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ヴィトルト・シャブウォフスキ, 芝田文乃 / 白水社 (3件のレビュー)
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しん
今年一番、すすめたい本。 前半はブルガリア・ロマの熊使いの伝統の終焉の、人と熊と。自由は社会の設定ではないのだと感じる。しかし社会の設定は自由な社会を設定しようとする。これは社会の過渡期なのだろうか…?そう考えるよりも、自由は能力のように上達させるものなのだろう。 日本に限らないと思うが、自由は置かれているのに閉塞感が強い。いや、足枷はないがルールがある。社会なら仕方がない質のものはあるだろうけど、問題なものもあるだろう。ただ、案外に好きにすればと放任されている。こういった暮らしを知ると。例外は一旦置いといて。 便利なのだ。道具だけでなく仕組みも。広い意味での道具が便利で、扱いに注意しなくてもセーフティなものに多く囲まれるようになった。街道一の建具や職人のひ孫の僕は、以前の「道具」を知っているし、その感覚はどことなく身につけた。以前の道具は、付き合い方がうまくならないといけなかった。 道具で仕事をするのではなく、道具と仕事をしていた。人間が道具の能力に合わせる面があり、素材の都合に合わせる面があった。そしてその結果が匠だった。それを考えると今は、素人向けの道具に囲まれ、多くの人が同じようにそうやれる。そして扱いが悪くても道具を壊してしまったり、大怪我をしてしまうこともだいぶ減った。 自由を手にするとは、自由さんという道具のようなものとお互いに擦り合わせて、能力が上達することで手にするものなのだろう。便利な道具だらけではその能力のなさに気づきにくく、謙虚な心がなくても、道具はいうことを聞いてくれる。自由力とは慎みや片付けなどの基本動作の筋力アップで付くものだった。今はそれをしにくい。自由という吊るしの完成品、むしろ初心者ほど、効き目が高いものを求める。自分の頭をすてて自由が手に入るものだったが、それこそできない。自我。わがまま。やさしさ社会。 「自由なのに自由にできないものたち」 後半は、長くなったので省略する。哲学思想のように難しい文はないので読みやすい本ではある。「読書は好きになる必要がある」。映像画像音声などは便利な道具だ。便利で知を得ることができるが、自由からは遠ざかる。続きを読む
投稿日:2022.06.19
ハルモヤ
前半が熊使いにまつわる話、後半は共産主義から資本主義に移行して戸惑う人々の話。後半の章ごとに冒頭に差し込まれる前半の言葉が心模様を端的に表している。100%の社会など存在しない。ソ連解体に伴う意識の変…化を通じ、社会の成り立ちの基本を見直せる良書。続きを読む
投稿日:2022.02.14
hokkaido
鎖の付いた鼻輪を付けられて、男の指示に従って二足で立ち上がり、見せ物として”踊る熊”。動物虐待に他ならないこの伝統は、ブルガリアにおいてかつて脈々と受け継がれていたー過去形を使ったのは、ブルガリアが共…産主義から資本主義社会へ展開した後、動物愛護団体によって全ての熊が庇護され、この伝統は消滅したからである。 では、この熊たちは庇護され、幸福な生活を送っているのかと言えばそうではない。生まれてから長きに渡って鼻輪で拘束された熊たちが自由を味わったとき、自由の重さに耐えきれなくなる。そして熊たちはすっくと立ち上がり、鼻輪で拘束されていたときと同様に、踊ってしまうのだ。 本書は、ブルガリアのような、かつての共産主義国家が資本主義に転換したことによって、”自由の重さ”に社会が耐えきれなくなっているということを描いたノンフィクション作品である。 冒頭のブルガリアにはじまり、ウクライナ、ポーランドなど、様々な国を巡りながら、”自由の重さ”、そして”自由の痛さ”がどれだけ人々を痛めつけているかを、知ることになる。続きを読む
投稿日:2021.06.06
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