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ブライアン・フェイガン, 東郷えりか, 桃井緑美子 / 河出文庫 (1件のレビュー)
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重度積読症
荒天による食糧不足がフランス革命を引き起こしたと通常の歴史学では言わないように、歴史の変動を気候だけで説明することはできないが、昔であればあるほど人間の生活が気候に大きく影響を受けたことは間違いないだ…ろう。 本書はだいたい10世紀から19世紀ころまでのヨーロッパにおける気候変動が、海岸線や氷河など地形を変化させ、あるいは食糧の豊凶によって人口の増減を生じさせたかを明らかにしていく。昔になればなるほど、気温や海洋に関する正確な統計データは存在しないが、雪氷コア、樹木年輪その他の研究手法に拠って復元されてきた当時の状況に基づき、著者はその筆を進めているようだ。 〇興味深かった内容 「第1章 中世温暖期」~10世紀末にスカンディナヴィア人がグリーンランドに定住し、当時豊富だったタラやアザラシ、セイウチの漁をし、さらに北アメリカ(現在のカナダ等)まで航海していたこと。ゴシック教会の大聖堂などが次々と建築されたのもこの時代が豊作であったからこそ可能であったことなど。 「第4章 嵐とタラとドッガー船」~乾燥させた塩漬けのタラは軽いうえに保存がきいたのでヨーロッパでは船乗りや軍隊の理想的な糧食であった。しかしタラは水温に極めて敏感な魚fで水温が2℃以下の場所では生存できない。 この時代、船の造船技術も進歩し、イングランドでは2本から3本のマストのある外洋船ドッガ―船が生み出され、漁場を拡大していった。 第6章以降の第3部「『「満ち足りた世界』の終焉」では、人口が増加し、食糧問題が深刻になったことから、北ヨーロッパで農業革命が進行した様子が描かれる。 オランダの土地干拓による農地の増大、イングランドにおける土地の囲い込み、新世界の作物ジャガイモの普及、フランスにおける冷夏による農民の窮状続きとフランス革命、アイルランドのジャガイモ飢饉などなど、世界史で習った有名なトピックが 気候とどのように関わっていたかが説明される。 千年単位での気候変動と歴史との関係が描かれた訳だが、地球温暖化は果たして地球を、そして我々の生活をどのように変えていくのか、改めて考える上で良い参考書だと思う。 続きを読む
投稿日:2023.12.13
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