【感想】いとをかしき20世紀美術

筧菜奈子 / 亜紀書房
(5件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • kentoriko

    kentoriko

    よくわからない現代芸術は、その背景を知って観ると面白いのかも。
    マルセル・デュシャンは、日本の千利休が魚籠を花瓶に見立てたことに通じる。
    ワリシー・カンディンスキーは、抽象画の色や形に意味があり、仙厓の◯△⬜︎図に通じる。
    アルフレッド・バー・Jr.が提唱した20世紀初頭のアートの系譜図では、セザンヌから始まるゴーギャンの総合主義、スーラの新印象派がフォーヴィズムとキュビスムに発展し、結果、幾何学的抽象と、シュルレアリスムから非幾何学的抽象の系統に繋がっている。
    アンディ・ウォーホールのポップアートは、尾形光琳の燕子花図、紅白梅図や、建仁寺の坐禅、海北友松の雲龍図に繋がる。
    ソル・ルウィットのコンセプトアートは方丈庭園の◯△⬜︎乃庭に繋がる。
    ロサンゼルス・カウンティ美術館に設置されたマイケル・ハイザーの「浮遊する塊」は、五山送り火に通じる。
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    投稿日:2024.04.24

  • raztechtech

    raztechtech

    読みやすく、わかりやすい。
    美術に縁遠いが、興味があるという人におすすめ。
    特に、美術に対して歴史やロジックによる裏付けが欲しい、という人にいいと思う。
    ぼんやりと絵を眺めるのも悪くないが、こういった本を読んでからだとより楽しめるかもしれない。

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    投稿日:2024.02.03

  • kishimen758

    kishimen758

    このレビューはネタバレを含みます

    豊田市美術館にて購入した本著は、同美術館が展覧会を開催したピート・モンドリアン、ヨーゼフ・ボイス等を含むいわゆる現代美術を、「20世紀美術」として、かいつまんだ内容で漫画で解説する書籍。
    ちょうど私のような、現代美術の展覧会へ行くことは行くが、今一つよくわからない。それが気に入らない「ちょっと勉強してもいい初心者」にわかりやすい内容で大変良かった。
    著者、筧菜奈子が絵と文の両方を手掛ける点が大変な労作、意欲作に思う。多色刷りであったり、紙を数種類使い分けていたり、モノとしての書籍の質感へのこだわりも感じる。

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    投稿日:2023.05.25

  • かとのひも

    かとのひも

    このレビューはネタバレを含みます

    ○現代アートは遠く感じていたが、よくまわりを見まわしてみると影響があちらこちらで見られることに気付いた
    ○20世紀のアートは見るだけでなく、鑑賞者も考え作品と対話することで完成するのかも
    ○「知る」こと、「学ぶ」ことの大切さ
     “わからない”で思考停止しない
    ○自動筆記!!!!!
    ○本書を入門に、ブックガイドの資料をたどってみたい

    ・5人の美大生たちが、20世紀の作家や作品について探究するアートコミック


    ◎はじめに
    AI の創作物に不安を覚える声
    同じ問題が20世紀初めにもあった
    手仕事が機械に、肖像画や風景画は写真に、工芸や建築も大量生産品に
    ですが、20世紀のアーティストたちは、時代の変化を受け入れながら新しいアートを創り上げていった
    そして、日本文化と現代アートの親和性を探る

    1:マルセル・デュシャン
     _アートの定義をひっくり返せ
     1913 「レディ・メイド」シリーズ
      工業製品をそのまま、あるいは少し手を加えて作品にした
     《泉》…男性用便器←物議をかもす
         見立て?コンセプト重視?
         芸術の定義を拡張した?
     「機械は絵や立体を作ることができても、「何が芸術か」を考えることはできない」
     デシャンは新しい芸術観で豊かな混沌へと導いた

    ※もっと知りたいマルセル・デュシャン
    ・「ローズ・セラヴィ」女性人格
    ・20年間、秘密裏に制作された遺作

    2:抽象絵画Ⅰ
     _ワシリー・カンディンスキー_色彩と形が音楽を奏でる
     西欧で抽象的な絵画や立体が作られるのは20世紀に入ってから
     カンディンスキー
     《黒の関係性》
     《コンポジションⅦ》
      音楽用語をタイトルに
      絵を音楽のようにしたかった
     『点と線から面へ』
      “形”についての考察
      点、線、角、曲線、面
     『抽象芸術論:芸術における精神的なもの』
      色彩理論のはしり
     ヨハネス・イッテン『色彩論』
     ブルーノ・ムナーリ『正方形』『三角形』『円形』
     抽象とは…
     “物からある特徴を抽出する”

