【感想】教養としての金融危機

宮崎成人 / 講談社現代新書
(10件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • rafmon

    rafmon

    金融危機には理由があり、きちんと説明が可能だという事が分かるが、ならば何故それを食い止められないのか、分かりながら極限まで利益追求に走る構図や、そもそも金融危機でダメージを食らわないから気にしない等の私欲が邪推され、権力構造にただただ無力さを感じるのみ。

    本著が記述する歴史の話で言えば、戦争に繋がる以下のような話が興味深く読めた。ケインズの予想通り、賠償金支払いが困難になったドイツが1922年に支払いの一次猶予を求めるがポアンカレ政権のフランスはベルギーと協調し、工業地帯であるルール地方を占領。アメリカもイギリスも損をするからと戦時債務のキャンセルはしない。ドイツは強烈なインフレとなり、パンの値段は10ヶ月で8億倍。1922年初に1ドル=160マルクが、23年11月には1ドル=4.2兆マルク。貯蓄や年金は無価値。国民の連合国への怨みが強まり、極右勢力が拡大。

    第二次世界大戦後はイギリスもほぼ破産状態。アメリカからレンドリースという名の実物支援により、食糧や航空機、船舶等を受けていた。

    終戦直後から1950年代はドル不足が国際金融システムの最大の問題。貿易決済に使われるドルが手許にない。そのためマーシャルプランにより、西側諸国に対し120億ドルの資金供与。9割は返却不要であり、欧州は輸入決済のドルを確保、など。
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    投稿日:2023.09.12

  • gaaco

    gaaco

    経済のことは、あまり知らない。
    特にマクロ経済は…難しい。
    本書は自分にとってチャレンジだと思って選んだ一冊。

    20世紀から現在までの金融危機の原因を「お話」として説明した本。
    「お話」化されているので、何とか読了できた。
    今まで自分の中でバラバラに入っていた昔学校の授業で習ったこと、その後ニュースで聞いたようなことが、だんだん結びつき始めたような感覚を味わった。
    その意味では、いい経験をしたと思う。

    経済を学んだ人には噴飯物だろうなあ、と思うが、恥を忍んで書いてみる。

    20世紀の間に起きた国際金融の変化は、ざっくり言えば金本位制から固定相場制、そして変動相場制へということになる。
    基軸通貨もポンドからドルへと変化する。

    自分など、アメリカはどうしてあんなに景気がいいのに、「小さな政府」を志向しているのに、財政赤字があるのか不思議だった。
    正直、財政がうまくないのかと思っていた。
    この本を読んで、ちょっと事情がわかった。
    国際収支が黒字なら安心という単純な話でもないことも。
    いや、もう、それくらいの無知なのだ。

    最近話題の為替市場介入についても、コラムで解説があった。
    今までは、中央銀行の「やるぞやるぞ詐欺」だよなあ、と思っていたのだが、ある意味それが「正しい効果」だとのことが本書でわかった。
    実際に相場を左右することなど、あまり考えていなくて、心理的に冷や水を浴びせることを狙っているのだと。
    なにか、先生の一喝で、一瞬だけ教室が鎮まるみたいなものなのね。

    金融危機は、資金の流れが止まることで起きる。
    引き金や、ファクターは少しずつ変わっていくけれど、今後も起きることだけは間違いない。
    金融危機のたびに、各国のエゴもむき出しになるものの、国際協調の模索もされてきた。
    常に後追いで対応されるのだ。

    今、インフレが起こり、円安が起こっている。
    自分の人生のスパンではこんな時期が珍しいこともあって、不安に思っていた。
    が、本書を読んでみると、これもまだ経済の歴史的な変動としてはそれほど深刻な状況には当たらないのかもしれないという気もしてくる。
    あ、いやいや、そんな気になるのはまずいか。
    貧困対策、気候変動対策は、経済の問題でもあるのだ。
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    投稿日:2022.11.20

  • kazubook21613

    kazubook21613

    新書なので入門書なのだろうが、中々どうして読みごたえがあり、自分の知識では理解できない内容も多々あった。

    このレベルを専門でない人間が、世界経済あるいは金融政策の在り方の基礎教養として求められると中々厳しい(笑)

    自分は年はとっているので第4の危機以降は、リアルタイルで経験している事になる。

    振り返ると欲と叡智の狭間で金融危機も繰り返されたし、これからも危機に直面しそれを乗り越える事が繰り返されるであろう。自分が生きている間にどんな危機が起きるか分からないが、過去の歴史に学び賢くふるまう様にしたいと切に思う。

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    投稿日:2022.09.23

  • yumo

    yumo

    今まで起きてきた国際金融危機、そしてこれから起こり得る国際金融危機を体系的にまとめられた一冊。
    自分の勉強不足でまだまだ内容が咀嚼できていないけれど、経済には浮き沈みの波がつきものだということは良く分かった。
    もっとお金の勉強をした後に読み直して理解を深めたいな。
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    投稿日:2022.07.26

  • 中村宗悦

    中村宗悦

    近時100年間に発生した主要な国際金融危機9つを取り上げてわかりやすく解説した本。よくまとめられていて興味深く読んだ。

    第1の危機は、言うまでもなく1929年の大恐慌前後の金融危機。戦後の国際金融システムの試行錯誤はここから始まったということは異論がない。だからこそ経済史の研究者たちの関心を惹いてきたわけだから。

    第2の危機以下は次の通り。
    2.なぜブレトンウッズ体制は崩壊したのか?
    3.なぜドルは大暴落したのか?
    4.日米・米独貿易摩擦は乗り越えられたのか?
    5.発展途上国の債務危機はなぜ同時多発したのか?
    6.アジア通貨危機とは一体何だったのか?
    7.米国発金融危機はなぜ起こらなかったのか?
    8.世界金融危機を引き起こしたの複合的要因とは?
    9.絶体絶命のユーロを救った「一言」とは?
    10? 次の危機はどこで起こるのか?

    こうして列挙してみると、自分が生きてきた時代は戦後の国際金融危機連発の時代だということがよくわかる。各章あとのコラムもいくつか勉強になった。
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    投稿日:2022.07.23

  • Yoshiee

    Yoshiee

    「教養としての・・」というタイトルにしてはある程度の前提知識がある方向け。取り分け、第7の危機あたりまでを実感として読めるのは、その世界にいた一定の年齢層の世代と思われます。後半、リーマンショック以降、最終章は比較的平易に書かれている為、この部分だけを読んでも一定の知識の補充になる感じがしました。続きを読む

    投稿日:2022.05.04

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