【感想】極限の思想 ニーチェ 道徳批判の哲学

城戸淳, 大澤真幸, 熊野純彦 / 講談社選書メチエ
(3件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • キじばと。。

    キじばと。。

    ニーチェの『道徳の系譜』を読み解くとともに、彼の道徳批判がもつ超越論的な意義を解き明かそうとする試みがおこなわれています。

    ニーチェの道徳批判といえば、われわれの道徳的な心性の背後にルサンチマンが控えていることを指摘したものとして広く知られています。しかし著者は、ニーチェの道徳批判を、いわゆるモラリストたちのそれから区別しなければならないと主張します。モラリストたちは、表面上は道徳的にふるまっている人びとの心の奥底に、非道徳的な動機が存在していることを鋭く見抜きました。しかしそうした批判は、いまだ道徳そのものに対する問いなおしではありません。

    著者は、「ニーチェがカントの批判哲学の超越論的な問題設定を継承したこと」を承認するという立場から、彼の道徳批判を理解しようとします。ニーチェの思想における超越論的な立場からの考察は、「系譜学」という歴史的な方法として具体化されましたが、それは「発生論の誤謬」を犯すものであってはなりません。このアポリアを切り抜けるために著者は、『道徳の系譜』の議論についての詳細な解読をおこない、ルサンチマンにもとづく自己欺瞞に対するたえまない自己検閲をおこなうことで、道徳的な意識が成立したことを明らかにしています。

    一方で、こうしたニーチェの超越論的な系譜学の立場にもとづく議論は、道徳批判をおこなうための価値基準をみずからのうちにもつことになります。このような問題に対して、ニーチェは、新しい価値をみずから創造する「超人」の思想を提出することでこたえようとしたのだと著者は論じています。

    「あとがき」で著者は、「ニーチェの方法論的核心にはカント的な超越論哲学の伝統があるはずだ」という確信のもとで本書を執筆したと述べています。ニーチェの思想の解釈としてたいへん意欲的な試みだといってよいと思います。
    続きを読む

    投稿日:2023.12.08

  • 人生≒本×Snow Man

    人生≒本×Snow Man

    カント研究者の視点が随所に光る。
    キーワードは超越論的。
    ニーチェの道徳批判を『道徳の系譜』に基づいて丁寧に読みほどいている。
    ニーチェの問題意識がよく分かる。
    最後に著者が読み解いた、個人としてだけではなく、人類としても、歴史としても、道徳を解体していく「永遠回帰」の思想は魅力的だ。続きを読む

    投稿日:2023.07.18

  • Verfassungslehre

    Verfassungslehre

    ニーチェを多数読み込んでいるわけではないので、著者の言わんとするところがどこまで理解できているか心許ない。さしあたり「道徳の系譜学」を読んでから再度チャレンジしたい。

    投稿日:2021.12.14

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