    ※もっと知りたい初期抽象絵画
    ・マレーヴィチのシュプレマティスム
    ・モンドリアンの新造形主義

     
    3:シュルレアリスム
     _見慣れた現実を一皮むけば
     アンドレ・ブルトン『シュルレアリスム宣言:溶ける魚』
     第一次世界大戦後
      人間の合理的な思考に疑念を抱いた芸術家たちは、夢や偶然といった非合理な現象からインスピレーションを得ようとした
     超現実…現実と地続きにある
     「甘美な死体」
     「自動筆記」
     マッソン「瞬間の絵画」
     ・コラージュ
     エルンスト『百頭女』
     ・フロッタージュ
     ・グラッタージュ
     サルバドール・ダリ
     ルネ・マグリット

    ※自動筆記もコラージュも自分では意図していなかった言葉やイメージが入り込んでくる


     「きっぱりいいきろう、不可思議はつねに美しい、どのような不可思議も美しい、それどころか不可思議のほかに美しいものはない。」ブルトン

    ※もっと知りたいシュルレアリスム
    ・シュルレアリスムのその後の展開
    ・その他の主要なシュルレアリストたち
     写真家マン・レイ
     彫刻家アルベルト・ジャコメッティ
     マルセル・デュシャン
     …参加はしていないが、会場デザインを手伝った

    4:抽象絵画Ⅱ
     _ジャクソン・ポロック_アメリカン・アートの荒野を切りひらく
    「非幾何学的抽象」
     第2次世界大戦前後のアメリカの画家たちが牽引
    「抽象表現主義」 
    「メキシコ壁画運動」
     ジャクソン・ポロック
     ・大型ドリッピンク絵画
      「オールオーヴァー絵画」
      …絵の中にいる時、私は自分が何をしているのかを認識していない。「しっくりくる」ような段階を経て、初めて自分のしたことがわかってくる。_ジャクソン・ポロック
      「平面的な絵画」を作り出す
      写真の登場で、画家たちは写実を捨てて絵画にしかできない新しい表現をもとめた。そのうちの1つ。
      「アクション・ペインティング」
     日本の書芸術の影響

    ※もっと知りたい抽象表現主義
    ・抽象表現主義をバックアップした批評家たち
     クレメント・グリーンバーグ
     ハロルド・ローゼンバーグ
    ・抽象表現主義のその後の影響
     ルイス「カラー・フィールド・ペインティング」
     フランク・ステラ「ブラック・ペインティング」

    5:ポップ・アート
     _アンディ・ウォーホル_華やかでも、軽くて、シリアスな
     「ネオ・ダダ」の作家たち
      …ポップ・アートに影響を与えた
       抽象主義の難解さを嫌い、デュシャンの流れをつぎ、既製品を使用した作品を発表
     ロバート・ラウシェンバーグ  
      「コンバイン・ペインティング」
       立体物と絵を合体させる
       ゴミに近い物を作品のイメージに
     ジャスパー・ジョーンズ

     「ポップ・アート」
     アンディ・ウォーホル
      ネオ・ダダの流れを引き継ぐ
      資本主義や情報化社会の中でよく目にするイメージを作品に使用
      作者の個性や技術力を否定
      オリジナルは1つという芸術の価値を変える
       塗り絵、シルクスクリーンなど
      アトリエ「ファクトリー」
      「キャンベル・スープ」
       アメリカは金持ちも貧乏人も同じものを消費する
      「アンディ・ウォーホルのすべてについて知りたければ、表面だけを見ればいい。僕の絵画や映画、そして僕自身の表面をね。そこに僕がいる。背後には何もない」ウォーホル
      …自身を表面だけと断言したが、「死」というテーマが作品の中に内包されている
      「マリリン・モンロー」
      「死と惨禍」シリーズ
      …人を見せ物にする大衆文化の残酷さ

    ※アートの価値…お金に置き換えられる
     芸術の需要層が大衆に…江戸の琳派 
      
     ロイ・リキテンスタイン
     コミックの一コマを拡大し絵画化し、ドットや鮮やかな色彩を持ち込んだ
     クレス・オルデンバーグ
     アメリカの国民食を大型の立体作品に仕立てた

    ※もっと知りたいポップ・アート
    ・その他のウォーホル作品
     立体作品《ブリロ・ボックス》
     「花」シリーズ…著作権侵害の作品
     映画《眠り》
    ・ポップ・アートのはじまりとその後の展開
     1950イギリス「ブリティッシュ・ポップ」
     1960旺盛
     1980「ネオ・ポップ」
      ジェフ・クーンズ
      村上隆

