【感想】片山杜秀のクラシック大音楽家15講

片山杜秀 / 河出文庫
(2件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
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ブクログレビュー

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  • Verfassungslehre

    Verfassungslehre

    才気煥発だけど、「俺は他人とは違う」ところを見せたがる目立ちたがり屋の片山杜秀少年の音楽遍歴をベースに15人の音楽家について好き放題に、極めて主観的に喋りまくるというスタイルでまとめた、たいへんに面白く楽しめる本です。
    自分の本なら付箋を貼って起きそうなところは

    わたしが未だに馴染めないモーツァルトを「刹那の芸術」とといい、ベートーヴェンの受容は戦後大衆教養主義の産物であったとするあたりは、納得感が溢れます。
    マーラーは、それなりの再生装置で大音量で聞かないと真価を理解できないというのには、膝を打って納得です。個人的な体験でも、15インチの大スピーカーで広めの社宅で朗々と流していたときにはやたらマーラーを聞いていました。
    フルトヴェングラーは、音の悪いほうがいいというのは、やたら高音質をネタに音盤を求め、再発売する風潮の揶揄でしょうか。
    アンチ・カラヤンを徹底していた片山少年は普門館コンサートのチケットを断ってしまい、結局カラヤンのコンサートは一度も聞かずに終わるというのは、ちょっともったいなかったのでは?
    バーンスタインの項は比較的長い。なんか作曲家としては恵まれなかったところへの同情を感じます。
    多くを聞かない古楽からカール・リヒターの晩年の不遇を解き明かそうとする推測?には、ちょっと悄然としました。
    最後、吉田秀和のところではコバヒデ(小林秀雄)との対比が面白くて笑いどころがいっぱいです。
    ついでに竹中平蔵の名前を明かさず揶揄しているところでは大爆笑しました。

    クラシックと呼ばれる音楽をお好きな方にはおすすめ本です。
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    投稿日:2023.04.05

  • jet

    jet

    単行本「クラシックの核心」の9人に、ベートーヴェン、トスカニーニ、バーンスタイン、カラス、リヒター、吉田秀和の6人を追加し、文庫化した本。

    既に、「クラシックの核心」は読んでいたので、文庫化の際に追加となった6人だけを読んだ。ベートーヴェンは、初出の文藝別冊で読んでいたが、この際なので、また読んだ。
    文藝別冊では、片山氏の書いた記事のページは、文字サイズがかなり小さく印刷されている。その為、ぱっと見て(内容云々の前、つまり認知容易性が悪いということ)あまり良い印象は抱かないが、本書は普通の文庫本の文字サイズであるため読みやすい。

    内容は、話題が多岐に渡り面白い。ただ面白いだけではなく、そこから音楽家の核心に迫って行き、ツボを押さえている辺りがさすがである。あとがきで、「辺境からの遊撃的展開が何らかの核心に到達していそうな箇所があれば」と書いているが、まさにその様な感じの文章である。

    また、著者独自の視点が必ず入っているので、取り上げられている音楽家に対してある程度の知識を持っていても、新たな知見が得られる可能性が高い。

    文庫化の際に、キャッチャーなタイトルになったため、門外漢も食指を伸ばすかもしれないが、しかし、これを門外漢が読んでも面白いかどうか?

    既にクラシック音楽に対する知識のある、クラシック音楽ファンには間違いなくお勧めである。

    片山杜秀の文章は時々、吉田秀和に近いものを感じる時もあったが、「吉田秀和」の項で、片山が吉田を別次元で上手に真似できないかと、何十年間か、意識して研究していたとあり、やはり、吉田秀和を研究していたのかと納得した。
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    投稿日:2023.03.28

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