【感想】闘う図書館 ──アメリカのライブラリアンシップ

豊田恭子 / 筑摩選書
(10件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • NFCC図書館

    NFCC図書館

    序章 図書館がつくる民主主義
    第1章 地域変革の触媒としての図書館
    第2章 博物館・図書館サービス機構の誕生
    第3章 インターネット時代の図書館
    第4章 博物館・図書館サービス機構の発展
    第5章 国と地方をつなぐ州図書館局
    第6章 トランプvsアメリカ図書館
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    投稿日:2024.05.13

  • はな

    はな

    格差拡大という社会問題に直面している現代において、図書館の持つ役割は多様化してきている。アメリカの図書館が理想を求めるなか、どのような障害と闘い、どのように現実と折り合いをつけてきたかが描かれている。
    本を提供するという図書館の概念にとらわれず、「場」としての図書館の役割が重要性であることが、具体的事例を添えて挙げられている。伝統的な読書活動や情報提供サービスの枠を超えて、地域や社会の問題に取り組もうとする図書館を支える思想と仕組み、これらがどのように作り上げられたのかがまとめられている。
    特に第5章のアメリカ図書館の辿ってきた歴史を見ると、図書館のあり方がよく分かる。図書館が地域に必要な施設であると考えらるようになるのに、ライブラリアンが従来の役割を越えて、様々な組織の接着点として活躍してきたことが大きいと感じた。過渡期において、役割が増大するにつれ、新たな専門性を身につけなければならないライブラリアンのストレスは大変なものであったであろう。
    経済的、文化的そして政治的な社会の分断が進行してきている現状に、今後図書館がどのような役割を果たすのか注視していきたい。
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    投稿日:2023.03.16

  • ばななサンド

    ばななサンド

    アメリカの図書館活動を日本に紹介し続けてきた豊田氏の集大成。
    アメリカの図書館界は恵まれているなと思っていたが、それがライブラリアンたちの不断の努力によって勝ち取られていたことを知り、これまでの考えを改めた。あきらめなければ、夢は叶う。続きを読む

    投稿日:2023.02.07

  • kun92

    kun92

    アメリカの図書館の、矜持と、使命感と、闘い。そしてその結果。
    もちろん、社会構造が全く違うので簡単に比較はできないが、地域情報のインフラたるべく、明確に目標を持ち、政治に働きかけ、結果を出してきた事実は素晴らしい。

    とにかくあたしゃあ、図書館に足を向けて眠れません。
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    投稿日:2023.01.23

  • tanalog

    tanalog

    分断されるコミュニティの結節点となることで、その存在意義と機能を発揮していこうとする米国の公立図書館と協会。

    日本でのコミュニティの結節点となると、公民館も含まれるだろうか。

    しかし発信力となるとどうだろう。公民館や図書館は、市民にリーチできているだろうか。あるいは、公民館や図書館を市民に結びつけるとともに、福祉サービスを含めて、それぞれの市民に必要なサービスを提示し、容易に市民からアクセスさせる機能を発揮する行政部門はどこだろうか。闇バイトに手を伸ばす前に、コミュニティに支援を求めればそれが得られる体制があるだろうか。続きを読む

    投稿日:2023.01.23

  • kimisteva

    kimisteva

    2019-2020年にかけて米国の図書館を舞台にする2つの映画――『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』と『パブリック 図書館の奇跡』――が公開された。本書を読んでまず感じたことは、読者がこの2つのどちらの図書館像をイメージしながら読むかによって、読者へのインパクトが異なるものになるのではないか、ということだった。
    本書の「おわりに」で、著者は、2019年に公開された『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』への反響に触れ「…『なんとも羨ましい限り』という感想に終わりがちなことには、残念な思いが残った」(p.241)と述べ、そのような反応のありかたへのある種の「抗い」として本書が記されたと述べている。しかし、それでもなお「なんとも羨ましい限り」という感想を持つ人たちには、その憧憬の念がそのまま残ってしまうのではないかと思ったのも事実だ。もちろん、本書はこの映画に「なんとも羨ましい限り」と思う人たちにその裏側にあるライブラリアンたちの志の高さや地道な闘いや運動の実態を突き付けるものではある。が、一方でそのようなライブラリアンのありかた含めて、自分とは遠い存在であるかのように感じる人々は存在し続けるのではないか、と思わずにいられない。

    一方、『パブリック 図書館の奇跡』で、図書館内のインターネットをフル活用してアダルトサイトを見まくるホームレスのおっちゃんたちを、それでも守ろうとするライブラリアンを思い描きながら、本書を読んでみると、ここで描き出されようとしている「闘い」が、会議室に閉じられた「きれいごと」でないことがありありと伝わってくる。事実、第6章「トランプVSアメリカ図書館」で報告されるスリリングとすらいえるライブラリアンたちの直接民主主義的な闘いっぷり(ロビイングはもちろんのこと、SNSを使った政治的メッセージの発信や、地元議員へのアプローチなど)は、路上デモへの参加すら二の足を踏んでしまう人々にとっては、”過剰に”政治的なものに映るのではないか、とすら思う。「なんとも羨ましい」どころか「そこまでやるの!?」という感じなのではないか。

    もちろんこのどちらもが、民主主義的価値観が徹底的に浸透し、民主主義であることが良しとされる米国の風土や制度に支えられていることは確かだ。そうであるとすれば「なんとも羨ましい」部分も「そこまでやるの!?」の部分も含めて、現代の日本の(歴史的に形成された)社会・文化、そして制度のなかで「ライブラリアンシップ」なるものをどのように位置づけ、それを守り、育む仕組みをいかに構築するのかを考えていく必要があるだろう。
    本書に書かれている、米国のライブラリアンたちの具体的な政治的な闘いかた、その戦略や戦術のありかたは、現代の日本における戦略・戦術のありかたを考えていくための礎となるだろう。
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    投稿日:2023.01.13

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