【感想】脳を司る「脳」 最新研究で見えてきた、驚くべき脳のはたらき

毛内拡 / ブルーバックス
(28件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • そるてぃー

    そるてぃー

    計算論的に脳の研究をしている大学院生ですが、知らなかった情報が満載でとても楽しめました!
    本書では、序盤に古くからあるニューロンを中心とした研究の話題を、その後に最近注目を浴びているグリア細胞や脳脊髄液の話題に移るという構成です。この本の主題は後半のグリアや脳脊髄液だと思いますが、ニューロンに関する内容も分かりやすくまとめられていて理解が深まりました。グリア細胞については、アストロサイトの神経伝達物質の回収や数珠状突起による広範囲への投射、オリゴデンドロサイトのミエリン形成によるパルス伝達速度の向上、ミクログリアによる異物の排除など、最新の研究成果を含む興味深い内容が盛りだくさんで非常に勉強になりました。グリア細胞以外にも、脳脊髄液の循環による老廃物の排除や、広範囲調節系からの神経修飾物質の拡散による脳のモードチェンジなど、最新の研究で明らかになった内容が多分に含まれており、とても面白かったです。
    これまで何冊か脳科学の本を読んできましたが、最も楽しく読めた本で、自信を持っておすすめできます。
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    投稿日:2024.03.19

  • yamanokikuzu

    yamanokikuzu

    化学的な作用機序の説明など、自分にはちょっと難しいところもありましたが、おおむね興味深く読むことができました。
    脳の中で神経細胞ではない細胞があり、「人間は脳を○%しか使っていない」という俗説が広まったという話は知っていましたが、その細胞(グリア細胞)が電気信号を発しないことから、知的活動と直接関係ないと思われていたことが理解できました。
    ちなみに、グリアとは、パテないし膠のような物質を指すということは初めてこの本で知りました。
    つまりグリア細胞は、脳の「埋め草」のようなものだと思われていたということですね。

    ところが、最近の研究によれば、グリア細胞にも重要な役割があるらしいと分かってきたとのこと。
    これは神経(ニューロン)中心主義の人間観にも影響を与えるものでしょう。
    もしかすると、「脳に電極を刺してサイバースペースにダイブする」というイメージにも修正が迫られるかもしれません。
    グリア細胞の役割を解明するには、実験手法上の難点もあって、まだ判明していない部分も多いようですが、今後の研究の進展に期待したいと思います。
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    投稿日:2024.01.25

  • ken1maeda

    ken1maeda

    脳科学の新しい知見をわかりやすく紹介する本.細胞間の隙間やグリア細胞の機能を特に説明している.ただ解釈には若干の疑問点もある.まだ不明な点も多い脳の働きに迫る本として興味深い.

    投稿日:2023.10.02

  • tanukitune1031

    tanukitune1031

     脳の特殊性について、重要な要素をかいつまんで紹介している。脳の複雑性のため、専門用語が少なくて読みやすいと感じる。脳の働きの中で、特に重要なのが、電気信号・間質・細胞外電場だと考える。
     脳の構造として、ニューロンが広がった樹上突起がいくつもあり、そこをアセチルコリンの放出・分解によるシナプス伝達によって、刺激を受け渡すことで、情報を理解することができる。神経細胞への刺激により、カリウム/ナトリウムのイオン濃度が変化することで、活動電位が生まれる。

     脳の働きは、電気信号によって行われており、”電気生理学”の学問が出来上がるほどである。他にも、顕微鏡技術の発達や脳障害の実例から、脳組織の役割を解き明かすことができる。

     脳の中には、すき間が存在し、間質液で満たされている。すき間は細胞外スペースと呼ばれ、神経修飾物質(広範囲調節系(アドレナリン、セロトニンなど))を拡散させている。この働きによって、私たちの活動の時間帯やこころの働きに関与している。また、睡眠中には脳脊髄液が入れ替わることで、脳内を洗浄するなどの役割を果たしていると考えられている。

     細胞外電場による伝達をエファプティックコミュニケーションと良い、シナプス伝達とは異なるワイヤレスな伝達が存在していると考えられている。低周波では、特に電流を伝えることのできる量が多いそうだ。

     また、脳内のグリア細胞(アストロ細胞)が多い人ほど、知能が高くなる傾向にあるなど未知の領域についての研究にも触れている。
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    投稿日:2023.06.20

  • 本好きの社長

    本好きの社長

    機械学習を作るにおいて、脳の仕組みも理解しようと思って読んだ一冊。日本人の方が書かれているので、内容が身近でわかりやすかった。ただ、個人的に知りたかったニューロン間の情報伝達の内容はごく一部だった。

    投稿日:2023.06.03

  • Mkengar

    Mkengar

    まったくの門外漢で科学全般素人レベルの知識しかないのですが、タイトルにひかれて購入しました。なんとか素人にも読めるレベルにまとめてもらっていると感じました。特に各章最後の「まとめ」が役に立ちました。私なりの理解ですが、本書の主な論点は、これまであまり着目されていなかった、脳内の「スキマ」に存在しているグリア細胞、しかもそのなかでもアストロサイトというグリア細胞の果たす役割です。素人の私でも、脳内ではニューロン細胞がシナプスをつうじて電気信号を送りあっている、というメカニズムは知っていましたが、それ以外のコミュニケーションの仕組みがあること、それは言ってみればワイヤレス通信なのか、アナログ的通信のようなメカニズムで、それにアストロサイトが重要な役割を果たしているとのことです。

    最終章にも書かれていますが、細胞外スペース、神経修飾物質(セロトニン、ノルアドレナリン等)、拡散性伝達、脳脊髄液、細胞間質液、細胞外電場、アストロサイト、といったニューロン以外の要素にスポットライトを当てている本です。なるほど脳科学の現在位置はこういうことか、というのが本書を通じてよくわかりました。

    個人的に最も印象に残ったのは最終章です。著者が、知能と知性の違いに言及し、知能とは「答えがあることに素早く正確に答える能力」、そして知性とは「答えがないことに答えを出そうとする能力」であり、後者こそが人間らしさであること、またそれを生み出しているのはデジタル的なシナプス伝達と、アナログ的な細胞外スペースでの拡散的伝達の相互作用ではないか、と締めくくっていることです。テレビのクイズ番組などを見ると、現役東大生などが登場し、答えがあるものをいかに早く正確に回答するか、という「知能」を競っているものばかりが目につきますが、はたして彼ら/彼女らの「知性」はいかほどなのでしょうか。本書を読んで、改めて「知性」の大切さに気付かされました。
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    投稿日:2023.05.08

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