【感想】影響力の武器[第三版] なぜ、人は動かされるのか

ロバート・B・チャルディーニ, 社会行動研究会 / 誠信書房
(215件のレビュー)

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  • 2027063番目の読書家

    2027063番目の読書家

    人は影響力の力によって人の何倍も本質を引き出せることを本書は心理学の観点から八つの章でまとめてある。これから社会人になる方、仕事や人間関係で悩んでる方に是非読んでアウトプットして欲しい、そして資本主義には欠かせない内容だ。続きを読む

    投稿日:2024.05.16

  • まな

    まな

    このレビューはネタバレを含みます

    和訳特有の言い回しが気になる部分があったが、内容は非常に勉強になった。要点を家族に積極的に伝えていきたい。なんならこの本を読ませたい。

    私の体験談。最近、お店でエアコンを見ていた際、「その製品は明日には売り切れてしまいますよ」と店員に言われた。この本を読む前だったら、すぐに購入を決めていたと思う。「今日は決めません」と言って帰ろうとしたとき、「実は、この値段は今だけの特別価格です」「お客様のお名前はなんですか?明日も来てくれますよね?」と何度も引き止められた。あまりにもしつこいから怪しく思え、そこには暫く行かないことにした。




    ーーーーーーーーーーーー以下、自分メモ



    【第1章 影響力の武器】

    ・固定的動作パターン
    →規則的で盲目的な、機械的な行動パターン。

    (例)七面鳥はヒナが鳴くとお世話する。鳴かないとお世話しない。実験で、イタチの剥製の中にヒナの声を録音したものを埋め込み、七面鳥に近づけると、お世話をするような動きを見せた。録音を止めると、イタチの剥製を攻撃し始めた。

    ・人間の自動的反応(カチッサー)
    →自動的な行動パターンは、状況内の関連情報のなかの、たった一つの特徴(信号刺激)によって引き起こされている。

    (例)理由を添えると頼み事が成功しやすくなる。「ので」という単語が発せられただけで、理由らしい理由がなくても、自動的に頼み事を聞いてしまう。

    (例)手頃な値段で売られていたターコイズが、誤って2倍の値段がつけられたときにたくさん売れた。商品の善し悪しを決める信号刺激が価格しかなかったため、価格の上昇だけが、客の購買意欲を刺激した。

    →ターコイズの価値を見分ける技術を修得する代わりに、たいていの品質を言い当ててくれるたったひとつの特徴(価格)に頼った。

    ・人間の行動の多くは自動的で紋切り型。なぜなら、複雑に入り組んだ環境では、思考の近道を用いることが必要だから。

    ・判断のヒューリスティック
    →少ない時間と労力で判断する方法。「高価なもの=良質なもの」「専門家が言うなら正しいに違いない」

    ・コントロールされた反応
    →すべての情報を十分に分析した上で反応する傾向

    ・重要な問題を前にした場合、カチッサーは使わない。よく考えたうえで行動するのは、欲求とともに能力を合わせ持っているときだけ。

    ・機長症候群
    →多くの航空機事故は、機長が犯した明白なミスをほかの乗員が正さなかったために発生している。

    ・コントラストの原理
    →2番目に提示されるものが最初に提示されたものとかなり異なっている場合、それが実際以上に最初のものと異なっていると感じる傾向にある。

    (例)紳士服の店員は、高い品物を先に買わせるように誘導する。スーツを先に買わせてからセーターや付属品をすすめる。セーターがいくら高いものでも、スーツの値段の後だと安く感じるため。

    (例)不動産会社では、高い価格に設定したボロ屋を数件見せたあとに、売りたい物件をすすめる。ボロ屋を見たあとだと、普通の物件でも立派に見える。

    (例)自動車の購入時、ディーラーは新しい車の売値を決めてからオプションを次から次へとすすめる。何万ドルという取引のあとなら、最新型CDプレーヤーなどの付属品に払う100ドルなど取るに足らない額に思えるため。


