【感想】小説読解入門 『ミドルマーチ』教養講義

廣野由美子 / 中公新書
(15件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 一条浩司(ダギナ)

    一条浩司(ダギナ)

    ミドルマーチの翻訳者が同書を題材に小説の「技法」と「読解」について解説。より深く小説を味わうための手引。

    多層的な深さと広がりを持つ世界文学の名作「ミドルマーチ」を、作家の技法と多角的な着眼点から振り返っていく。小説読解入門というタイトルだが、小説全体に対する一般論というよりも、ミドルマーチの解説、復習に特化している印象がした。もともとそこを期待して読んだので自分としては満足ではある。もちろんネタバレもあるので、ミドルマーチ全編の読了後に読むべきだろう。翻訳者自らが詳細に語るミドルマーチ論は、最高の名作文学に触れたあとの副読本として最適だ。これだけの名作なのに意外と映像化されていない本小説のドラマ版についての情報は嬉しかった。

    ミドルマーチ読了後の興奮が冷めやらぬまま上記のように書いてしまったが、本書を読み終えると、小説そのものへの読解力や感性が深まった気がするので、表題は決して誇張ではないと思う。
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    投稿日:2023.04.07

  • University of the Ryukyus Library

    University of the Ryukyus Library

    【琉大OPACリンク】
    https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BC06658858

    投稿日:2023.03.31

  • koochann

    koochann

    英文学の最高峰ジョージ・エリオット(女性の名前!)の「ミドルマーチ」を題材として小説の味わい方(書き方)を開設していくこの本は、「ミドルマーチ」そのものを知らない私にとっても非常に面白く、ミドルマーチの登場人物たちが生き生きと迫ってきたように感じた。特にドロシア。熱烈な使命感、殉教精神の持ち主。この類型はこのエリオットで多くの小説に登場し、また人格的な欠点の持ち主、偽善者として描かれるカソーボン牧師やバルストロード氏の累計も良く登場するらしい。思い当たるところも多く苦笑いである。そして、技法(書き方)としてプロローグ・エピローグ・題辞が書かれる意味とそれによる小説家の意図・性格などが面白いし、語り手が一人称及び三人称の場合の介入有り、介入無しの3通りの効果について書いている解説が一般論として興味深いところ。この他会話・手紙が入ってくることの意味など、私自身がこれまで読んできた小説を思い起こすこととなった。続きを読む

    投稿日:2022.07.11

  • 積読飯

    積読飯

    このレビューはネタバレを含みます

    中公新書『批評理論入門』の姉妹篇。前著ではメアリー・シェリーの「フランケンシュタイン」を取り上げていましたが、今回はジョージ・エリオットの「ミドルマーチ」を扱っています。著者が編集部から出版の話を打診されたとき、ちょうど、最終巻の翻訳作業をされていたそうです。

    「小説をいかに読むかという方法を模索していくと、結局は、文学とは何かという問題に突き当たる」と著者は言います。なぜなら、文学の機能が<教養>と関わっているからです。著者の言葉に従えば、文学には人間の生きる力の土台を形成する作用が含まれているということになります。小説は人間を描くことに主眼を置いた物語形式なので、<教養>を培ううえで、大きな力を与えてくれるのです。<教養>を身につけることによって、人は新たな文化的状態へと変容していきます。物語は世界や人間に関わる様々な領域の諸学が理論的に明らかにしようとしていることについて、具体的なモデルを提示してくれます。

    本書は、<教養>を構成している幾つかの項目を取り上げて、それぞれの観点から<人間とは何か>という問いが、小説のなかで、どのような形で追究されているかを具体的に説明してくれています。なので、小説を深く読み解いていきたいと考えている人には、学ぶことの多い一冊です。

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    投稿日:2022.06.09

  • s

    s

    レポートのテーマ設定の参考になる。

    「安全基地」(secure base)の概念はゼミで使えそうだ…

    投稿日:2021.09.16

  • 狐舞

    狐舞

     前著『批評理論入門』は主に批評家視点での読み方であったが、本書では批判的な読み方ではあるが一般の読者寄りの視点での読み方の解説になっている。今回は『ミドルマーチ』が題材。具体的な例を挙げながら解説するのは前著と変わらないが、より社会や経済など広い概念からの批評技法となっている。ただ、やはり批評のための読み方であり、素直に小説を読むことを許してはくれない。
     前著、本書を通して批評的な読み方をみてきたが、どうも言い訳感が拭えない。世の中にはちゃんとした批評家もいるのかも知れないが、自分が書きたくても書けなかった小説を書いているのが悔しくて、批評家という立場を使っていちゃもんをつけて溜飲を下げているだけではないか?という疑問を払拭することは出来なかった。
    続きを読む

    投稿日:2021.08.28

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