【感想】官僚の研究 日本を創った不滅の集団

秦郁彦 / 講談社学術文庫
(4件のレビュー)

総合評価:

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  • リハビリ

    リハビリ

    戦後、農業の高度化により農村人材が都市部に大量に流入した。それにはじまる地方から大都市部への人口流入は現在首都圏においてますます盛んであり、地方の諸産業のなり手不足まで招いてしまった。これは日本の安全保障上においても脅威であるはずなのに、マスコミは東京一極集中を肯定するかのような報道に終始している。問題意識は希薄であると言わざるを得ない。

    私はこの一極集中政策に疑問を抱いており、それの一翼を担っている官僚に不満を抱いている。

    戦後日本の繁栄を築いたのは革新官僚が戦中から構築していた産業政策による重工業化が成功したからなのだろう。

    しかし現在の競争力の低下はその第 2 次産業から金融や IT 産業の転換に失敗したからである。その原因はアメリカからの圧力もあろうが戦後、日本の産業界を牽引してきた官僚の失政も多分に含まれる。その官僚制はどのような制度のもとで思考をする集団なのかを知りたくて本書を手に取った。

    感想としては腑に落ちないというものだ。

    明治維新から大体占領期までの官僚制の趨勢が書かれているが、詳細に記されているのが、官僚養成機関の東大との関係の箇所等あまり関心を抱かない箇所が多く、私が期待していた産業政策に官僚がどのように深くコミットしていたのかという箇所は少ない。

    また著者は、官僚を政党政治の勃興時や戦中の軍部の台頭時には、官僚はその対象の下請け的存在にならざるを得なかったと記しているが、これは特に軍部の台頭時の箇所においては、戦争責任を軍部に押し付けているのではないか、と疑義を抱かざるを得なかった。

    確かに軍部の下請け的機能を請け負っていて、官僚集団が政治の舞台において主導権を握っていたわけではないのは間違いないだろう。しかし、内政において産業政策や治安維持等の技術的なことは官僚の力が絶対的に必要であり、国家の権力が極限的に高まった戦中期は官僚の力も相対的に上昇したと考えるほうが自然であるからである。だが、本書では重要と思われる戦中期後半の官僚の政策については触れられていない。

    ところで著者は官僚出身の学者であるが、思うに官僚的思考の人物とはまさにこのことなのだろうなと感じさせるのである。

    まずはエリート意識である。例に漏れず著者は東大出身であるが、東大の卒業生は愛校心が薄いと嘆いている。しかし東大に対する著述は本書のかなりの部分を占め東大に対するこだわりをかなり感じるのである。

    もう一つは前述したが責任を曖昧にすることができる力である。官僚の権力を認めるような記述が多いのにも関わらず官僚は政治に翻弄されてきたと述べる。この二律背反制は自身の経歴がエリート街道を歩んできたことの誇りを隠すことができないからではないかとすら感じる。

    官僚が知的にも優れており優秀な集団であることは否定できないであろう。しかし、それを担保に政策が有効であるか、国民の厚生を高めるかというのには疑問が生じる。

    本書はこの疑問を答えるための書とならなかったことは残念だ。
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    投稿日:2023.10.03

  • ysdsts1981

    ysdsts1981

    2023年1月読了。
    本書に限らず講談社学術文庫の割と広い範囲に言えるのかもしれませんが、いわゆる「古典的名著」と「その他の図書」の中間的なポジションにある書籍がここには多く収められていて、最新の情報を取るにはやや古すぎる印象があります。
    と言いながらも本書は官僚に関する研究を斜め読みできて、過去の官僚の統計的情報や定性的な言及もありなかなか読ませていただきました。
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    投稿日:2023.01.25

  • まりも

    まりも

    明治期からの官僚制の変遷にスポットライトを当てる。1983年出版の文庫化なので最近の変化は書かれていない。
    現在は総務自治、警察、厚生等に分かれている内務省は、戦前かなり存在感のある役所だったのだなと思った。続きを読む

    投稿日:2022.09.12

  • Go Extreme

    Go Extreme

    第一章 戦前期官僚の計量分析
    藩閥的背景
    社会的背景
    教育的背景
    就職先と人気度
    第二章 戦後期官僚の計量分析
    フーバー改革と人事院の消長
    天皇の管理から公僕へ
    中央集権から地方分権へ
    資格試験から採用試験へ
    経済的待遇の低下
    終身官僚の時代へ
    第三章 明治の官員さんたち
    復古の序奏
    明治の二代目官僚
    入省1年で課長
    第四章 日本の科挙・「高文」
    プロシア型官僚制の導入
    好事的記録のあれこれ
    第五章 革新官僚の群像
    自律的な独立集団
    政党vs軍部・官僚
    天に代わって誅する
    第六章 行政改革の季節
    パーキンソンの法則
    律令制から現代中国まで
    明治の行革
    第七章 官僚養成所・東大の百年
    第八章 現代官僚制の諸相
    戦後日本の功労者
    ナワ張り争
    死に至る病
    第九章 わが体験的官僚論
    続きを読む

    投稿日:2022.06.02

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