    【第2章 返報性】

    ・返報性のルール
    →他人がこちらに何らかの恩恵を施したら、自分は似たような形でそのお返しをしなくてはならないというルール。

    ⚠︎︎相手に借りがあるという気持ちがなければまず断るような要求でさえ、受け入れさせてしまう。

    ⚠︎︎頼み事をしてくる相手への好感度は関係ない。

    (例)寄付を求める前にプレゼント(本や雑誌、花)を渡すことで、成功する。

    (例)郵送調査用紙ととも金銭的な謝礼を同封したときのほうが、「記入して返送してくれれば同額の謝礼を送る」と約束した場合より、断然回収率が高くなる。

    (例)レストランでも、伝票にキャンディやミントを添えて客に渡すだけで、チップの額がかなり増える。

    ・「あなたは賄賂を受け取ってはならない。賄賂は、目のあいている者の目を見えなくし、正しい人の言い分を歪めるからである」

    ⚠︎︎返報性のルールは強く、相手が見知らぬ人や嫌いな相手でも効果は出る。

    ⚠︎︎余計なお世話をされた場合でも恩義の感情が生まれるように出来ている。

    ・例えこちらが望んだものでなくても贈り物をもらったらお返しをするべきという強い文化的圧力がある一方で、欲しくない商品を買うべきという圧力は存在しない。

    ・はじめに1つ小さな親切をするだけで、かなり大きな恩返しをする義務感を相手に生じさせることができる。このルールを使う人は相手に恩義を感じさせる最初の親切の性質だけでなく、そのお返しの性質も選べるため、このルールを悪用する人が相手では、不公平な交換を余儀なくされてしまう。

    →親切を受けたままにしているときの明らかに不愉快な気分と関係がある。また、他者の親切を受け取るばかりの人は嫌われる。

    ⚠︎︎恩義を受けっぱなしにしてしているという不快な感情を取り除こうとして、人は受けた親切のお返しに、それよりもかなり大きな頼みを聞いてしまうことが多い。

    ・心の中の不快感と外聞が悪くなる危険性、この2つが組み合わさるととても大きな心理的負担になる。

    ・恩返しの義務感は最初に手助けを受けた人だけが感じるわけではなく、その人が属する集団の構成員も同様に感じる。

    ・自分に譲歩してくれた相手に対して譲歩を返す義務も生じる。相手が譲歩してくれた(カチッ)、今度は私の番だ(サー)。

    ・「拒否したら譲歩法」(譲歩的要請法)
    →まず確実に拒否されるような大きな要求を相手に出す。相手がそれを拒否した後、それよりも小さな、もともと受け入れてほしいと思っていた要求を出す。

    (例)労使交渉

    (例)5ドルを借りたいと思ったとき、先に相手に10ドル貸してほしいと頼んでおけば、目的の5ドルが実際よりもささやかな金額に思わせる。
    →「返報性のルール」(返報されるべき譲歩と見られる)と「コントラストの原理」が同時に働き、強力な力が生まれる。

    ・「些細なことによる効果が常に些細であるとは限らない。特にそれが、返報性のような人生の大きなルールに結びついているときは」

    ・「拒否したら譲歩法」を使うと、相手はこちらの要求を飲むばかりか、それを実行し、さらなる要求にも応じようとする。

    →譲歩には「より大きな責任感」と「より強い満足感」という2つの副産物がある。

    ・「拒否したら譲歩法」は、最終的な合意を「取りまとめた」と思わせ、より強い責任感を植え付ける。

    ・自分の値段交渉がうまくいったおかげで、いい買い物ができたと思う人は、買い物への満足感が上がり、その製品をまた購入する可能性も高くなる。

    ■返報性への対処法

    ・最初の好意や譲歩を拒絶する。ただし、軋轢や孤独が生み出される可能性あり。

    ・人からの申し出は受け入れるが、その申し出がどのような体裁をとっているかではなく、根本的に何であるかを判断して受け入れる。

    ・最初の申し出が厚意から出たものでなく、こちらを丸め込むための策略だと判断したら、それ相応の対応をすればよい。厚意には厚意で返すが、策略に対しては厚意を返さなくてもよい。

    ・状況を定義し直す。受け取ったものを贈り物ではなく、販売の手練手管だと考えると、厚意を返さなくてもよい。

    ・返報性のルールを逆手に取ることもできる。搾取の試みには搾取でお返しすべき。


    【第3章 コミットメントと一貫性】

    ・ひとたび決定したり、ある立場をとると、自分の内からも外からもそのコミットメントと一貫した行動を取るように圧力がかかる。

    →一貫性を持つと、その問題について真剣に考える必要がなくなり、楽に生きることができる。

    ・1度、自分の立場を明確にすると、行動をその立場と一貫させようとする強い力が自然と生じる。情報が少ない段階で行った予備的な判断にも影響を受け、最終段階の決定をその予備的な判断と一貫させようとする。

