【感想】帝国日本のプロパガンダ 「戦争熱」を煽った宣伝と報道

貴志俊彦 / 中公新書
(10件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • Tomoki

    Tomoki

    SNSの普及によって、フェイクニュースが広まりやすい時代になったと言われる。だが、本書を読めばそれが現代特有の事象ではないことに気づかされる。メディアは違えど、各国は自国民が熱狂するような煽りを用いてきた。不都合な事実は伝えないというのは、今に始まったことではない。続きを読む

    投稿日:2022.11.21

  • tosyokan175

    tosyokan175

    著者もあとがきに書いていますが2022年ロシア軍のウクライナ侵攻によってプロパガンダという言葉は現在進行形の意味を持つキーワードになっています。この新書は主に1894年に始まった日清戦争から1945年の太平洋戦争敗戦を経て占領統治が終わるまでの「帝国日本」のプロパガンダ(著者は政治宣伝と戦争報道をまとめてそう呼んでいます。)を手際よくまとめています。日清戦争期を版画報道の流行、日露戦争期を「戦勝神話」の流布、第一次世界大戦期を日独戦争をめぐる報道選択、中国、米国の反日運動では報道と政治の関係、台湾霧社事件と満州事変では新聞社と軍の接近、日中戦争期は国家プロパガンダの絶頂期、アジア太平洋戦争期をビジュアル報道の衰退、敗戦直後うぃ占領統治のためのプロパガンダ…章がほぼディケイド毎になっていて戦争は武器の進化だけでなくコミュニケーションのイノベーションを次々生み出していることが多くの図版によって示されていきます。近代国家はナショナリズムをエネルギーに成立していくのだ、と考えるとプロパガンダの主役は、そう思わせたい国家だけでなく、そう思いたい国民、そしてその情報で利益を上げたいメディアの三位一体の行為である、と思いました。特に1931年10月1日の社説からの朝日新聞が行った軍縮キャンペーンから関東軍の意に沿う方針への大転換が朝日不買運動から始まったことには強いインパクトを感じました。昨年読んだ『言論統制というビジネス: 新聞社史から消された「戦争」』と相まってジャーナリズム、宣伝、プロパガンダ、広告、広報などメディアを巡る言葉が頭の中でグルグルしています。そういえば今週は新聞週間。新聞の凋落は戦争との関係の清算が終わっていないところから始まるのか?みたいな気にもなってしまいました。続きを読む

    投稿日:2022.10.19

  • kiwi

    kiwi

    ウクライナの戦争は、人の国に攻め込んだロシアが悪い、とぼくは思っている。ほかに考えようがない。が、ロシア人は(みんなじゃないのだろうが)そうは考えていない。80年前に中国に攻めこんだ大日本帝国の臣民も(みんなじゃないのだろうが)自分が悪いとは考えていなかった。

    なぜだろう?

    プロパガンダのせいでは?とぼくは思ったのだ。今のロシアでは、80年前の大日本帝国では、どんなプロパガンダが行われているのだろう? 人々は何を、なぜ、信じていたのだろう?

    そういうことが知りたくて本書を読んでみたのだが、うーん、だいぶ違う。戦意高揚のために錦絵が、ついで写真が使われた、とか、どういう組織がどのようにプロパガンダ、または情報統制に取り組んだか(それは敗戦後の占領時代にも続いた)といった教科書的な歴史や制度の話が中心だ。それはそれで興味深くはあったが、ぼくが読みたいと思っていたプロパガンダの中身についてはほとんど触れていない。扱っている期間が半世紀近くと長く、太平洋戦争のあたりではそういう話も出てくるか、と期待しつつ読み進んだが、結局あっさり終わってしまった。
    続きを読む

    投稿日:2022.10.12

  • gakudaiprof

    gakudaiprof

    主要な内容は日清戦争である。第二次世界大戦の中では1/4しか書かれずしかも歴史的事実が多く、プロパガンダはほとんど言及されていない。一方、明治の日清戦争が最も詳細に書かれている。しかし、プロパガンダよりも歴史的事実の説明の方が多い。続きを読む

    投稿日:2022.09.03

  • 探耽(たんたん)

    探耽(たんたん)

    日清戦争からアジア太平洋戦争敗戦まで、当時の日本で飛び交った政治宣伝を研究している一冊です。
    今の尚残る日本人同士の同調圧力ですが、これをプロパガンダを用いて方向性を共有した場合の力は凄まじいものだと感じました。
    察することを美徳とする民族であるが故に精神的に一丸となることも可能であり、それにより島国でも大国と戦えるのですね。
    しかしいつの世でも同じように宣伝は針小棒大や竜頭蛇尾であったり、更には虚偽であったりするものです。
    嘘も結果として真実となることはありますが、行き着く先には制御不能の国が拵えられるのです。
    言葉や情報には力が宿るもの、集団でも個人でも気を付けて使いたいものですね。
    続きを読む

    投稿日:2022.08.07

  • モラリス

    モラリス

    朝日新聞202279掲載 評者:田中大喜(国立歴史民俗博物館准教授)
    毎日新聞2022716掲載
    日経新聞2022723掲載 評者:一ノ瀬俊也(埼玉大学教授)
    朝日新聞2022730掲載 評者:阿古智子(東京大学教授,現代中国研究)
    東洋経済202286掲載 
    続きを読む

    投稿日:2022.08.03

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