【感想】黒い匣 密室の権力者たちが狂わせる世界の運命――元財相バルファキスが語る「ギリシャの春」鎮圧の深層

ヤニス・バルファキス, 朴勝俊, 山崎一郎, 加志村拓, 青木嵩, 長谷川羽衣子, 松尾匡 / 明石書店
(4件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • dndrccl009

    dndrccl009

    財政関係の本にしては文章が小説のようでとても読みやすかったのですが、馴染みのない固有名詞が乱発するので、いちいち調べたり確認をしたりしながらの読書となり、かなり時間がかかりました。
    政治における新興勢力が様々な工作により分断させられていく様子に無力感を覚えますが、これを一つのケーススタディとして活かすこともできるのではないかとも思いました。続きを読む

    投稿日:2024.01.22

  • kuwataka

    kuwataka

    「黒い匣(はこ)」とは、管理者側もその全容を理解できないほど巨大で多くの人に影響を多大に与える重要なシステムのこと。

    金融工学者が複雑化し続けるデリバティブを隅々まで把握できないことや、グローバル銀行、グローバル企業のCEOが自身の所属組織の全容と影響力を把握しきれないなどが”「黒い匣」と権力者の関係”にあたる。

    「陰謀論」では「黒い匣」の中で権力者らが「お主も悪よのぉ」と不敵な笑みを浮かべながら公共善と弱者搾取のための悪巧みをしていると語られがちだが、政府関係者やIMF高級官僚たち、グローバル企業の幹部たちの多くは職務に真面目に取り組んでいるし、結果的に公共善を毀損し弱者搾取になっていたとしても自分たちがそれに加担しているという自覚がないのが現実だ。日本人の多くがペットボトル飲料を飲んで捨てることが中国やマレーシアにプラゴミの山を生んで環境破壊に拍車をかけているのを知らないのと同様だ。

    ただ、「黒い匣」の中の人々は、インサイダーの一員である自覚はある。例えば政治家から偏向記事を依頼されたジャーナリストであれば、その仕事を拒否すればその政治家とのパイプが切れて「黒い匣」から追い出されてしまうことを知っている。こうして「踏み絵」や「毒まんじゅう」などでインサイダーかアウトサイダーかを常にテストされ、インサイダーとして認められる術も心得ている。一度アウトサイダーとして追い出されると、裏切り者としてインサイダーからの総攻撃のリスクにさらされることも知っている。

    本書は、2013年のギリシャ金融危機の時に財務大臣を務めたヤニス・バルファキスが、インサイダー側のEUやIMF、欧州中央銀行、独仏政府を相手に、ギリシャ国民を守るためにアウトサイダー側に立って戦い抜いた回顧録だ。

    一方こういう告発に対して、インサイダー側からはヤニス・バルファキス個人やギリシャの怠惰な国民性、当時の政権へのスキャンダラスな叩き記事で感情論に訴えて、彼らは信用に足りない、との印象操作が怒涛のごとく連打されることもコンテンツ消費者としては留意しておきたい。つまり、政治に関係のないスキャンダルや証明できない情緒的な叩き記事などで騒がれている政治家は、インサイダー側から総攻撃を受けるほど「仕事をしている(既得権益と戦っている)」というシグナルなのである。
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    投稿日:2021.09.12

  • miura1202

    miura1202

    ギリシャが破綻する間際の2013年の財務大臣に任命された著者がトロイカ(IMF,EU、ECB)を相手にしてギリシャの未来を守るために侃侃諤諤の議論をして戦い抜いたノンフィクションです。小説調で進んでいくので大変読みやすいです。このノンフィクションでは、小説ではとても書けないようなギリギリの状況で交渉を行ってきたことが描かれており、まさに事実は小説より奇なりです。仲間の裏切りで追い込まれても追い込まれても、なんとかギリシャの有権者の為に尽くそうという著者の献身には尊敬に値するものがあります。この本は、のちの若い人がギリシャの破綻の経緯を知るための貴重な本だと思います。続きを読む

    投稿日:2021.03.29

  • shimu2

    shimu2

    【偉大な悲劇作家たちが教えてくれたように、最高の権威とまったくの無力さの組み合わせほど、悲惨なものはないのだ】(文中より引用)

    金融危機の最中にギリシャのチプラス政権の下で財務大臣を務めたヤニス・バルファキスが記した回顧録。EUエスタブリッシュメントとの行き詰まる交渉から政権内での駆け引き、そしてあるべきヨーロッパの姿に到るまでを縦横無尽に語り尽くしています。原題は、『Adults in the Room: My Battle with Europe's Deep Establishment』。

    上下段組みで500頁超えという圧倒的な分量ですので、分野に興味がない読者にとってはとっつきづらいかもしれませんが、文句なしに圧倒的なインサイダー情報が得られる一冊。国際金融や欧州情勢のみならず、民主主義や財政の問題などについても広く考えの糧を与えてくれる読書体験でした。

    素直に読んで良かったです☆5つ
    続きを読む

    投稿日:2019.09.30

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