    (例)クリスマスプレゼントを約束した親

    (例)寄付依頼の電話をかける人達が、まず、気分や体調を聞いてくる。

    (例)朝鮮戦争の間のアメリカ兵捕虜

    ・段階的要請法
    →最初に小さな要求を飲ませ、それから関連するもっと大きな要求を通す。

    ⚠︎︎小さなコミットメントは、種類の異なるもっと大きな行動をさせる。なぜなら、自分自身を見る目が変わるから。

    (例)安全運転の看板

    (例)州の美化に関する嘆願書→安全運転の看板

    ・他者の自己イメージを操作するために、小さなコミットメントを利用出来る。それを使えば、市民を「公僕」に、見込み客を「顧客」に、捕虜を「協力者」に変えることができる。ひとたび、望むような形に自己イメージを変えることが出来れば、そのイメージと一貫したあらゆる範囲の要求を自然と受けれるようになる。

    ・コミットメントが影響を及ぼす条件
    →「行動を含むこと」「公表されること」「努力を要すること」「自分の意志で選ぶこと」

    ・自分自身がどのような人間かを判断するとき、自分自身の行動を使って判断している。自分の信念や価値や態度についての主な情報源は自分の行動。

    ・人は、書かれた意見は書いた人の本心を反映しているとみなす生来の傾向がある。文章の作者が自由に意見を書いたわけではないと知っていても、そう考え続ける。

    ・他人に見えるような形で自分の立場を明確にすると、一貫した人間に見られたいばかりに、その立場を維持しようとする強い気持ちが生じる。自分の意見が広く知れ渡っているほど、体裁を気にしてしまい、意見を変えにくくなる。一貫性よりも正確さが重視される状況であっても、生じる。

    ・人間は、苦労して手に入れたものにより好意を持ち、またその価値をより信じるようになる生き物。

    (例)チケットの値段を聞くために電話をかける

    (例)南アフリカのツォンガという部族の謎の庭

    (例)大学のキャンパスで行われる地獄週間

    →死人が出るような過酷なものにも関わらず、通過儀礼がなくならないのは、「何かを得るために大変な困難や苦痛を経験した人は、苦労なく得た人よりも、得たものの価値を高く見積もる」から。

    ・自己イメージや将来の行動を変化させるのに最も効果的なのは、なんらかの行動を含み、人前で行われ、努力を要するコミットメント。

    ・人は自分が外部からの強い圧力なしに、ある行為をする選択を行ったと考えるときに、その行為の責任が自分にあると認めるようになる。

    ・自らを補強するコミットメントは、理由を新たに付け加えながら成長する。

    ・自己補強するコミットメントの悪用(承諾先取り法)
    →相手に有利な誘いをかけ、決定を下させた後、最初に相手を誘った条件を取り除く。最初の柱(条件)を取り除いても、相手が下した決定は新しく建てられた支柱によって支えられると分かっているから。

    →最初に提示された誘いによって、ある選択にコミットし、その誘いが除かれたあとも、それまで以上の熱心さで、その選択にコミットし続ける。

    ■防御法

    ・胃から送られるサイン
    →自分でやりたくないとわかってることをやらされそうになると、胃がかたくなる。

    ・心の奥底からのサイン
    →「今知っていることはそのままにして時間を溯ることができるとしたら、私は同じ選択をしただろうか」

    ・人が行う知的判断に先立って、感情的な反応が生じる。注意深く訓練すれば、認知判断を行う器官が働きはじめるほんの少し前に、その感情に気付けるようになるはず。

    ・一貫性へのこだわりは年を重ねるにつれて強まり、50歳を超えた人たちが最も強く、以前にしたコミットメントとの一貫性を保とうとする傾向がある。


    【第4章 社会的証明】

    ・社会証明の原理
    →人はほかの人たちが何を正しいと考えているかを基準にして物事を判断する、というもの。特定の状況で、ある行動を遂行する人が多いほど、人はそれが正しい行動だと判断する。

