【感想】無の国の門:引き裂かれた祖国シリアへの旅

サマル・ヤズベク, 柳谷あゆみ / 白水社
(4件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • キムチ27

    キムチ27

    私にとって良き下すことはほぼほぼ不可能内容。「理解できた、泣いた」というのは容易いが、所詮欺瞞に感じる・・あらすじを書き並べたところで感想・レヴューとは思えない。

    筆者は祖国シリアを出たのち、3回故郷に戻っている。1年かけて、同胞の呻きを見聞きし世界中にこの「場面」を伝える事を約して。
    自身が今の権勢を握るアサド大統領 イスラム教アラウィー派の一族でありつつも、反アサドの立場をとるため逮捕拘束を経て国を脱出している。ドキュメンタリー作家であり歌人の筆者は、1作目「交戦」で革命の始まりと最初の日々を綴った。だが、語り部を演じる架空の人間という設定へ、次は「千夜一夜物語」というカムフラージュのモノに「現実と対峙」するべく自身から遊離する手法をとった。

    半分ほどまで、読みながら感触が曖昧で読み辛かったのはそれもある。一番つらかったのは固有名詞が非日常という事~酷似するものが多いのは参った。巻末に簡単な言葉の説明はついているがモノにできるのはなかなか。

    イスラム国家のドキュメンタリーで「実父が娘を性的奴隷にし、命をかけて戦う」若い女性の番組を見た・・この作品中にも筆者がとあるアミールとの対談中で「戦争のことは男に任せておきなさい」という語がある。
    筆者自身、「インターネットとコンピューター端末は不可欠。精神的支援の教育も然り」と述べている。

    生と死が隣り合わせの日常で正気を保てるのか。民主主義革命を宗教戦争に変貌させている現実は21世紀が終わっても続くのではないかと思わせられた。
    ムカシ、キアロスタミ監督の「オリーブの林をぬけて」という映画をふと思い出した・・平和な空気、風がそよぐあの風景は宗教という名のもとに血が流れ肉片が飛ぶ現状となっているのか。
    全滅し無いために9カ月ごとに妊娠し産んでいく。子供があたしたちの権利を回復してくれる!教育と闘争を願って。

    大国はシリアという舞台でいくつもの軍を動かし火葬戦線に資金を投げ込み続けゲームを継続。シリア革命は盗み取られ宗教戦争と化した。。この後は声を聴き続ける事しかできないのか

    訳者柳谷さんの無念も痛いほど伝わってくる。
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    投稿日:2020.10.10

  • hosinotuki

    hosinotuki

    アラブの春から始まった民衆のデモ,蜂起がどんどん違った方向に曲がっていく.
    シリアのアサド大統領と同じアラウィー派の筆者,シリアに入るには今は検問がありシリア人でないダーイシュやヌスラ戦線達が立ちはだかる.なぜシリア人である自分たちがそうでない人々に規制されるのか? シリアの街に入って毎日襲う空爆.女性や子供たちを支援し,街の人々の真実の声を記録する.時期を違えて3度のシリアへの入国.死んで行く人々の声無き声を世界に届ける約束を果たす.シリアに残って暮らすことの,しかも女性であることの困難と自由シリア軍ではもうどうしようもないところに来てしまったシリアの混沌絶望が語られている.どこに救いがあるのだろう.続きを読む

    投稿日:2020.06.15

  • ichiren

    ichiren

    シリアの混乱と現状。あまりにも過酷過ぎて、読みながらこちらも混乱。
    何故、神の名の下の暴挙がまかり通るのか。

    作者の女性達に向けられた眼差しだけが希望を灯していた。

    投稿日:2020.06.05

  • izusaku

    izusaku

    このレビューはネタバレを含みます

     2011年のアラブの春を契機とした反アサド政権運動、武力闘争に発展した。シリアのイドブリ県等のトルコとの国境地域では、そこで生活していた市民の一部が武力蜂起し、一方で、この混乱に乗じ信仰の名の下に他国の傭兵で構成されるダーイシュ(イスラム国)等のテロ集団が跋扈する。元市民は、生活が困窮するなか、アサド政権軍とテロ集団に悩まされている。だが、武器は手放さない。
     著者はシリアイドリブ県のサラーキブ出身、本書は故郷にとどまり、死と隣り合わせで故郷で暮らす市民や戦闘員の姿を克明に描いている。反政府闘争で始まったこの混乱、いつの間にかイスラム教の宗派間の争いになっている様を伝えている。
     あまりに嘆かわしい、死と隣り合わせの(いや、死を前提とした生活と言うべき)この状況を多くの人に認識してもらいたい。

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    投稿日:2020.04.12

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