【感想】図書館の日本文化史

高山正也 / ちくま新書
(3件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 探耽(たんたん)

    探耽(たんたん)

    古代の書紀文化発生から現代までの図書館へ至る道と現在の課題が考察されている一冊。
    日本最古の図書館を芸亭とし、朝廷や武家の文庫、江戸時代の教育、明治・大正、昭和・平成、そして令和へ続きます。
    歴史としての変遷も興味深いのですが、本書の特徴は現在の課題である業務委託と指定管理者の制度に全面的な批判をしていない点にあります。
    司書は専門職なので異動ありきの公務員では成長がなく、民間であればその問題に対処できることは利点として認められるべきと私も考えています。
    文化隆盛や研究促進に必ず図書館と司書は役立つものなので、未来では更に発展していることを願います。
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    投稿日:2023.10.23

  • テクノグリーン

    テクノグリーン

    高山正也著『図書館の日本文化史(ちくま新書)』(筑摩書房)
    2022.9発行

    2022.12.22読了
     筆者の高山正也氏は、慶應義塾大学文学部図書館・情学科教授や国立公文書館長などを歴任した図書館情報学の巨人である。図書・図書館史に関する本が手頃な新書サイズで入手できると思い、期待を込めて読み進めた。しかし、思わぬ裏切りに遭ってしまった。いや、「思わぬ」というのは余計な修飾語だったかもしれない。訂正すると、すでに第1章第1節の時点から違和感はあった。何しろ、漢字の伝来に関する歴史の記述の中で、「新しい歴史教科書をつくる会」の『国民の歴史』が引用されていたのだから(巻末の主要参考文献には百田尚樹著『 日本国紀』の記述もある)。

     とにかく悪態のオンパレードである。特に後半は読むに堪えない。公立図書館を口汚く罵っており、批評や批判のレベルを超えている。

     思うに、筆者の問題意識は①図書館法の不備②図書館の現場労働者の意識の低さ③現場管理者の公務員としての責任感の欠如なのだろう。それらに対する解決策として、筆者は、指定管理者制度などによる民間活力の利用をしきりに説いている。民間に任せたら万事問題が一挙に解決すると言わんばかりの勢いであるが、調べてみると、何のことはない、図書館流通センターの顧問を務めているというのだから、がっかりである。

     極めつけは筆者が理想とする図書館像である。曰く、

    「図書館を書籍の公共圏( 空間)として捉え、人々がその空間で自己の帰属する文明・文化に親しみ、アイデンティティーを確立し、多様な情報に触れることを理想とする」

     しかし、何を、どのように学ぶのかは市民自身の手に委ねられているはずだ。特定の価値観や特定の市民像を称揚し、それを目指して図書館サービスを構築することは、反体制思想を排除し正統思想を注入しようとした戦前の図書館に通じ、同意できない。

     また、理想の図書館像を述べた舌の根が乾かぬうちに、筆者の理想とは対極的なTSUTAYA図書館を絶賛していて、あべこべな印象を与える。これでは、せっかくの理想すらおべんちゃらに聞こえてしまう。

     さらに筆者は、

    「インフォームド・シチズンを育て、リベラル・デモクラシーを実現するための図書館の司書はプロフェッショナルでなければならない」

    とも述べている。インフォームド・シチズンとは「健全な教育を受けた主権者」の訳で、図書館は、国民を健全な教育を受けた主権者にするための社会教育機関でなければならないという趣旨である。しかし、筆者は、報道機関が偏向報道やフェイクニュースをたれ流しているという文脈の中で、だから、図書館が正しい真実・事実を提供しなければならないと主張しており、認知が歪んでいると指摘せざるを得ない。本書の歴史認識の方がよほど偏向しているように思う。

     そのほかまだ指摘足りない点はあるものの、以下に筆者の悪罵をいくつか引用して筆を置くことにする。

     「昭和三〇(一九五五)年に若手図書館員を中心として結成された図書館問題研究会(図問研)は『中小レポート』について、初めて図書館と市民の直結を狙い、「利用のための図書館」というイメージ形成に大きく役立ったと高く評価しているが、これは無料貸本サービスという単純作業と無知かつ利己的な利用者の結託による、高度かつ良質な公共図書館サービス崩壊への序曲であり、書籍の公共圏を広く国民に提供するという公共図書館の理念のもとでの図書館界の努力を無にする動きでもあった」

    「日本は太平洋戦争後に初めて民主主義体制になったのではない」

    「中小規模の図書館の職員が自助努力を重ねて図書館を維持しても、中央図書館制度が実現すれば天下りの人間がやってきて、自分たちのように丁稚奉公的な単純な業務からたたき上げ的に働いている者の将来がなくなる。彼らはそのことに気づくと自助努力を放棄し、安直な単純業務に終始し罷業・怠業を繰り返すようになった。天下りがなければ、単純な業務に就いていても公務員として年功序列の処遇を享受でき、将来は左うちわで安泰なのである。こうして図書館問題研究会(図問研)の基本的な態度は「中央図書館制度反対!」「ナショナル・プラン反対!」一色となる」

    「どうすれば蔵書の如何にかかわらずに利用者のニーズを創り出し、利用者を増やすことができるかを考えず、利用者の要求に機械的かつ奴隷的に従うという安直な姿勢が見て取れる」

    「筆者は輝かしい高度経済成長期の日本を目の当たりにしているが、占領下で教育を受け、コミンテルンや毛沢東思想の信奉者に使嗾された者が多い団塊の世代が社会の第一線の指導権を握ると、日本の国力は急速に低下した」

    URL:https://id.ndl.go.jp/bib/032347876
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    投稿日:2022.12.22

  • hiro1548

    hiro1548

    普段、図書館のおかげで本を読ませてもらっている身としては、図書館の本当の役割について問われるとちょっとつらいなぁ。
    知の集積所であり、「民主化のために国民の知る権利を確保するための場所」と説かれても、「そりゃそうだ」と思いつつ、自らは「無料貸本屋」としての機能しか利用していないもんなぁ。
    偉そうなことは言えないけど、日本には国立の図書館は一つしかない。これはどうなんだろう。当然だけど町の図書館とリサーチのための図書館は異なる。一般市民が利用できる調査・研究用の図書館がもっと身近にあってもよさそうだけど。ネットの力でどこまで行けるかな。
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    投稿日:2022.10.22

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