    ・社会的証拠に対してあまりに無意識的、反射的に反応しているため、不完全な証拠やまやかしの証拠にだまされてしまう。

    (例)テレビの演出で使われる録音された笑い声。偽物の笑い声と分かっていても反応してしまう。

    ・「自分で何を買うか決められる人は全体のわずか5%、残りの95%は他人のやり方を真似する人たちです。ですから、私たちがあらゆる証拠を提供して人びとを説得しようとしても、他人の行動にはかなわないのです」

    (例)犬をこわがる子どもたちに、犬と小さな男の子が遊んでいる様子を見せると、その子どもたちは犬を可愛がるようになった。

    ・物理的証明によって、唯一の真実だと受け入れていた信念が否定されてしまったら、信念の正当性を支持する別の証明、すなわち、社会的証明を打ち立てるしかない。

    (例)洪水の予言。秘密主義を貫いていた宗教団体が、予言が外れたことをきっかけに、熱心な布教活動を行うようになった。メンバーは、お金を使い果たしたり、後戻りできない状況にあった。

    ・どんな考えでも、それを正しいと思う人が多ければ多いほど、人はその考えを正しいと見ることになる。

    ・自分自身に確信がもてないとき、状況の意味が不明確あるいは曖昧なとき、そして不確かさが蔓延しているときに、人間は他者の行動を正しいものと期待し、またそれを受け入れる。

    ・曖昧な状況では、周囲の人たちが何をしているのかを知ろうとする傾向を皆が持つことにより、「集合的無知」と呼ばれる現象が生じる。

    ・多くの傍観者がいるときには、誰かが緊急事態に陥ってる場面に遭遇しても、人助けをしなくなる傾向が生じやすい。理由は、助けられそうな人がほかに何人かいれば、一人ひとりの個人的な責任は少なくなるから。

    ・不誠実さがあるときには、周囲を見渡して、ほかの人びとの行動のなかに手がかりを求めるのが、自然な傾向。ほかの目撃者がどう反応しているかによって、その出来事が緊急事態であるのか、そうでないのかを知ることができる。ただし、その出来事を見ているほかの人びとも、やはり社会的証拠を探し求めている場合が多い。

    ・都会だと援助されにくい
    ①都市のほうが騒々しく、注意が散逸されやすく、変化が著しい。
    →自分が遭遇した出来事の性質を確かめるのは難しい。
    ②都市環境のほうが多くの人がいる。
    →緊急かもしれない状況を目撃したときに、ほかの人がそばにいる可能性が高い。
    ③都市の住民のほうが、小さな町に住む人よりも、知り合いの住民の割合がずっと少ない。
    →都市の住民のほうが、緊急事態を目撃したときに、見知らぬ人のなかにいることが多い。

    ⚠︎︎居合わせ「人たち」が忙しかったから誰も助けなかった?その出来事が起きた「通り」が混雑していたから、誰も助けなかった?

    →人が集団になると援助をしなくなるのは、彼等が不親切だからではなく、確信が持てないから。

    →助けを求めるときは、群衆から1人の人間を分離すること。

    ・社会的証明の原理は、自分と似ている人の行動を見ているときに最も強く作用する。

    (例)浮き輪なしでは泳げなかった子どもが、同い歳の友達が泳ぐ姿を見て、同じように泳げるようになった。

    (例)自殺報道には自殺した人と類似した人びとの自殺を促す傾向がある。(記事を読むことで自殺という考えがより合理的に思えるようになってしまう)

    ・人は、不確かな状況にいると、自分と似た人の行動を自分の行動の指針とする。

    (例)ガイアナのジョーズタウンでの集団自殺。サンフランシスコの都会から赤道に近い南米の僻地へ移動したことで、「不確かさ」と「極度の類似性」という条件がそろった。

    ■防衛法

    ・状況のなかにあるほかの証拠(客観的な事実、自分が以前に体験したこと、自分自身の判断)にそぐわない反応をしていないかどうか確かめる必要がある。ちょっとまわりを見渡すだけで十分。

    →多くの人々が同じことをしていると、自分が知らない何かを彼らが知っているに違いないと思ってしまう。特に自分で確信が持てないときは、群衆の集合的知識を過度に信用している。

