【感想】有栖川有栖選 必読! Selection7 暗い傾斜7

笹沢左保 / 徳間文庫 トクマの特選!
(1件のレビュー)

総合評価:

平均 3.0
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ブクログレビュー

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  • やまだん

    やまだん

    このレビューはネタバレを含みます

    ● 感想
     有栖川有栖は、本作のアリバイトリックを絶賛しているが、そこまで見事なトリックとは思わなかった。心中と見せかけて、室戸岬にいたと見せかけるトリックは、斬新といえば斬新なのだが、それだけ。このトリックに信憑性を持たせるために、長々と物語が語られるが、やや冗長に感じる。
     「作中で描かれるアリバイトリックの意外性は、膨大な数の笹沢ミステリの中でも一、二を争うだろう。」とあるが、そこまで意外性があるかなー。ミスディレクションもないし、これ以外の真相が考えられない。ほかに類を見ないトリックかもしれないが、作品を読んで驚かされるというものではない。
     心中と聞いて浮かべる典型的なイメージを裏切ることによって、殺人計画を組み立てる。心中の当事者を装うことで、殺人事件のアリバイを成立させるという発想。この発想が他に類を見ないということか。とはいえ、作品の中では、この真相以外の真相が現れないので、意外性はない。伏線は豊富なので感心はするが、意外性とは違う気がする。
     読む前の期待が高すぎたのかもしれないが、デキとしては標準程度だと思う。★3で。
    ● メモ
     経営危機の太平製作所の女社長、汐見ユカは、新製品を完成できなかった発明家殺害の容疑を掛けられる。そして、2000万円を個人的に借り、血痕を迫られていた大株主も、発明家が、室戸岬で死んだ日に、東京で殺害される。
     東京-四国で同日、同時刻での殺害は不可能と思われるが…。
     室戸岬での三津田殺害。これは、自分に恋愛感情を抱いている三津田に遠距離での心中を持ちかけた。
     三津田に自殺をさせ、その時間に自分もその場にいたような偽装工作をする。そうすることで、三津田が死んだ時間に室戸岬にいたというアリバイを作る。 
     同時刻に、矢崎殺害。これは東京で殺害。矢崎が松島の妻と不倫をする際に利用していたマンションに行き、絞殺
     ミステリとしてのトリックはこの程度。心中をし、室戸岬にいたと見せかけることで、アリバイを手に入れるというトリック
     これに加えて、小説としては以下のような趣向がある。
     三津田が、汐見ユカに恋愛感情を抱き、心中を持ちかけられた際に、自殺をするということにリアリティを持たせるための人物描写がされている。
     探偵役は松島。探偵役というほどではないが、矢島の娘が登場する。ちょっとした伏線もあるが、矢島の娘は、汐見ユカの妹
     汐見ユカの両親は事業に失敗して自殺。このことが、汐見ユカに会社経営のために殺人も辞さないという人物となっている。ただし、この辺りの描写は、ややリアリティに欠ける。古い作品だから仕方ないともいえるが。
     松島の妻が矢島と不倫をしている。これも伏線がある。この事実を汐見が矢島殺害に利用しているのだが、トリックとしてはあまり必然性を感じない。物語を盛り上げるための、作者側の都合ともとれる。
     冒頭の男女二人は、松島と矢島久美子。最後で汐見ユカが自殺したことが明かされる。しかし、この自殺は伏線もなく唐突。物語を収束させるために無理やりそうしたともとれる。いっそ、自殺せず、悪びれずに会社経営を続けていた方が、イヤミスとしては出来がよかったかも。
     

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    投稿日:2022.12.11

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