【感想】ゆるく考える

東浩紀 / 河出文庫
(3件のレビュー)

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  • kazuhisachiba

    kazuhisachiba

    常に客観的立ち位置で,自分自身を中心とした思考空間を形成し,自分自身とは,そして人とは何なのか,を思索懊悩する.方法論が確立している訳ではないので,思考空間に一貫性がなく行き当たりばったりのように読者は感じるかも知れないが,自分を題材にした実験なので,空間定義も,その時々で興味のある方向に飛び,後々(10年単位で)それらが有機的に体系化される.高等遊民のようにも感じるが,自分自身の精神世界と向き合うことの精神的困難さは,過去の哲学者達の精神崩壊といった末路を考えると,常人に真似のできる所業ではない.続きを読む

    投稿日:2023.06.21

  • じーま

    じーま

    ぼくたちは常に未来を想像しながら生きている。そして未来はたいてい期限があいまいなものである。イエスかノーかの判定日が決まっていることはほとんどない。
    たとえば数年後の自分を想像し、独身か既婚かどちらかだと問うことはできる。けれどもそれはなにも深刻な対立にはならない。独身でもそれからあとに結婚する可能性はあるし、すでに離婚している可能性もある。そもそも結婚など望まなくなっている可能性もある。未来にはさまざまな可能性が重なっていて、どれがベストかは簡単に決定できない。人生とはそういうものである。とくに子どもができると、そのあいまいさについて考える。子どもの人生について、なにがベストか決定できると信じている親はいまい。
    ところが受験は、未来からまさにそのあいまいさを奪ってしまう。受験を始めた瞬間に、未来の娘は「合格した娘」と「合格しなかった娘」に分岐してしまう。来年、再来年の計画について話すときに、娘もぼくも妻もつねにその分岐を意識せねばならなくなる。実際、資金計画から旅行の日程まであらゆることが変わってくるので、意識せざるをえないのである。
    ぼくは今回、受験生の親になってみて、それこそが受験の本質的な残酷さだと感じた。入試が残酷なのは、それが受験生を合格と不合格に振り分けるからなのではない。ほんとうに残酷なのは、それが、数年にわたって、受験生や家族に対し「おまえの未来は合格か不合格かどちらかだ」と単純な対立を押しつけてくることにあるのだ。

    けれど、ほんとうはそんな単純な分岐など存在しない。むろん志望校に合格したらそれに越したことはない。けれども数年後には、そんな志望校だって退学しているかもしれない。起業したり外国に行ったりしているのかもしれない。人生の選択肢は無限である。そのことを頭の片隅において、入試会場に向かってほしい。
    続きを読む

    投稿日:2021.11.28

  • ハルモヤ

    ハルモヤ

    文庫になってくれて嬉しい一冊。感想はほしおさんが書かれている「これで「ゆるい」とは。」に心から同意。単行本刊行時は震災の前と後でこんなに変わるかと思考を巡らせながら拝読した。そしてコロナ禍のこのタイミングでこれが文庫化されたことは、読み返すという意味ですごく良かった。これからも、考えるために何度も読み返したい。続きを読む

    投稿日:2021.06.02

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