    →群衆の示す行動は誤りであることが多い。なぜなら彼らの行動はなんらかの優れた情報に基づいているわけではなく、彼ら自身もまた社会的原理の証明に反応しているだけ。

    (例)バス会社のストライキが決行されたため、銀行の前のバス停には大きな人だかりができた。通りがかりに見た人々は、倒産しそうな銀行からお金を引き出そうとしていると勘違いし、その列に並んだ。それを見た別の通行人が慌てて列に並んだ。


    【第5章 好意】

    ・ハロー効果
    →ある人が望ましい特徴を1つ持っていることによって、その人に対する他者の見方が大きく影響を受ける。

    ・外見のいい人は才能、親切心、誠実さ、知性といった望ましい特徴を持っていると自動的に考えてしまう傾向がある。 さらに、決断を下すとき、身体的魅力が果たしている役割を意識していない。

    (例)面接官、裁判官

    ・私たちは、自分に似ている人を好む。

    →私たちから好意を獲得し、言うことを聞かせようとする人は、さまざまな方法で私たちと似ているように見せかけ、その目的を達する。

    ・わずかな類似性でさえ他者に対する望ましい反応を作り出すのに効果があり、見せかけの類似は簡単にでっちあげられる。「似たもの同士ですね」と近づいてくる相手には特に注意。

    ・肯定的なコメント(お世辞)は、それが真実であろうとなかろうと、そのお世辞を言う人に対して、等しく好意を生じさせた。

    ・多くの場合、馴染みのあるものに対して好意を感じる。

    ・ほとんど意識していないが、ある対象に対して私たちが取る態度は過去にその対象と接した回数から影響を受けている。

    ・繰り返し接触することで、なにかに馴染みをもつようになることは、必ずしもそれに対する好意を高めることには繋がらない。逆に、失望や対立、競争などが生じる不快な状況の下で、繰り返しある人やものに接触すると、好意は減少していく。

    ・不和を作るのに手間はかからない。グループに分け、しばらくグループごとに活動させる。それから双方を一緒にさせ、競争心が持続するように煽り立てる。これだけで、2つのグループの敵対心は煮えたぎるほどにまで高まる。

    ・共通の目標に向かって力を合わせ、首尾よくそれに成功することが溝を埋める。

    (例)「優しい刑事・怖い刑事」

    ・連合の原理
    →悪い出来事やよい出来事と、ただ関係があるだけで、人々によくも悪くも思われてしまう。

    ・悪い知らせを伝える者は疎まれる。人間には、不快な情報をもたらす人を嫌う傾向がある。たとえ、その人が悪い知らせの原因でなくても。

    (例)古代ペルシャの皇帝の勅使

    (例)天気予報士

    ・連合の原理は非常に強く(しかもまったく無意識のうちに)働くので、企業はいつも必死になって、自社製品と最新の文化的流行を結びつけようとする。

    ・悪い出来事やよい出来事と、ただ関連があるだけで、人びとによくも悪くも思われる。

    (例)親が子どもに「悪い子とは遊ぶな」と言いつける。人は実際に友人と同じ特性を持っていると見なす。

    (例)クレジットカードのマークがあるとより多くのお金を使う。

    (例)「セール」という看板を出すだけで、値引きしていなくても売上が上がる。

    →企業がプロのスポーツ選手にお金をかけるのは、彼らの役割に直接関係した商品や全く無関係な商品と彼らを結びつけるため。大事なのは、とにかく結びつきを作ることであって、論理的である必要はない。

    ・ランチョン・テクニック
    →食事中に関わりのあった人や物をより好きになる。

    (例)パブロフの犬

    ・他のすべての条件が等しければ、人は自分と同じ性別、同じ文化、同じ地方の人を応援する。その人が証明したいと思っているのは、自分が他の人より優れているということ。応援する相手が誰であれ、その相手は自分の代理になる。そして、その人の勝利は自分の勝利も同然である。

    (例)スポーツ暴動

    (例)サッカーファンによる選手や審判の殺害

    (例)地元チームが勝利するとファンは「俺たちがナンバーワン」と叫び、自分自身と成功を結びつけるような表現をした。地元チームが敗北すると「彼らは負けた」と自分とチームのあいだに一線を引くような表現をする。

