
    同じ寺に在ると言っても、一若と熒とは立場が大きく異なった。それでも同じ年であることから、互いに言葉も交わし、親しい間柄であるとは言える関係であった。
    或る日、2人の暮らしていた寺で、僧侶が殺害され、建物に放火されるという事件が出来する。熒は寺から出奔した。そして一若は、全く身に覚えが無い殺害と放火の犯人という話しになってしまっていたので逃げた。更に20貫文の賞金首ということにまでなってしまっていた。
    熒と一若は各々に京を目指す。熒には何か思惑が在るようだった。一若は何とか金を稼ごうとしていた。一若は生き別れになった姉と「堺で会おう」と約したとして、重大事件の犯人にはされてしまったものの、それを帳消しにし得るような利権を贖って堺へ戻ろうと考えたのだった。
    この頃の京都は荒廃していた。室町幕府はその権威が傾き、大名達が争い、各々の大名家の中で後継者争い等が展開し、凶作や災害で流民が発生し、徳政を求める土一揆が頻発していたのだ。一若はこうした渦中に身を投じ、生きる術を見出そうとする。熒もまた、独自に活動を展開しようとしている。
    そういう最中、畠山義就と畠山政長との長い間の争いを決着すべく、「当事者の軍勢だけで決着が着くまで戦え。他の者が加勢することは罷りならない」と幕府が裁定した。ところがここに、実力者として知られる山名宗全が畠山義就の側で加勢したことが契機となり、方々の勢力が東西に分かれて争う事態となってしまった。「応仁の乱」である。
    この「応仁の乱」という中、2人の少年を始め、渦中の様々な人達は如何する、如何なるというのが本作の物語である。
    「作中の京」は、何か「灰色」または「くすんだ色彩」を感じさせる。その他方に、贅を凝らしたモノを使う一部の人々の場違いに華やかな色が散っている。そして合戦が絡めば、高位の有力武将の華麗な武具や、一部の将兵が身に着けた華やかな色のモノが蠢き、「灰色」または「くすんだ色彩」の街に炎の色や血の色が飛び散る。そういう作中世界の様相だと思った。
    また「応仁の乱」は「戦国時代」への道筋を拓いたとされる出来事だ。以前の時代の“作法”または“定石”を外した「ゲリラ戦」的な戦術が用いられ、そういう事を担う足軽や疾足(はやあし)という兵が登場して活躍する。手っ取り早く敵兵に損害を与えようと、「投石戦術」というようなモノが大胆に採用されている。陣地に乱入して櫓を燃やすような行為を互いに仕掛け合うというような感じなのだ。こういう様子が凄い。
    様々なモノを負っている熒が、揺れる時代を必死に駆け抜けようとする一若が如何いうようになって行くのか、なかなか夢中にさせてくれた。2人の周辺に現れる様々な人物達も各々に面白い。本作は広く御薦めしたい。
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    投稿日:2023.08.11

  • オールマイティ

    オールマイティ

    応仁の乱を舞台にした作品は、意外と少ない。言い方は悪いけど、あまりパッとした戦が無かったからだろう。この作品でも、大きな戦は描かれていないけど、一つ一つの戦闘シーンの描写には、手に汗握るものがあって、素晴らしかった。続きを読む

    投稿日:2023.07.22

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