【感想】街場の平成論

内田樹, 小田嶋隆, 釈徹宗, 白井聡, 仲野徹, 平川克美, 平田オリザ, ブレイディみかこ, 鷲田清一 / 晶文社
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
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ブクログレビュー

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  • sagami246

    sagami246

    平成元年は1989年、「ベルリンの壁」の撤去が始まった年であり、その後の東西ドイツ統一、ソ連を含めた東側陣営の崩壊、東西冷戦の終結へと向かっていく最初の年であった。また、この年の12月29日には、日経平均株価が38,915円の最高値をつけ、バブル経済の絶頂を迎えている。この年が絶頂であったということは、平成の時代を通じて、日本の経済は停滞あるいは衰退を続けていったということだ。
    平成が終わったのは、平成31年、2019年のことだ。昭和が終わり平成が始まったのは、昭和天皇のご崩御によったわけであるが、平成が終わり、令和が始まったのは、平成天皇・明仁天皇が自ら退位の意思を示されたからであった。
    平成の30年間というのは、どういう時代だったのか、ということを、内田樹をはじめとする論客たち、白井聡・平田オリザ・鷲田清一・ブレイディみかこ、といった人たちが論じた文章を集めたものが本書である。
    内田樹が最初に書いていますが、平成が始まる時にはソ連が崩壊する等とは全く考えていなかったし、その後、プーチンが登場して、再度、強権的な国家に逆戻りする等ということは思いもよらなかった。また、日本の経済の強さが、ここまであっけなく崩壊してしまうとは全く思っていなかったし、それが30年間も現在進行形で続くとは、全く考えていなかった。
    読んでみての感想は、ことほどさように、未来を予測することは難しいということである。日本の未来に対しては、今のところ暗い予測しかないが、もしかしたら、それがはずれるかもしれない、という超ネガティブな期待を感じた。
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    投稿日:2022.06.11

  • bukurose

    bukurose

    ブレイディみかこ氏は「シスターフッドと原初の怒り」という一文を寄せている。

    1989年:平成元年の日本流行語大賞は「オバタリアン」、新語大賞は「セクシャル・ハラスメント」、そして2018年:平成30年のそれは「#Me Too」がランクインということで、”セクハラに始まりセクハラに終わる”との小見出し。氏個人的には1989年は24歳で英国とアイルランドにいて、アイルランドは男を追いかけて行った、とありそれはアイルランド人移民の夫のことか?またストーン・ローゼズに夢中になった年であった。また1990年にイギリスでは税制上、既婚女性が初めて配偶者から分離された独立した税務者とみなされるようになった、ともある。

    しばらく日本と英国を行ききし、1996年:平成8年に腰をおちつけるべく渡英した時はやっていたのが「スパイス・ガールズ」でスローガンは「ガール・パワー」。当時少女で現在活躍中の英国若手女性ライターたちがフェミニズムに目ざめた原点は子供の頃であった「スパイス・ガールズ」だという。それより上の世代は所詮作られたアイドル、と相手にもしなかったようだが、この「ガール・パワー」は女が女たちの支持を得て(たとえ小学生でも)、女たちをインスパイアして旋風を巻き起こした、のだという。対して日本にも2009年に流行語となった「女子力」はあるが、これは女が男たちの支持を得て男たちに愛されて、ほかの女たちより上に立つことで、「スパースガールズ」旋風は「ソーシャルな力」、「女子力」は「個人的な力」だという。

    怒りが社会を変える、という考え方は英国に根強くあり、それはセックス・ピストルズであったり、英国労働党などにみられるという。その怒りをいま日本で一番多く持っているのは女性たちではないか、という。来るべき変化は、どこかから(既成のものから?)犬の餌のごとく与えられるのではなく、女性たちが、女性たちの力で手に入れなくてはならない。「シスターフッドと原初の怒り」を持つ、ガール・パワーがこれからの日本を変え得るという。

    2019.3.30初版 図書館
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    投稿日:2021.10.01

  • explorer1048

    explorer1048

    内田が、編集した各界の有識者による平成論集。

    日本がアメリカの属国であるということをモチーフに戦後のステージを整理し、かつ平成を総括した内田の洞察には恐れ入った。そして、自分なりの平成論を書いてみたいと思った。

    一通り読み終わり、いろいろな視点があるものだと思う。
    中でも面白いのは、
    日韓平成史
    ポストヒストリー
    消費者主権国家
    個人から群れへ
    といったあたりか
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    投稿日:2021.07.27

  • マサユキ

    マサユキ

    ☆☆☆2019年8月レビュー☆☆☆


    内田樹を編者として、稀代の論客が「平成」をテーマに持論を展開する。共感できるところもあれば、できないところもある。

    投稿日:2019.08.11

  • kouhei0210

    kouhei0210

    内田先生の編纂である『待場』シリーズでの平成論
    平田さんの日韓の関係の話。
    白井さんのポストヒストリー(歴史の終わり)について
    の2編が面白いと思いました。
    釈さんの宗教論。宗教の多様化、多元化についても面白い
    と思いましたが、論としてはちょっと疑義があるというか
    そんなことできるのかなあとの思いに駆られます。
    鷲田先生の小さな肯定の積み重ねについては、いつものように難解でちょっとわかりづらいところがあります。
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    投稿日:2019.07.01

  • spica2015

    spica2015

    それぞれの先生の平成論を読み、自分自身が個人的にあまりにも暗いので、なんだかますます暗くなった。
    そして、そんなつもりはなかったのに、私にとっての平成を振り返り、「なぜこんなことになってしまったのか」「30年前にはまさかこんなことになるとは思わなかった」と同じことを感じて暗くなった。
    救いは、鷲田清一さんが引用されている橋本治さんの、失われたものを数えるのではなく、失われてれていないもの、残されているものの数を数える、というところだろうか。同じことを別の本で内田先生がおっしゃっていたのも思い出す。
    私と日本と世界と…
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    投稿日:2019.06.29

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