    ■防衛法

    ・「この人を知ってから、予期していた以上にその人を好きになってはいないだろうか」と自問することが大切。

    ・何か承諾の決定をする場合、承諾する内容とその相手に対する感情を分離する。何かの理由でその相手が気に入らないという場合なら、分離しなくてもそう悪いことにはならない。大きな間違いを犯しやすいのは、その相手に好意を感じているとき。

    ・取引のメリットと販売者を分けて考えて、判断材料には取引の中身だけを使う。買ったあと、家に持ち帰るのは販売者ではなく商品。


    【第6章 権威】

    ・ある行為が正しいかどうかは、外見上の非常識さや有害性、不公平、あるいは常識的な道徳的基準ではなく、より高い権威の命令によってのみ決まる。

    (例)ミルグラムの実験

    (例)旧約聖書のアブラハム

    ・権威と認められた人からの情報は、ある状況でどのように行動すべきかを決定するための思考の近道を提供してくれる。

    ・盲目的な服従の場合、考えているのではなく、単に反応しているだけなので、明らかに不適切な行動をとってしまう場合も出てくる。

    ・医師が明らかな間違いを犯したときでも、階層構造のなかで、その医師より地位の低い人は誰も医師の判断を疑問に思うことはない。なぜなら、一度正当な権威者が命令を下すと、部下はその状況において考えることを停止し、単に反応するだけになってしまうから。

    ・「いかなるケースでも、患者や看護師、薬剤師、担当医以外の医師たちは、処方箋に疑問を持つことはない」

    (例)「直腸の耳痛」(医師が感染症で痛みを訴えている患者の右耳に耳の薬を出すよう指示した。その医師は処方箋に「Right ear」と書かずRightを省略して「place in R ear」と書いた。処方箋を受け取った看護師は、耳の薬を患者の肛門にさした)

    ・カチッサー方式で反応するときには、しばしば権威の実体と同じくらい、その権威を表すシンボルにも影響されやすくなっている。

    (例)長年医学博士のキャラクターを演じた俳優がカフェインの危険を警告し、ノンカフェインコーヒーを勧めるCMに出演。そのCMは好評を博し、コーヒーは売上を伸ばした。

    ・3種類の権威のシンボル「肩書き」「服装」「装飾品」

    ①肩書き

    (例)高名な肩書きを持っていると、実際よりも身長が高く知覚される。

    →「教授」として紹介されたときには、「学生」として紹介された場合よりも6センチも高く知覚されていた。

    ⚠︎︎個体の地位が支配力・優位性に基づいて決まる動物の社会では、個体の身体の大きさが集団内での地位を決定する重要な要因になる。

    (例)病院の医師と名乗る人が看護師に電話をかけ、患者にある薬を投与するよう指示した。
    ①電話で処方が指示された(規定違反)
    ②その薬は認可されていなかった
    ③薬の量は1日の最大服用量の半分だった
    ④その看護師は電話の相手と話したことも見かけたこともなかった
    にも関わらず、ほとんどの看護師が指示に従おうとした。

    →看護師の自動的服従が、本当の権威ではなく、最も簡単に偽造できるシンボル(単なる肩書き)に反応して間違いを犯すほど徹底的に反応する。

    〇服装

    (例)詐欺師は権威を表す2種類の服装「警備員の制服」と「スーツ」を利用している。

    ・装飾品

    (例)信号が青に変わってもすぐ前にいる車がなかなか発進しない場合、それが新型の高級車であるときには、旧型の大衆車であるときと比べて、ドライバーがクラクションを鳴らすまでの時間が長かった。

