【感想】親愛なるレニー レナード・バーンスタインと戦後日本の物語

吉原真里 / アルテスパブリッシング
(16件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
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ブクログレビュー

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  • NORIS

    NORIS

    2023.11.24市立図書館
    1年前にでてからいろいろと評判を聞いているうちに第80回日本エッセイスト・クラブ賞、第11回河合隼雄物語賞受賞したので、期待も高まる一方のところでようやく順番が回ってきた。

    2019年にまず英国で英語版が出版され、それに増補修正を加えつつ著者自ら日本語で書き直したもの。
    アメリカ議会図書館に所蔵されている膨大なレナード・バーンスタイン・コレクションのかなりの部分を占める個人書簡に目をつけ、著名な音楽関係者の名に混じって目に入る二人の日本人に注目して、バーンスタインと出会った二人とバーンスタイン本人の人生と人間関係をたどる物語。音楽の弟子としてよく知られる小澤征爾や大植英次らの存在にくわえて、このような人々との縁にめぐまれてこそ(また、音楽業界のさまざまな事情や歴史のめぐりあわせも相まって)、バーンスタインは日本との関係を晩年の最後の最後まで大切にすることになったのだなと納得できる本だった。

    「ベートーヴェン捏造」を読んだばかりでもあり、著名人が物持ちがよく一次資料が十分残されているとこういう研究も可能なのだなと改めて興味深く読んだ。今回のこの本は、当事者のお二人がご存命で、著者自身がそれぞれの方と信頼関係を築いて理解と協力を得ての出版というのもすごいと思った(橋本氏が元は匿名かつ死後の出版を望まれたというのも当然な内容なわけだし)。きっかけは著者であっても、この本は天野和子と橋本邦彦という二人の献身的なバーンスタインサポーターの変わらぬ思いの結晶にほかならないと思う。
    (しかし、ここで改めて「ベートーヴェン捏造」を思えば、いずれまた別の立場からの異論が出てくる可能性も大いにあるんだけど…)

    インターネットで最新情報でも人とのつながりでもどんどん手に入るいまと違って、一通の手紙が時間をかけてとどき、その返信がまた時間をかけてとどき、少しずつ関係が築かれていく。相手を思って心づくしで書き投函された手紙、返事を待つのももどかしく次々書かれた手紙…、遠くにある人をおもいやる想像力、インターネットでどんどん反応が戻ってくる現代では失われかけているなと改めて思う。

    それにしても…1985年夏の広島での平和コンサートからイスラエル・フィルとの日本ツアーのくだりを読んでいると、いやでも現実とひきくらべてしまう。いま、イスラエルがパレスチナにしている攻撃、それにともなうイスラエル・フィルの来日中止…反核や平和のために活動し続けたバーンスタインが存命だったら、イスラエルに対して米国に対してなんと言っただろうか?
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    投稿日:2023.11.24

  • gakudaiprof

    gakudaiprof

    指揮者のバーンスタインについて、日本の2名のファンの手紙をもとにして描いたものである。日本のオーケストラの状況について説明されているし、協賛した様々なテレビ局や新聞社等のマスコミも描かれているので、マスコミが自画自賛して紹介するのも理解できる。
     日本のオーケストラについて卒論で扱う場合には読んでおくといいと思われる。
     原本は異文化交流分野の修士論文か博士論文であろうと思われるが著者は書いていないので不明。
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    投稿日:2023.10.01

  • 心配症子

    心配症子

    恥ずかしながら、レナード・バーンスタインをこの本で知った。

    音楽や芸術、スポーツなど、政治とは関係ない、関係なく純粋に追求したいと思っても、そうはいかないんだなあという印象。
    バーンスタインは自ら上手く利用しているところもあるように見受けられたけど、この時代のユダヤ系アメリカ人、そしてバイセクシャルの彼には、大変なことも多かっただろうなと思う。

    そんな彼を理解し、愛して、支えた人が日本にいたという…そのレベルの人がいたことも驚きだけど、バーンスタインが世界中にそんな人がいるであろう中で、何十年も彼らと交流を温めて続けていたことに衝撃を受けた。
    この人はなんという包容力、人を愛する(信じるなのか?)力を持っていたんだろう。そういうところが、世界的に評価される彼の音楽に滲み出ているのかも…
    音楽には疎いけど、彼の音楽を聴いてみたくなった。

    私たちの世代でクラシック愛好家は親が好きでないとなかなかいないだろうと思うのだけど(育ちが悪いからかもしれない)、当時はそんなに人気だったのか…。周りに話せる相手が思いつかないけど、誰かに話したくなる本だった。

    ※でも、あとがきで橋本さんが書かないで欲しいとあるように、こんなにプライベートなものを世界中に出版してしまうのもどうかなと…ちょっと思いました…
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    投稿日:2023.09.24

  • けいこん

    けいこん

    バーンスタインのことは殆ど知らずに読み始めた。
    音楽と人を全力で愛したバーンスタイン。核廃絶を強く臨んで、そのための活動もしていた。歌舞伎、能に深く惹かれていたバーンスタイン。
    妻を深く愛し、同時に同性の男性も愛した人。とても人間的な人だったのだと知った。
    バーンスタインが若き音楽家たちに投げかけた言葉も深く心にささった
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    投稿日:2023.08.29

  • madameemu

    madameemu

    月イチの読書会の課題テキストだったので読んだ。

    バーンスタインと言うと、ウエストサイドと、キャンディードと、指揮者という事位しか知らなかったので新鮮だった。

    昔観た「踊る大紐育」と言う映画の音楽がバーンスタインだったと言うのにも驚いた(ミュージカル名は On The Town)。あと、ウエストサイドを自ら振ったレコードは晩年になるまで無かったこと、又そのボーカルはキリ・テ・カナワ、ホセ・カレーラスなどオペラ歌手を起用した事も。

    日本初来日の演目が凄い現代音楽だったというのにもびっくりした。

    色々知らなかった事が知れた事は良かったのだが、文章としては、ちょっと素直に入り込めなかった所があったのは、元々学術書として書かれたからかもしれない。個人的に知りたい事が、あまり書かれて居なかったのでイマイチ消化不良。

    まず、洋書として出版され、その後に著者本人が改めて日本語で加筆訂正した物だそうだ。

    もっとバーンスタインについて知りたいと思った。⁡⁡
    ⁡⁡
    ⁡この後公開されるブラッドリー・クーパーが演じる映画も楽しみ。
    ⁡⁡
    ⁡※ ブクログに載せた文章と同様です。
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    投稿日:2023.08.27

  • miyuki

    miyuki

    アメリカ議会図書館にあるレナード・バーンスタイン・コレクションに収められている二人の日本人からの長年にわたる多数の書簡をもとに、レナード・バーンスタインと日本との関わり、戦後日本のクラシック音楽について、アメリカの文化に関する世界政策、そしてレナード・バーンスタインの平和、反核に関する強い行動力、若い音楽家を育てる教育者の姿勢を著したノンフィクション。
    二人の日本人と個人的に長年に渡り、親交を続けていたこと、この二人の書簡のとても文学的で読む者の心に響く文章に感動すると共に、現代のメール等では著しきれない手紙の気遣い(便箋やカードを選ぶこと等)に心動かされた。
    また、アメリカの図書館ではこのように細部にわたるバーンスタインのコレクションを収蔵していることにも驚かされた。
    バーンスタインの生涯、また日本人二人が関わる日本とバーンスタインとの交流に感動した。
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    投稿日:2023.08.24

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