    6:コンセプチュアル・アート
     _ヨーゼフ・ボイス_アイディアはアートを超越する
     1962~72「コンセプチュアル・アート」
     ソル・ウィット
     「コンセプチュアル・アートにおいては、コンセプトのアイデアが作品の最も重要な側面である。作家がコンセプチュアルな芸術形式を用いる場合、すべての計画と決定はあらかじめ行われていて、実際の制作は取るに足らない行為であることを意味する。アイデアは芸術を作る機械となるのだ。」
     《ウォール・ドローイング#1136》
     コンセプトとシステムさえ作ってしまえば、作者不在でも作品は生まれる
     ジョセフ・コスース
     「椅子に対する私たちの認識の構造」

    ・コンセプチュアル・アートは建仁寺の○△⬜︎乃庭と通じているかも?

     ヨーゼフ・ボイス
     《脂肪の椅子》
     《グランドピアノのための等質湿潤》
     第二次世界大戦中、空軍兵として従軍中、クリミア半島に墜落、遊牧民に命を助けられた経験
     ←アートに生きている思考と死んでいる思考
      対立構造
      「社会」というアートのために選挙に立候補

    ・南泉和尚の禅問答に通じる?

    ※もっと知りたいコンセプチュアル・アート
    ・アートに変革を!多種多様なコンセプチュアル・アート
     …鑑賞者の思考をいかに変革させるか
    ・ボイスの芸術による社会変革
     …人は誰もが芸術家
      「アクション」人々と意見を交わすことを大切にした

    7:ランド・アート/環境アート
     _広大な自然体・環境をキャンバスに
     1960年代後半、アメリカの作家たちがはじめた
     自然や環境を使って造形物を作ったり、パフォーマンスを行う
     マイケル・ハイザー
     《亀裂1 ナイン・ネヴァダ・ディプレッションズ》
     《浮遊する塊》
     ウォルター・デ・マリア
     《ライトニング・フィールド》
     ロバート・スミッソン
     《スパイラル・ジェティ》
     「ノン_サイト」シリーズ
      特定の場所取りから持ってきた石や砂を美術館やギャラリーに置いた作品
     「サイト」シリーズ
      荒らされて放置された環境に介入
      自然の力により、作品の形が変わったり、朽ちて無くなる
      《グルー・ポア》
      《ブロークン:サークル-スパイラル・ヒル》
    ・「ランド・アート(アース・アート)」
     環境保護運動家と産業資本主義家の調停役となりうる_スミッソン
     ランド・アートは環境破壊と批判されることもあるが、スミッソンの場合は環境はすでに破壊されている
     クリスト&ジャンヌ=クロード
     「環境アート」自然や建造物を布で包んだり覆ったりする
     《ヴァレー・カーテン》
     《包まれた海岸》
     《包まれたポン・ヌフ》
     《傘》
     《包まれた島》
     「一番難しいのは許可を得ることです」ジャンヌ

    ・五山の送り火と通じている?

    ※もっと知りたいランド・アート/環境アート
    ・宇宙からの光を作品に ジェームズ・タレル
     光そのものを素材とする
     《ダートゥ》
     《ローデン・クレーター》
     《ブルー・プラネット・スカイ》
    ・人間と大地/環境との関わりを問う作品たち
     人は死んだあとも大地/環境と何らかの関係を結ばざるを得ない
     作家たちは様々な形で自らと大地/環境との関係を探ろうとする
     アンディー・ゴールズワージー
     《アイス・ピース》
     蔡國強
     《キノコ雲のある世紀》
     アナ・メンディエタ
     《無題「シルエッタ」シリーズより》

    ◎おわりに
    本書では以下のように言葉を使い分けました
    「美術」
     絵画や彫刻、工芸など視覚的な作品をさししめす。美しい作品が多いでしょう。
    「芸術」
     美術だけでなく、音楽や建築も服務員。人間の文化的所産を総称する。
    「アート」
     芸術のように広い範囲のサクヒンヲ指しますが、美しさよりも新しさを求める作品を示す

    20世紀の作品は聴覚・触覚・嗅覚・味覚といった五感を総動員するものもある。
    「美術」だけではおさまらず、「芸術」「アート」という言葉がふさわしく思う

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    投稿日:2023.04.23

  • あぱっち

    あぱっち

    現代アートの種別と代表的な作品について楽しく学べる。一見誰にでもできそうな理解し難い作品に潜む哲学的側面を垣間見れる。本書の紙の質感が章によって異なるのもこだわりを感じた。

    投稿日:2023.01.12

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