【感想】日本語ラップ名盤100

韻踏み夫 / イースト・プレス
(2件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • afro108

    afro108

    このレビューはネタバレを含みます

     日本語ラップのディスクガイドが出たということで読んでみた。20年近くある程度まんべんなく、ときに深く日本語ラップを聞いてきた人生なので90年代-2020年代までを一気に振り返ることができて楽しかった。と同時にこの手のセレクションについては個人的思い入れと反比例する部分が少なからず発生する。そこで「はぁ?」と思うのではなく「なるほど、そういう史観なんですね」とある程度冷静に見れるようになった点は少し大人になったと思う。
     本著の前に100作品を直近で選んだのはミュージックマガジン2016年7月号で冒頭にもあるように、その時のセレクションに偏りを感じた著者が筆を取ったのがことの経緯。そのミュージックマガジン内でそのガス抜きを担ったのはCreepy NutsとDOTAMAなのは隔世の感…それはともかく彼らと著者の方向性としては近く、音楽としての「JAPANESE HIPHOP」よりも「日本語ラップ」という史観で選ばれていると思われる。つまりはリリック重視。個人的にはどんだけリリックがおもしろかろうが、ビートがダサいと音楽として楽しめず好きになれないので、その点は著者と意見が違う点が多々あった。また1ラッパー1枚ルールが設けているとしても、それは選ばないなと思うことも何度かあった。とはいえ著者が繰り返し本著内で言及している通りこの音楽は一人称が全てであり、それはプレイヤーに限らずリスナーにも同じことが言える。なので意見の相違は当然であり、この違いこそが細分化したがゆえの楽しさだと思う。
     本著の優れている点は間口を広げたところにあると思う。各アーティストの概要、略歴をタイトな文章で過不足なく書かれており入門書として最適。また100となっているものの実際には1枚ごとに関連作2枚がついているので計300枚収録されており、すべて聞けば一つの日本語ラップの歴史が組み上がる点ではここ最近の盛り上がりで好きになった人には大いに役立つはず。しかも今はストリーミングでほとんどがサクッと検索できて聞ける。著者のブログや他の記事ではさまざまな観点から日本語ラップに関する批評を行なっており、その片鱗を最後の段落で見せるのはユニークな仕掛けだと思う。急にギアが変わる感じで歴戦の玄人たちもこの視点を受けてもう一度聞いてみたくなるように仕掛けられている。自分で100枚選ぶのも楽しそうなので時間を見つけて挑戦したい。

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    投稿日:2022.10.28

  • oz

    oz

    TVやラジオから音楽専門番組が消え、多くの音楽雑誌(日本初のラップ専門誌BLAZEを含む。)が廃刊となり、街からはレコードショップが消えました。音楽体験の場はCDからサブスクに歴史的な転換がされ、YouTubeではいつでも誰かのラップを聞きまた自らのラップを披露できるようになりました。こうした中で日本語ラップは「誰もが知る」ラッパーを失ったままラップという手法だけは「誰もが知る」強固さを保ち続けています。ですが普通の高校生がギターを背負って通学する光景には慣れても、公園等でたむろする少年がサイファーする光景にはまだ顔をしかめられる程度に社会の「受け入れがたさ」を有している音楽ジャンルでもあります。本書はいわゆる名盤特集型のディスクガイドの形式を採用しています。この方法は音楽雑誌では定番の手法でスタンダード過ぎても奇をてらいすぎても不興を買ってしまう不幸な企画ですが、本書が目指しているのは日本語ラップのマスターピースをガイドしつつ日本語ラップが築いてきた短くない時間を一つの歴史(物語)として語りなおす試みです。近田春雄やいとうせいこうら知識人によって輸入されたラップがそれに触発された現場のラッパーからラッパーへと連なる様子はエキサイティングです。言うまでもなく実際にステージに立つラッパーがこれらの歴史に自覚的でがあるわけではなく、あるのは彼らが先行世代をリスペクトあるいはディスし、自分と仲間(クルー)にとっての「リアルさ」を獲得しようと実践した事実であり、歴史とはいわばそれらの営みの軌跡を後付けで説明を付そうとする試みです。本書には類書にあまりみられないリリック単位での考察が多く、多くのラッパーが先行世代の作品を聞きこんでいわばそれを前提として自らのリリックをしたためているという当たり前の事実を傍証します。ラップとはこうして「リアル」であるとヘッズに認められたラッパーの影響が数珠つなぎに継承される特色があり、ラッパーはスキルを磨くと同時に過去の音源をディグすることが求められる点で、ロックにおけるパンクロックとは実は対極の精神性でジャンルが支えられています。こうしたマッチョなラップ界にあっては教本やディスクガイドはある意味で邪道なのかもしれません。なので本書を読んだら「気になったラッパーから聴いてみてね」ではなく「黙ってこのガイドのディスクをAppleMusicかSpotifyでチェックして端から端まで聴いていけ!」という体育会系な係りかたが望ましいでしょう。なお、本書は名盤1枚に対し関連作品が約2枚紹介されているので合計で300近いリストになっています。続きを読む

    投稿日:2022.09.24

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