【感想】酔鯨 山内容堂の軌跡 土佐から見た幕末史

家近良樹 / 講談社現代新書
(2件のレビュー)

総合評価:

平均 4.5
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ブクログレビュー

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  • 麻阿

    麻阿

    このレビューはネタバレを含みます

    幕末は好きだけど、土佐のことは詳しく知らないなと思い手に取った一冊。
    著者の別本を読んだことがあって非常に読みやすかったのですが、今回もハズレなし!
    史料引用の後にはつまり、とまとめてくれてるので理解がしやすかった。

    それにしても、著者も書いているが
    山内容堂の「チャンスの逃し方」と「粘り強さの無さ」。後藤象二郎らが悔しがったらしいが、私も読んでて思わず悔しくなりそうだった(笑)
    大政奉還後の小御所会議なんて、最初は岩倉具視とバトルが出来るくらい、徳川家だけの納地返官に大反対してたのに、再開したらだんまりなんて(笑)
    著者も書いていたが、本当に酒の力もあったら面白いけど……
    ただ、そこにも実は、あまりに主張しすぎて佐幕寄りを疑われてはまずいという冷静な判断があったりするのは流石としか。
    土佐は確かに幕府寄りのイメージがあったけど、この本を読むと、ずっとそうではないんだなと実感出来た。
    容堂自身も幕府の力の無さを実感して、自分の国元の藩政改革を進めたりしていたことは知らなかった。

    これは完全に好みだと思うんだが、
    やっぱり大久保利通という人は策略家、参謀なんだろうなと。だから日本人に嫌われるんだよな。
    西郷さんが好かれるのはどこか温かみがあるからなんだろうなと思う。
    それで考えると、知名度があまり無いが
    (著者はそれを、土佐が明治の新政府体制において、完全に出遅れたような、勝者の中の敗者になってしまったのが原因だと書いていた。納得)
    どこか不器用さもある山内容堂も愛されるべき人やないかなぁと、個人的には思った。

    早くから、議院制の導入などにも興味を持っていたらしいし、もっと評価されてもいい人。

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    投稿日:2023.07.19

  • DJ Charlie

    DJ Charlie

    「史上の人物」という存在の多くは「とりあえず名を聞いたことが在った…」という以上でも以下でもないのかもしれない。場合によっては「小説の主人公」というようなことで馴染みが深いかもしれない。が、実際「知っているような、知らないような…」ということにしかならないような気もする。
    多彩な人士が現れて色々と活動する幕末という時代の人物に関しては、「とりあえず名を聞いたことが在った…」という感、更に「知っているような、知らないような…」という感がより強くなる傾向も在るのかもしれない。
    「山内容堂」という人物も、その「とりあえず名を聞いたことが在った…」という感、更に「知っているような、知らないような…」という感の人物であることは免れ悪いかもしれない。が、この人物に脚光を当てた本書をゆっくりと読めば「実に面白い人物!!」ということになると思う。
    “酔鯨”と、鯨が水を飲むかのように大酒を喰らうのだと豪語したという、酒好きな殿様だった。詩や骨董品を好む文化人的な一面も在るが、色々と艶聞も伝わるという人物だった。そういう個人的な事の他方、揺れた幕末の政局で独特な存在感を示した、そして「先駆的な考え方を持っていたかもしれない?」という、傑出した一面も在った人物であった。
    明治維新を経て、「薩長土肥」と言われはしたが、“土”の土佐は主流というより傍流だった。それは山内容堂の佐幕的な姿勢が在ったからかもしれないというような、志士達の前に立ちはだかったかのようなイメージも在るのかもしれない。が、必ずしもそういうことでもないのだ。本書は、そういう辺りから起しながら、山内容堂という人物の来歴や行動を丹念に追いながら説いている。
    「幕末期の大名」ともなると、「先代の嫡男が後継し、一定程度の期間に亘って領主として活動」ということでもなく、色々と煩雑な経過を経て先代の後を継いで行く例が多々見受けられる。山内容堂―最も知られている呼び方なので、本書では一貫して「容堂」で通している…―もそういう例に洩れない。土佐を領した山内家の分家に生まれ育ったが、色々と曲折が在って本家を継ぐこととなって、幕末期の歴史の舞台に登場した訳である。
    そういう複雑な背景で登場したが故に、酒を好む、趣味に入れ上げるという一面も在ったのかもしれないが、他方で物怖じせずに堂々と意見を述べる人物であったという一面、様々な新しい知識を積極的に学ぶ一面も在り、諸大名との交際も盛んに行っていた。そして<安政の大獄>の辺りの経過で、山内家の家督を養子に譲って隠居して「容堂」を名乗るに至る。
    そして彼の活動は「容堂」を名乗った以降も活発に続く。本書にはその辺が非常に詳しい。或いは、この人物の事績をここまで詳しく説いた類書は見当たらないかもしれない。「幕末の大名」ということでは、「最後の将軍」の徳川慶喜に対して、松平春嶽、島津久光(この人物は大名の父親ということだが…)、伊達宗城、山内容堂が「四賢侯」というようなことで存在感を示した経過が在った。この「徳川慶喜VS四賢侯」というようなこと、そして「四賢侯の相互関係?」というようなことに本書は非常に詳しい。
    本書を読了すれば、「山内容堂」は既に「知っている」と言って差し支えなくなることは間違いない。実に興味深い人物に引き合わせて頂いた感だ。
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    投稿日:2022.02.01

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