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かぐや, 春野薫久 / レジーナブックス (1件のレビュー)
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いこ
このレビューはネタバレを含みます
初志貫徹! ランドン殿下の改心と溺愛の加速ぶりに、もしかしてジョージアナもほだされるのではと危惧していたら、ちゃんと貫き通してくれました。 もう彼女は未来永劫かつてのような愛を返しはしない。 どれだけ彼女に謝罪しようと。 どれだけ彼女を溺愛しようと、もう決して。 それもまた夫婦の形。 しかも国のこれからを担う責任ある立場の夫婦であるなら、結婚は契約だ。 世継ぎを生むのは義務で、仕事だ。 そこにもう愛はいらない。 ここで安易に二人は愛し愛される仲になってハッピーエンドな流れにしなかったところが本当によかった。 本編自体はハッピーエンドではあるのだが、恋愛的ハッピーエンドかと問われたら否と答えるしかないという。 国としてはまさしくハッピーエンド。 皇太子は愚かな行為を改め、政治的に立派な手腕を振れる人物となった。 皇太子妃も己の役目を弁えた、優秀な人だ(ジョージアナである) ジョージアナの実家も、きっとこれから兄が父母がどうにかしていくだろう。 安易なハッピーエンドだったなら、他キャラクターの特に皇太子の成長はなく、国は傾いていたかもしれない。 安易な恋愛的ハッピーエンドで終わらない、そこがこの作品の持ち味。 まあ殿下はよかれと思ってやったことが裏目に出て、何だかんだでジョージアナの期待を上げては落としていたから、振り返ってみればやはり再び愛せる可能性は低かったようにも見えるし。 作中に的確すぎてめちゃくちゃ痺れた描写があった。 ジョージアナは折れた花を地面に投げ捨てて言う。 その花に謝罪し、愛を込めて、折られる前の元の姿に戻して差し上げてと。 重ねて彼女は言う。 決してそんなことは不可能だと。 だから、もう謝罪は不要だと、不毛なのだと。 彼女は不可逆的に折られてしまったのだ。 無自覚だった婚約者によって、家族によって。 いくら彼らが後から改心し、恋心に気付き、関係性の過ちに気付き、謝罪をし、愛を注ごうと、戻らないものは戻らない。 そうでしか生きられないようにしたのだ、他ならぬ彼らが、ジョージアナを。 何たる皮肉。 ジョージアナは悟って諦めて、自分なりの夫婦の形を見つけた。 その姿はかつて視野狭窄的に皇太子を愛していたころより余程生きやすそうにしていた。 ただジョージアナの友人を除く他キャラは、この先ずっとジョージアナにしでかしたことを背負って生きていく。 この先もう二度と彼女が同じ思いを返してくれないことを思い知らされながら。 特に皇太子はある意味地獄の日々かもしれない。 愛している人に愛を返されない日々を、それでも愛する人のそばで送らなければいけないのだから。 同情は、できないけれども。 自分で蒔いた種だから。
投稿日:2023.05.14
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