    ■防衛法

    ・権威をもつ力を十分に意識すること。また、権威のシンボルは簡単に捏造できると理解すること。

    「この権威者は本当に専門家だろうか」
    →権威者の資格
    →その資格と当該の問題との関連性

    ・意味がないかもしれないシンボルに向かいがちな注意を自然とそこからそらして、権威の本当の資格について考えられるようになる。

    →当該の問題と関係のある権威者と関係のない権威者を区別せざるを得なくなる。

    ・「この専門家は、どの程度誠実なのだろうか」

    →言うことを聞くと、専門家にどのくらいの利益が入るのか、ちょっと考えることによって不適当で自動的な影響力に対抗する安全弁がひとつ増える。

    →ただし、専門家の信頼性について自問するときに留意すべき点がある。自らの誠実性は、納得させるために使う戦術になる。

    →些細な欠点を認めて自らの誠実さを印象づけ、それによってもっと肝心な論点を強調するときに、相手からより強い信頼を勝ち取れるようにしている。

    (例)レストランのウェイター


    【第7章 希少性】

    ・それ自体には本来ほとんど魅力を感じていなかったものが、ただ、それを見られる可能性が急速になくなりつつあるというだけで、あきらかにずっと魅力的になる。

    ・少ないものがベスト 失うことはワースト

    ・一般に、ある品物の数が少ないか、少なくなりつつあるなら、それだけその品には価値があることになる。

    ・普通は廃棄される理由となる欠点が、希少性と結びついたときには、価値を生む美点となる。

    (例)不鮮明な切手、二度打ちされた硬貨など

    ・とりわけ危険性や不確実性の高い状況では、何かを失うかもしれないという脅威は、人間の意思決定に強力な役割を果たす。

    ・何が得られるかよりも、何を失うかという点から描写されていたほうが成功する。

    (例)乳癌の自己診断検査をすすめるパンフレット

    (例)「数量限定」戦術、「最終期限」戦術

    (例)「最終時間」期限
    →「独占・特別・公開、終了・間近」

    ・「後では手に入らないという脅しをかけて信じ込ませ、今欲しくさせることによって、取引についてあれこれ考える時間を与えない」

    ・心理的リアクタンス
    →自由な選択が制限されたり脅かされたりすると、自由を回復しようとする欲求から、その自由(およびそれに結びつく物やサービス)を以前より強く求めるようになる。

    (例)恐るべき2歳児、13〜19歳の時期

    (例)ロミオとジュリエット

    (例)ケネソーの銃法

    (例)デイド郡のリン酸洗剤禁止法

    ・ほとんど例外なく、ある情報の入手を禁じられると、1層その情報を求めるようになり、その情報をより好ましく思うようになる。情報の受け手が情報を受け取ってもいないうちから、その情報を信じるようになる。

    (例)大学生たちが、キャンパス内の男女共用学生寮建設に反対する演説が禁じられると知って、まだ演説を聞いてもいないのに、建設計画にますます反対するようになった。

    →非主流派の政治団体にとって、もっとも効果的な戦略は、人気のない自分たちの見解を宣伝するのではなく、自分たちの考えが公的に検閲を受けるように仕向け、それから検閲を受けた話を公表するというやり方なのかも。。

    (例)陪審員裁判では、提出された証拠や証言のいくつかを、裁判長が不採択と裁定し、陪審員たちにそれらを無視するように勧告することがある。

    ・情報の希少性さえ高ければ、それが検問を受けたものではなくても価値を置くようになる。

    ・希少性の情報に関するニュースそれ自体も希少なものであるという事実が、そのニュースの説得力をとりわけ高めることになる。

    (例)クッキーの実験
    ・たくさんあったのに少なくなってしまった場合のほうが、最初から少なかった場合よりもクッキーに対する反応は明らかに好意的だった。

    →革命の担い手となりやすいのは、よりよい生活の味をいささかなりとも経験した人びと。彼らが経験者、当然のものと当てにするようになった経済的・社会的改善が突然手に入りにくくなったときに、彼らは以前にも増してそれを欲するようになり、ときには武力蜂起をしてそれを確保しようとする。

    (例)独立戦争、ドアーの反乱、南北戦争、

    →自由ということに関して言えば、それをしばらくの間だけ与えることは、まったく与えないより危険。

    (例)ゴルバチョフへのクーデター。黙って支配されることに慣れきっているソビエト人だからこれまで同様大人しく従うだろうと思われていた。しかし、非常に迅速かつ大規模な民衆蜂起が起こった。

    (例)親子の関係。気まぐれに特権を与えたり約束事を押し付けたりする親は、我知らずに子どもたちに自由を与えているので、反抗を招く。

    ・前から希少であったものよりも、新たに手に入りにくくなったものを望ましいと感じる。

    ・競争相手につられて、ほかの場合なら見向きもしないような品が欲しくなり、我先にと争う。あるものの数が少なくなるだけでも、それが1層欲しくなるものだが、そこに競争が加わると、欲しいという気持ちはさらに高まる。

