0
山口輝臣, 福家崇洋 / ちくま新書 (1件のレビュー)
レビューを書く
総合評価:
"powered by"
重度積読症
この昭和戦前期を「国体」の再構築と「文明化」の超克が目指された時代として意義付け、それに応じたテーマで各講が取り上げられる。一つ一つがかなりの歴史的背景を持ったものであるので、項目によっては消化不良…を感じるものもあるが、最新の研究動向を知ることができて大変勉強になる。興味を持ったものについては、各講末に付されている<さらに詳しく知るための参考文献>によって、更に深堀りすることもできるだろう。 以下、個人的に特に興味を持ったもの 〇第3講「講座派と労農派」 講座派と労農派の対立点などについて一応の知識は持っていたが、両者の相違点がよりクリアに理解できた、①日本資本主義の発展の起点となった明治維新による諸変革-特に地租改正ーをどう位置付けるのか、②現状の日本で政治的・経済的権力を掌握しているのは誰であるのか、といった認識の違い、ひいては来るべき日本革命の性格といった点など。そして実際の日本共産党の行動についてコミンテルンの32年テーゼの持った意味などが良く分かった。 *『日本主義発達史講座』の復刻版も持っているのだが、読める日は来るだろうか? 〇第7講 「農本主義の時代」 農本主義というと、権藤成卿や橘孝三郎を連想するが、農業経済学の系譜もあり、小農を基盤にした農村改造を目指すもの、満洲移民政策につながるもの、他のアジア民族に対する日本の優秀性を唱えるようなものなどいろいろあって、その中には後の総力戦体制につながるものがあったことを忘れてはならないとする。 〇第13講 「国家総動員論」 今回、本書の中で一番蒙を啓かれたのが本講。これまで国家総動員は、1930年代日本の軍国主義や全体主義的傾向を示す代表的アイディアとして論じられてきたと言う(自分もそう学んだように思う)。しかし、総力戦を戦い抜くに適しているのは、国民の自発的参加と挙国的団結を可能にする民主主義であるとの考え方もある。日本でもその歴史を振り返れば、国家総動員はむしろ軍部の独走を抑制する役割を期待され登場し、当初国家総動員論をリードしたのは実業家や政治家であり、彼らは、国力に見合った計画、軍需と民需のバランスや国民生活の確保、産業による自主的統制などを理想とした、しかし、日中戦争の勃発は、その理想を裏切ることとなった、というもの。続きを読む
投稿日:2023.09.30
ポイントが追加されました。ポイント明細ページからご確認いただけます。
クーポンコードの形式が正しくありません。半角英数12桁で入力してください。
エラー(エラーコード: )
本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック
スマートフォンの場合
パソコンの場合
このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?
ご協力ありがとうございました 参考にさせていただきます。
レビューを削除してもよろしいですか? 削除すると元に戻すことはできません。