    (例)バーゲンセール

    (例)不動産のセールスマン

    (例)動物集団で見られる、野蛮で見境なく食らいつく「餌の奪い合い現象」

    ■防衛法

    ・興奮そのものを重要な合図として使う。「希少性の原理が使われているかもしれない、用心しなくてはいけない」

    ・希少性の高いものは、それが手に入りにくいからといって、そのぶん美味しかったり、感じがよかったり、音がよかったり、乗り心地がよかったり、動きがよかったりするわけではない。

    ・それが欲しい理由を自問する。入手が目的なら、どれくらいの金額までなら出すつもりがあるか。主にその機能が欲しいなら、考慮の対象となっている品は、手に入りやすかろうと入りにくかろうと、それによって機能の善し悪しが変わるものではない。

    (例)クッキーの実験では、少ないほうのクッキーは確かに望ましいと評価されたが、たくさんあるクッキーより美味しいとは評価されなかった。


    【第8章 手っ取り早い影響力】

    ・人や物について何か決定を下すときに、利用可能な関連情報をすべて使ったりはせずに、全体を代表する1つの情報だけを使う。

    ・人間は関連する多くの事実を考慮に入れて、正しい決定を下す能力も持っている。実際、この地球で支配的な生活ができるのは、この情報処理能力がほかの種よりも優れているおかげ。しかし、この能力にも限界がある。より効率的になるために、豊富な情報を土台にした、時間をかけて行う洗練された意思決定から、より自動的で原始的な、単一の特徴だけに頼る反応へと後退することがある。

    →返報性、一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性

    ・情報を完全に分析する気がなかったり、そうしようにも時間やエネルギー、認知的資源がなかったりする場合に、手がかりだけを使う傾向が強まる。

    ・急いでいるとき、ストレスを感じているとき、確信が持てないとき、関心が持てないとき、注意散漫になっているとき、あるいは疲れているとき、利用可能な情報にあまり注意を払わない。

    →洗練された心的装置によって人間は1つの種としてこの世に君臨してきたが、まさにその心的装置が、あまりに複雑で変化の早い、情報過多の環境を作り出し、その結果、私たちは遠い昔に乗り越えてきたはずの、動物めいたやり方でこの環境を扱わざるを得なくなっている。

    ・下等動物には、外部の環境の複雑さと豊かさを十分に処理できるだけの心的装置が備わっていないが、人間も今後ますます、そうした下等動物と同じ立場に立たされるだろう。認知能力がもともとある程度欠けている下等動物と違って、人間の場合は、複雑な世界を急速に構築することによって、自ら欠陥を作り出してきた。

    ・決定を下すときに、状況全体を十分に考慮して分析する場面が減っている。「情報が多すぎて何も決められない状態」に陥ると、その状況のなかにある単一の、たいていは信頼できる特徴に注目するようになる。

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    投稿日:2024.04.22

  • アッシェンバッハ

    アッシェンバッハ

    ★5つじゃ足りません。マーケティングや行動心理学の古典にして超名作。しかも面白い。
    販売やマーケティングの本は実に沢山あるけど、ほとんどのものはこの「影響力の武器」を希釈したように見える。

    投稿日:2024.03.17

  • あき

    あき

    肌感覚として、感じていたような傾向をしっかりと言語化してくれている一冊でした。
    「影響力の武器」を意識しつつ、生きてくことで少しは、人に左右されずに自分の人生を歩むことができることができるのかなと思います。続きを読む

    投稿日:2024.02.23

  • We love chihuahuas

    We love chihuahuas

    この本を読み、売上を上げることに、悩まなくなりました。
    最高の神本の一冊と断言できます。
    音声版、著者のセミナーデータも入手して聞きました。

    投稿日:2024.02.10

  • たた

    たた

    大学の図書館で借り、帰省の兼ね合いもあり爆速で読み飛ばしながら読んだ. これは、今後読み返すための楔として埋め込んでおく.

    なんとなく所感として、自明な主張(恐らく古い故に浸透したあるいは非の打ち所がない故評価されてきたのか)に面白いエピソードをつけている感じで、実践とかはできなそうだと思った(そもさもそういう機会もないし)続きを読む

    投稿日:2024.02.05

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